GOAL 15 · TARGET 15.5 自然・生物多様性・保全 3分 / 2094文字 宿の森を、鳥が帰る場所にする #161

森に、コンゴウインコを帰す:コスタリカの「ガイア・ホテル&リザーブ」が、宿の保護区を鳥の再出発の場にする方法

コスタリカの太平洋側、マヌエル・アントニオ国立公園の近くの丘の上に、ガイア・ホテル&リザーブがある。公式サイトによると、5つ星の小さな高級ホテルで、客室はスタジオ、スイート、2ベッドルームのヴィラを合わせて22室だ。泊まれるのは13歳以上で、大人と10代の客のための宿としている。

この宿の名前には「リザーブ(保護区)」という言葉が入っている。宿の敷地の大部分が自然の保護区として残され、その中で、一度はこの地域から姿を消した赤いコンゴウインコを野生に帰す取り組みが続いているからだ。

もとは、動植物を守る庭だった

公式サイトによると、この土地はもともと「ガイアの庭(ハルディン・ガイア)」と呼ばれ、地域の動物やランを守り、回復させるための場所だった。2005年にホテルを建てたとき、敷地の大部分には手をつけず、今も地域の動物たちが暮らす場所として残している。

社長のボリス・マルケジャーニ氏は、2022年1月の旅行業界の専門メディアの取材で、建物が占めるのは敷地全体の7分の1に満たず、残りの7分の6は自然の保護区として残していると語っている。宿が世界で評価された理由を聞かれて、真っ先に挙げたのが、この建物の小ささだった。

姿を消した鳥を、もう一度空へ

赤いコンゴウインコは、赤や黄、青の羽を持つ大きなオウムの仲間だ。社長の話では、この地域のコンゴウインコは密猟のために、半世紀以上前に姿を消していた。

公式サイトによると、宿はコスタリカの環境の省庁と協力して、保護区の中に鳥のための大きなケージをつくった。国の自然保護区を管理する機関(SINAC)の担当者と、野生動物を守る農業協同組合でコンゴウインコの計画を見る獣医は、このケージを「この国で見た中で最高のケージ」と評したという。

目的はただ一つ、コンゴウインコをマヌエル・アントニオ国立公園の一帯に戻すことだ。鳥が自分の力で生きていけるようになったら放し、この地域にこの鳥をよみがえらせる。社長は、この取り組みを、ディスカバリー、ナショナルジオグラフィック、ワシントンのスミソニアン国立動物園と協力して進めてきたと話している。

放した鳥の数について、社長は2022年1月の取材で、一帯を自由に飛ぶコンゴウインコが100羽を超えたと語った。同じ年の11月の取材では、宿の担当者が、これまでに200羽を超えるコンゴウインコを放したと答えている。「今飛んでいる数」と「これまでに放した数」は数え方が違うため、二つの数字はそのまま比べられない。

客が森を歩き、鳥に出会う

公式サイトによると、宿は保護区を案内するガイドつきのツアーをほぼ毎日開き、その中でコンゴウインコの計画の場所も訪ねる。2022年11月の取材では、このツアーが宿で一番人気の体験だと答えている。

保護区には、コンゴウインコのほかにも多くの動物が暮らす。よくある質問のページによると、ノドジロオマキザル、ホエザル、リスザルの3種類のサル、2種類のナマケモノ、イグアナ、アライグマ、多くの鳥が見られる。すべてを見られるとは約束できないが、出会える機会は多いと説明している。

宿は、こうした取り組みにお金もかけている。2022年11月の取材で、担当者は、自然を守るいくつかの計画に年に10万ドルを超える額を使っていると答えた。同じ取材では、宿は政府の認証で「99.6%持続可能」とされているとも話している。

車を使わない移動と、地域へのまなざし

公式サイトによると、宿は毎日朝8時から午後4時まで、国立公園と公共の浜辺へ無料のシャトルを走らせている。宿の入口には路線バスの停留所もある。浴室には有機の原料でつくったシャンプーなどを置き、食事にはヴィーガンやグルテンを使わない料理も用意する。

社会への責任として、宿の運営者と所有者は、地元のケポス地区の経済を育てる仕組みを考えてきた。ケポスは、自然の美しさのおかげで観光が急に伸びた海辺の地域だ。宿は、地域の文化や地域が抱える課題をふまえ、ほかの団体も加われるようにこの仕組みを設計したとしている。地域の人々が、整った形で参加できることを中心に置いている。

旅行の賞の一つであるワールド・トラベル・アワードによると、宿は「世界で最も優れた環境配慮型ホテル」に2020年から2025年まで選ばれている。

日本の宿に置き換えると

ガイアから学べるのは、宿の敷地を、建物のための土地としてだけでなく、生きものの暮らしを取り戻す場として考えられるということだ。日本の宿でも、敷地の林や水辺を残し、地域の専門家と生きものを調べることから始められる。案内する人がいれば、客にとっては宿で過ごす時間そのものが自然を学ぶ時間になる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室で稼働率70%(年5,110室泊)の宿が、ガイド1人に日当1万5,000円を払って週6日、52週の自然案内を開くとする。1万5,000円の312日分で、年に468万円になる。これを5,110室泊で割ると、1室1泊あたり約916円の費用になる計算だ。

持ち帰れる知識

  • 宿の敷地を、生きものが戻る場所として使える
  • 生きものを戻す取り組みは、国や専門家と組んで進められる
  • 保護区の案内は、宿の人気の体験にもなる
  • 数字は、何を数えたものかを確かめて伝える

宿で考えられること

  • 敷地の中に、手をつけずに残せる林や水辺がないか調べてみる
  • 地域の専門家と、敷地の生きものを調べる機会をつくってみる
  • 宿のまわりの自然を、客に案内する方法を考えてみる

事業・予約への接続

ガイアは、保護区の森を歩き、野生に帰ったコンゴウインコに出会える体験を、宿の魅力として伝えている。泊まることが、鳥を森に帰す取り組みを支えることにつながる点は、自然の中で意味のある滞在をしたい客にとって、この宿を選ぶ理由の一つになる。

Sources / 参考情報

  • Gaia Hotel & Reserve(英文) - ストーリー(公式サイト)
    裏付け: マヌエル・アントニオの5つ星の小さな高級ホテル、22室(スタジオ・スイート・2ベッドルームのヴィラ)、もとは地域の動物とランを守る「ガイアの庭」、2005年の建設時に敷地の大部分に手をつけず残した、保護区のガイドつきツアーでコンゴウインコの計画を訪ねる、環境の省庁と協力して保護区にケージ、SINACの担当者と協同組合の獣医が「この国で見た中で最高のケージ」と評価、国立公園の一帯にコンゴウインコを戻し自力で生きられるようになったら放す、ケポス地区の経済を育てる仕組み
  • Gaia Hotel & Reserve(英文) - よくある質問(公式サイト)
    裏付け: 3種類のサル・2種類のナマケモノ・イグアナ・アライグマ・多くの鳥、すべては約束できない、13歳以上、有機の原料のアメニティ、ヴィーガンとグルテンを使わない料理、毎日8時から16時の無料シャトル、入口に路線バスの停留所
  • Breaking Travel News(英文) - 社長ボリス・マルケジャーニ氏へのインタビュー(2022年1月)
    裏付け: 建物は敷地の7分の1未満で7分の6は保護区、ディスカバリー・ナショナルジオグラフィック・スミソニアン動物園と協力、密猟で姿を消してから60年、一帯を自由に飛ぶ鳥が100羽を超えた
  • Breaking Travel News(英文) - 世界で最も優れた環境配慮型ホテル2022:ガイア・ホテル&リザーブ(2022年11月)
    裏付け: 保護区のツアーとコンゴウインコの計画が一番人気、密猟で50年以上前に姿を消した、これまでに200羽を超えるコンゴウインコを放した、政府の認証で99.6%持続可能、自然を守る計画に年10万ドル超
  • World Travel Awards(英文) - ガイア・ホテル&リザーブの受賞歴
    裏付け: 世界で最も優れた環境配慮型ホテル2020〜2025年

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