標高600メートルの風で涼む:コスタリカの8室の宿「ランチョ・パシフィコ」が、エアコンに頼らない夜をつくる方法
コスタリカの太平洋岸の南部、ウビタという町の近くの山の上に、ランチョ・パシフィコという大人だけの小さな宿がある。ミシュランガイドによると、客室は8室で、泊まれるのは最大20人。ウビタから約2マイルの道を、標高差2,000フィート上っていった先に建つ。近くのケポスの空港からは45分、首都サンホセの空港からは3時間半かかる。
公式サイトによると、泊まれるのは18歳以上の大人だけだ。夕食は有機の食材を使った4品のコースで、景色に溶け込むインフィニティプールや、森を歩く道もある。ミシュランガイドによると、スパにはわき水を引いた湯船がある。
暑い国の宿では、エアコンを一晩中つけたままにすることが多い。ところがこの宿では、窓を開けたまま、エアコンを切って眠れる夜が多いという。その理由は、宿の建っている場所と、建物のつくりにある。
標高600メートルという「場所」の力
公式サイトの環境への取り組みのページによると、宿は標高2,000フィート(約600メートル)近くにあり、海からの涼しい風が吹く。ミシュランガイドも、この高さのおかげで夜は涼しく、蚊もいないため、窓を開けてエアコンを切ったまま過ごせることが多いと紹介している。
同じ海岸でも、海辺の低い土地より山の上のほうが涼しい。この宿は、その自然の条件を、エネルギーを使わずに快適に過ごすために生かしている。エアコンの電気は、使う時間が長いほど増える。夜のあいだ窓を開けて眠れれば、その分の電気がまるごと要らなくなる。蚊が少なければ、窓を開けることへのためらいも小さくなる。
風が通り抜ける建物
建物のつくりも、風を生かすように考えられている。公式サイトは、宿をエネルギー効率のとても高い設計だと説明している。共用の場所は壁のない吹き抜けのつくりで、自然の風で換気する。
客室の一つ、ツリーハウスにも工夫がある。公式サイトによると、ツリーハウスは約1,000平方フィート(約100平方メートル)の広さで、それぞれが地元の動物にちなんだ名前を持つ。その一つ「モノ・コンゴ」(ホエザルの意味)は四方すべてに開口部があり、風が通り抜けるため、エアコンを使わなくても涼しく過ごせるという。ミシュランガイドによると、ツリーハウスは森の木々の高さ約20フィート(約6メートル)に建てられ、3エーカーの庭を見下ろす。公式サイトによると、ツリーハウスどうしは大きく育った木々で隔てられている。夕日の見える西向きの部屋や、ウビタの名所「クジラの尾」を望む部屋もある。森ではホエザルの声が、約3マイル先まで届くという。
もちろん、エアコンをなくしたわけではない。公式サイトによると、ツリーハウスにはエアコンも備えてある。必要なときには使えるようにしながら、使わずに済む時間を増やしているのがこの宿のやり方だ。
使う電気も、水も、自然の中から
公式サイトによると、宿で使う電気の95%以上は再生可能な資源からまかなわれている。水は山のわき水を使い、薬品ではなく紫外線で殺菌する。
宿は、コスタリカ観光局の持続可能な観光の認証(CST)を受けている。売上の1%を環境のために寄付する「1%フォー・ザ・プラネット」の会員でもある。レストランは地元の仕入れ先と宿の菜園の食材を使い、客室には有機の洗面用品を置く。
さらに公式サイトによると、宿は地域の団体と協力して、何年も前に切り開かれた土地に在来の木を700本植えた。コスタリカは、1980年代の終わりまでに森の多くを失っていたという。宿に直接予約すると、飛行機の約4,000マイル分の移動にあたる炭素の排出枠を買い取る仕組みも取り入れている。米国の首都ワシントンとサンホセを往復するのに近い距離だ。
宿のまわりの自然にふれる機会も多い。公式サイトによると、近くでは300種の鳥が見られる。滝へのハイキングでは、木陰でコーヒーを育てる地元の家族の農園に立ち寄る。客は、ウミガメを守る地元の保護区の活動にボランティアとして参加することもできる。この宿は、ミシュランガイドで「2キー」に選ばれている。
日本の宿に置き換えると
ランチョ・パシフィコから学べるのは、エネルギーを減らす工夫が、機械を替える前の「場所と設計」から始まるということだ。日本の宿でも、窓を開けて風が通る部屋の配置を見直す、夏の夜の涼しい時間に窓を開けるよう客に案内する、網戸を整えて虫が入らないようにする、といった形で始められる。山あいや高原の宿なら、夜の涼しさそのものを、宿の魅力として伝えることもできる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊のうち、半分の2,555室泊でエアコンを使わずに済み、1室泊あたりのエアコンの電気を5kWhとすると、年に1万2,775kWhを減らせる。1kWhを30円とすれば、年に38万3,250円分になる計算だ。実際に減らせる量は、地域の気候や部屋のつくりによって大きく変わる。
持ち帰れる知識
- 涼しさは、機械より先に場所と設計から考えられる
- 風が通り抜ける開口部があれば、エアコンを使う時間を減らせる
- エアコンをなくすのではなく、使わずに済む時間を増やす
- 客に窓を開ける過ごし方を伝えることも、省エネの一部になる
宿で考えられること
- 夏の夜に風が通る部屋と、通らない部屋を調べてみる
- 窓を開けて過ごせる時間帯を、客室の案内に書いてみる
- 客室ごとのエアコンの使用時間を記録してみる
事業・予約への接続
ランチョ・パシフィコは、山の上の涼しい風と、窓を開けて眠れる夜を、滞在の魅力として伝えている。エアコンに頼らない心地よさは、自然の中で過ごしたい客にとって、この宿を選ぶ理由の一つになる。
Sources / 参考情報
- Rancho Pacifico(英文) - コスタリカのエコリゾート(公式サイト)
裏付け: 標高2,000フィート(約600メートル)近くで海からの涼しい風、エネルギー効率のとても高い設計、共用の場所は吹き抜けで自然換気、電気の95%以上を再生可能な資源から、山のわき水を薬品でなく紫外線で殺菌、CST、1%フォー・ザ・プラネット、レストランは地元の仕入れ先と宿の菜園、地域の団体と何年も前に切り開かれた土地に在来の木を700本植えた、コスタリカは1980年代の終わりまでに森の多くを失った、直接予約で飛行機約4,000マイル分(ワシントンとサンホセの往復に近い)の炭素の排出枠を買い取る、近くで300種の鳥、滝へのハイキングで木陰でコーヒーを育てる家族の農園に立ち寄る、ウミガメの保護区でボランティア - Rancho Pacifico(英文) - ツリーハウス(公式サイト)
裏付け: ツリーハウスは約1,000平方フィート、地元の動物にちなむ名前、大きく育った木々で隔てられる、西向きで夕日の見える部屋、ウビタのクジラの尾を望む部屋、ホエザルの声は約3マイル先まで届く、有機の洗面用品、エアコンを備える、モノ・コンゴは四方に開口部があり風が通り抜けエアコンなしでも涼しい - Rancho Pacifico(英文) - 大人だけのリゾート(公式サイト)
裏付け: 18歳以上の大人だけの宿、有機の4品のコースの夕食、インフィニティプール、森を歩く道 - MICHELIN Guide(英文) - ランチョ・パシフィコ:宿の紹介
裏付け: 2キー、8室、最大20人、ウビタから約2マイルで標高差2,000フィート、ケポスの空港から45分・サンホセの空港から3時間半、ツリーハウスは3エーカーの庭の上、夜は涼しく蚊がいないため窓を開けエアコンを切って過ごせることが多い、ツリーハウスは森の高さ約20フィート、スパにわき水を引いた湯船 - Rancho Pacifico(英文) - ランチョ・パシフィコ(公式サイト)
裏付け: コスタリカ南部で唯一のミシュラン2キーのリゾート