電気も水もごみも、月ごとに数えて公開する:コスタリカの温泉リゾート「アレナル・スプリングス」の2024年の報告書
コスタリカ北部の町ラ・フォルトゥナは、アレナル火山のふもとにある温泉の町だ。町の教会から北へ約7キロの場所に、アレナル・スプリングス・リゾート&スパがある。公式サイトによると、100%天然の火山の温泉を楽しめ、コスタリカ料理、イタリア料理、アジア料理の3つのレストランとスパを備える。
この宿は、公式サイトで2024年の持続可能性の報告書を公開している。中には、電気と水の使用量が月ごとに並び、ごみの行き先や、働く人の研修の時間までが数字で書かれている。大きな数字を誇るのではなく、自分たちの使ったものを、そのまま数えて見せる報告書だ。
報告書は、何のためにつくるのか
報告書は、宿の持続可能性の担当部署がつくった。冒頭には、2024年の環境、社会、経済への取り組みの成果を、はっきりと、透明に、もれなく示すことが目的だと書かれている。公式サイトの持続可能性のページでも、毎年この報告書を通じて、おもな取り組みや進行中の計画を伝えると説明している。
宿は、コスタリカの持続可能な観光の認証(CST)を受けている。報告書の表紙にも、この認証のマークが載っている。
電気の使用量を、月ごとに見る
報告書によると、2024年に宿が使った電気は、合わせて約103万5,762kWhだった。最も多かったのは7月の約10万5,292kWh、最も少なかったのは10月の約6万1,824kWhだ。報告書は、宿から出た二酸化炭素を年間で約39.46トンと計算し、この数字は電気の使用量と直接結びついていると説明している。
報告書は、使用量をそのまま並べるだけでなく、泊まった人1人あたりと、敷地の広さ1平方メートルあたりの数字にも直している。1人あたりの電気は、最も少ない3月の約11.08kWhから、最も多い9月の約35.88kWhまで開きがあった。一方で、広さあたりの数字は1年を通して大きく変わらなかった。報告書は、使用量の増減は建物よりも、泊まる人の数によるものだと読み取っている。
数字を月ごとに並べると、気づくこともある。9月は泊まる人が少なかったのに、電気の使用量は比較的多かった。報告書は、その理由を、客の少ない時期に客室を改装したためだと書いている。2024年には6室の改装を行った。
水とごみも、数字で確かめる
水についても、報告書は月ごとの使用量を載せている。比べる目安として、世界保健機関が、暮らしに最低限必要な水を1人1日50〜100リットルとしていることも紹介している。2024年の合計は4万8,586立方メートルで、泊まった人1人あたりの平均は0.74立方メートル(約743リットル)だった。1人あたりの量が最も多かったのは、電気と同じく改装のあった9月で1.53立方メートル、最も少なかったのは7月の0.46立方メートルだ。
ごみは、報告書によると、全体の82%がリサイクルなどに回せるものとしてリサイクルに送られ、残りの18%はそれができないものだった。環境の取り組みをまとめた別の資料でも、2024年にごみの約8割をリサイクルに送ったと書かれている。
人と地域のことも、数字にする
報告書は、環境だけでなく、働く人のことも数字で示している。2024年の研修は合わせて4,773時間で、そのうち持続可能性についての研修は317時間だった。働く人の95.65%が研修を受けた。
働く人の数は、2024年12月の時点で女性118人、男性126人だった。障害のある人も2人働いている。
地域との関わりでは、8回のボランティア活動に、のべ62人が参加した。ロマス・デル・ボルカンという地域での植樹や、地元の学校の環境フェア、世界ミツバチの日の催し、国の史跡グアヤボ遺跡でのボランティアなどだ。報告書によると、地域向けの取り組みの恩恵を受けた人は、およそ870人にのぼる。2024年3月には、コスタリカの文化を紹介する場所「リンコン・パトリオ」をつくり始めた。環境の取り組みの資料によると、宿の庭の8割は地元の在来の植物で、植樹の活動も行っている。
設備でも、むだを減らす工夫がある。公式サイトによると、客室は人がいるかどうかを自動で感知する「スマートルーム」で、フロントから遠隔で操作することもできる。
日本の宿に置き換えると
アレナル・スプリングスから学べるのは、減らす工夫は、まず数えることから始まるということだ。日本の宿でも、電気や水の検針の数字を毎月記録し、泊まった人数で割ってみる、といった形で始められる。数字が急に増えた月があれば、その月に何があったかを書き添えておくと、次の年に比べるときの手がかりになる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、年に15万kWhの電気を使う宿を考える。月ごとの記録を見比べて、使っていない部屋の空調や照明などのむだを見つけ、使用量を5%減らせたとすると、年に7,500kWhになる。1kWhを30円とすれば、年に22万5,000円分を減らせる計算だ。
持ち帰れる知識
- 減らす工夫は、まず数えることから始まる
- 月ごとに並べると、使用量が増えた理由が見えてくる
- 泊まった人数で割ると、宿の規模が違っても比べやすい
- 環境だけでなく、人と地域のことも数字にできる
宿で考えられること
- 電気と水の検針の数字を、毎月表に書き込んでみる
- 月ごとの使用量を、泊まった人数で割ってみる
- 1年分の数字を、客や地域に向けて公開してみる
事業・予約への接続
アレナル・スプリングスは、持続可能性の報告書や認証を、公式サイトで客にも見える形で示している。何をどれだけ使い、どう減らそうとしているかを数字で伝えることは、環境に配慮した旅を望む客にとって、この宿を選ぶ理由の一つになる。
Sources / 参考情報
- Arenal Springs Resort & Spa(英文・スペイン語) - 2024年の持続可能性の報告書(公式サイト)
裏付け: 持続可能性の担当部署がつくった、2024年の環境・社会・経済の成果を透明に示す目的、CSTのマーク、ラ・フォルトゥナの教会から北へ7キロ、2024年の電気は合計1,035,762.40kWh(最多7月105,292.08kWh・最少10月61,823.52kWh)、二酸化炭素は年39.46トンで電気の使用量と直接結びつく、9月は客が少ないのに使用量が多く客の少ない時期の客室改装のため、2024年に6室を改装、水は合計48,586立方メートル・1人あたり平均0.74立方メートル(743.5リットル)、1人あたり最多9月1.53・最少7月0.46、ごみの82%をリサイクルに送り18%はできないもの、研修は合計4,773時間で持続可能性は317時間、95.65%が研修を受けた、1人あたりの電気は3月11.08kWh〜9月35.88kWh、広さあたりの数字は安定し増減は泊まる人の数による、世界保健機関の目安は1人1日50〜100リットル、2024年12月時点で女性118人・男性126人、障害のある人2人、8回のボランティア活動にのべ62人(ロマス・デル・ボルカンでの植樹・学校の環境フェア・世界ミツバチの日・グアヤボ遺跡など)、地域の取り組みの恩恵を受けた人は約870人、2024年3月にリンコン・パトリオをつくり始めた - Arenal Springs Resort & Spa(スペイン語) - 環境の取り組み(公式サイト)
裏付け: 2024年にごみの80%をリサイクルに送った、庭の80%は地元の在来の植物、植樹の活動、資源の使用量の監視 - Arenal Springs Resort & Spa(英文) - 持続可能性(公式サイト)
裏付け: 毎年の持続可能性の報告書でおもな取り組みと進行中の計画を伝える、CSTなどの認証 - Arenal Springs Resort & Spa(英文) - アレナル・スプリングス(公式サイト)
裏付け: 100%天然の火山の温泉、コスタリカ・イタリア・アジアの3つのレストラン、スパ、人の有無を自動で感知しフロントから遠隔操作できるスマートルーム