冷房を置かず、竹で建てる:インドネシアの島の宿「チュンペダック」が、使う資源を最初から減らす方法
インドネシア・ビンタン島の南東の沖、南シナ海に浮かぶ17ヘクタールの島に、チュンペダックという宿がある。島の3分の2は、手つかずの熱帯雨林に覆われ、まわりのサンゴ礁には多くの海の生き物がすむ。宿の公式の方針書によると、持ち主が島を手に入れたとき、そこは人の住んでいない島だった。
この宿には、客室の冷房がない。テレビも、冷蔵庫つきのミニバーもない。建物のほとんどは、竹でできている。宿の方針書によると、宿の持ち主たちは、電気製品や豪華な設備で部屋を満たすことが贅沢なのではなく、簡素さとプライバシー、広さ、そして誠実で温かいもてなしこそが本当の贅沢だと考えている。
竹の島をつくる
英紙インディペンデントの2021年の記事によると、大人だけが泊まれるこの島の宿は2017年に開業した。元銀行家のオーストラリア人、アンドリュー・ディクソンが中心となって手がけ、近くのニコイ島に続いて、無人の島を宿に変えた二つめの例だ。
同紙によると、海辺の客室は巨大なブーメランのような2階建てで、屋根はアランアランという草でふき、しずくの形をした海水のプールがある。ジャワ島とスマトラ島の竹をほぼ全面に使い、扇風機や、漂白していない竹の繊維のトイレットペーパーまで竹でできている。シンガポールの高級誌ロブ・レポートの2021年の記事によると、客室は20棟で、島に泊まれるのは最大40人だ。客室はそれぞれ150平方メートルを超える2階建てで、扇風機で涼をとる。
宿の方針書によると、建物は木を切り倒したり、大きく土を動かしたりしなくて済む場所を選んで配置した。竹のほか、アランアラン、ゴムの木、使い直したチーク材、砂の床や砂の小道など、自然の素材を使い、家具は流木や工事の端材、使い直した木材で、島の上で作った。建てるときには地元の職人を雇い、新しい技術を教えた。同紙によると、その中には、のちに客を迎える仕事に移った人もいる。
冷房の代わりに、風を通す
方針書は、電気や水を使う量を減らす工夫を一つひとつ挙げている。冷房の代わりに、建物に自然の風を通す。お湯は太陽熱でわかし、明かりは消費電力の少ないLEDだけにする。洗濯物は自然に乾かし、プールには、塩水から塩素をつくる装置を使う。雨水を集め、600立方メートルの水をためられる設備もある。
電気は、太陽光でもつくる。方針書によると、島には53キロワットの太陽光パネルと蓄電池がある。2025年の宿の報告書によると、太陽光パネルと太陽熱の設備は、この年に5万2,559キロワット時の再生可能エネルギーを生み出し、年間の電気の需要の27.5%をまかなった。
ごみを、17の種類に分ける
ごみも、島の外にできるだけ出さない。方針書によると、宿は埋め立てに回るごみを全体の1割未満に抑えており、これを「ゼロ・ウェイスト」と呼んでいる。ごみは17の種類に分け、生ごみはアメリカミズアブの幼虫に食べさせて堆肥にする。紙は、その堆肥づくりの床材や、島と本土の畑に使う。ビンタン島にはガラスをリサイクルする仕組みがないため、島に粉砕機を置き、ガラス瓶を砂にしてセメントに混ぜている。
方針書によると、開業以来、使い捨てのペットボトルは島に運ばせない。厨房は加工食品を買うのを避け、ジュースやパン、ジャム、ヨーグルト、パスタ、シロップ、炭酸水まで自分たちで作る。仕入れ先には、くり返し使える容器で届けるよう頼んでいる。スチールやアルミは、ビンタン島の回収業者に売るか渡し、そのお金はスタッフに戻す。ごみを集めて分ける手間に、報いるためだ。
2025年の報告書によると、この年、チュンペダックでは1万7,177キログラムの生ごみが、幼虫の設備で処理された。姉妹の島ニコイと合わせて、生ごみはすべて埋め立てを避けた。
こうした取り組みは、細かく文書にまとめられている。方針書は毎年見直され、英語が得意でないスタッフのために、インドネシア語の版もつくられている。また宿は、広告にお金をかける代わりに、その分を地域のために寄付してきた。インディペンデントによると、そのお金は、近くのビンタン島の村の教育を支える財団「アイランド・ファウンデーション」に回っている。
宿の公式サイトによると、チュンペダックとニコイは、国際的な環境団体コンサベーション・インターナショナルと組んで地元の団体をつくり、13万8,500ヘクタールの海洋保護区の設立を後押しした。
日本の宿に置き換えると
チュンペダックから学べるのは、資源を使う量を、建物の設計と、置くものの選び方で最初から減らしていることだ。日本の宿でも、季節によって冷房に頼らず風を通す、客室に置く電気製品を見直す、ごみの分け方を細かくする、といった形で取り入れられる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿を考える。客室の冷蔵庫つきミニバー20台が、1台あたり年に300キロワット時の電気を使っているとすると、年に6,000キロワット時になる。電気を1キロワット時30円で買っているなら、ミニバーをやめるか共用の冷蔵庫にまとめた場合、年に18万円分の電気を減らせる計算だ。
持ち帰れる知識
- 使う量を減らす工夫は、建物の設計から始まる
- 置かないものを決めることも、贅沢の一つになる
- ごみを細かく分けると、資源に戻せるものが増える
- ごみを分ける手間には、報いる仕組みをつくる
宿で考えられること
- 客室に置いている電気製品を書き出し、本当に必要か考えてみる
- 季節によって、冷房の代わりに風を通せる部屋がないか調べてみる
- 今のごみの分け方を見直し、資源に戻せるものを探してみる
事業・予約への接続
チュンペダックは、竹の建物や海の風、テレビのない静かな時間を、滞在の魅力として伝えている。島の自然とともに暮らすような滞在は、都会の喧騒を離れたい客にとって、この宿を選ぶ理由の一つになる。
Sources / 参考情報
- Cempedak(英文) - 責任ある観光の方針(2023年1月改訂)
裏付け: 南シナ海の17ヘクタールの島でビンタン島の南東沖、3分の2が手つかずの熱帯雨林、無人の島だった、ニコイに続く二つめの事業、冷房を使わない設計、簡素さ・プライバシー・広さ・誠実なもてなしが本当の贅沢、木を切らず大きく土を動かさない配置、竹・アランアラン・ゴムの木・使い直したチーク・砂の床と小道、流木・工事の端材・使い直した木材で家具を島で製作、地元の職人に新しい技術、自然換気・太陽熱のお湯・LEDだけ・テレビやミニバーなし・自然乾燥・海水から塩素をつくる装置、雨水と600立方メートルの貯水、53キロワットの太陽光と蓄電池、埋め立ては1割未満でゼロ・ウェイスト、17の種類に分別、アメリカミズアブの幼虫で堆肥、紙を床材や畑に、ガラス粉砕機でセメント用の砂(ビンタン島にガラスのリサイクルなし)、開業以来ペットボトルを運ばせない、厨房の手づくり、毎年見直しインドネシア語の版も、広告費の代わりに寄付、くり返し使える容器、スチールとアルミの売却益をスタッフに - Cempedak(英文) - 2025年の報告書
裏付け: チュンペダックの太陽光パネルと太陽熱の設備で5万2,559キロワット時、年間の電気の需要の27.5%、チュンペダックで1万7,177キログラムの生ごみを幼虫の設備で処理、ニコイと合わせて生ごみの100%が埋め立てを回避 - Cempedak(英文) - 私たちの約束(公式サイト)
裏付け: コンサベーション・インターナショナルと組んで地元の団体をつくり、13万8,500ヘクタールの海洋保護区の設立を後押し - The Independent(英文) - すべて竹でできた、インドネシアの持続可能な島(2021年6月4日)
裏付け: 大人専用で2017年開業、元銀行家のオーストラリア人アンドリュー・ディクソン、二つめの無人の島、ブーメランのような2階建て・アランアランの屋根・しずく形の海水のプール、ジャワ島とスマトラ島の竹、竹の扇風機と漂白しない竹の繊維のトイレットペーパー、地元の職人に新しい技術、客を迎える仕事に移った人も、広告に使うはずのお金をアイランド・ファウンデーションに回しビンタン島の村の教育を支える - Robb Report Singapore(英文) - リアウ諸島のチュンペダック島が、大人の休日にふさわしい理由(2021年4月12日)
裏付け: 客室は20棟で最大40人、各棟150平方メートル超の2階建て、扇風機で涼をとる客室