木を切らず、コンクリートを使わず、電気は太陽から:コスタリカの「カシーヤ・パパガヨ」が、跡を残さないテントの宿を建てた方法
コスタリカの北西、グアナカステ州のパパガヨ湾を見下ろす岩がちな半島に、カシーヤ・パパガヨがある。デザイン専門メディアのDezeenによると、敷地は123エーカー(49ヘクタール)。その森の中に、木の床の上に布の屋根をかけたテントの客室が、いくつかのまとまりに分かれて点在している。
設計したのは、パリの建築事務所AW²だ。事務所は、この宿を「1本の木も切らず、コンクリートも釘も使わずに」完成させたと説明している。宿は2018年11月に完成し、同じ年の12月に開業した。宿の電気は、すべて太陽の光でまかなわれている。
目指したのは「影響を小さく」ではなく「ゼロ」
AW²は、計画の最初から熱帯の森を守ることを何より大切にしたという。「この計画で私たちが目指したのは、環境への影響を小さくすることではなく、ゼロにすることだった」と事務所は語っている。
そのため宿は、大きな建物を一つ建てるのではなく、客室を小さなまとまりに分けて敷地に散らした。事務所は、これを村の大きさでつくったと表現する。客室が集まる場所をつくる一方で、ほかの場所は自然にまかせる考え方だ。客室のほかに、浜辺のバー、レストラン、スパ、共用の場所も設計し、建物の床面積は合わせて2,000㎡になる。
地面に、ねじで留める
客室は地面から持ち上げられ、取り外せるようにつくられている。事務所は「解体して、取り外し、荷造りして、建てた跡を何も残さずに去れるように設計した」と説明する。
骨組みと床には地元の木材を使い、地面には大きなねじのような杭で留めた。この杭は、地面をほとんど傷めずに抜くことができる。屋根と内外の壁は帆布だ。文化と旅のメディアのCool Huntingによると、すべての場所をつなぐのは地面から浮かせた木の通路で、基礎にさえコンクリートは一滴も使われていない。
宿の公式サイトに2021年に掲載された記事で、創業者のメディ・ルヘルジャリ氏は、コンクリートではなく木を選んだ理由をこう語った。「世界には、途中で放り出されたり、壊れかけたりした計画がたくさんあり、それが土地の傷になっている。木はゆっくりと消えていく。でもコンクリートは、私たちが自然を好きになる理由そのものを壊してしまう」。宿は、木材をすべて植え直しが行われている森から仕入れているとしている。
電気は太陽から、使う量も見張る
Dezeenによると、宿の電気はすべて太陽の光でまかなわれ、水は敷地の井戸からくみ上げ、移動には電気自動車を使う。Cool Huntingは、太陽電池のパネルが敷地のあちこちに目立たないように置かれていると伝えている。
電気を使う量も、細かく見張られている。Cool Huntingによると、Wi-Fiや天井の扇風機、エアコンといった設備はそろっているが、冷蔵庫の代わりにクーラーボックスを使う。中の飲み物は一日に何度も入れ替えて冷たさを保つ。客は、部屋を閉めてエアコンで冷やすか、虫よけの網戸を閉めたまま窓を開けて風を入れるかを選べる。シャワーも、屋内と屋外のどちらかを選べる。
水は湧き水を引き、雨の季節には雨水も集める。トイレは堆肥にする方式だが、ふつうの水洗トイレとほとんど変わらないという。
公式サイトによると、宿の最初の従業員になった大工は、2017年に最初のテントを建てた人だ。2021年の記事の時点では、敷地の外の工房で家具をつくり、木を乾かすときは工業用の乾燥機を使わず、布をかぶせて太陽の熱で乾かしている。創業者は、次に建てる2室の家具について、それまで家具の85%をコスタリカの外でつくっていたところを、85%を近くの村でつくることを目指すと話していた。
売上の行き先を、客に見せる
宿は、お金の使い道も公開している。公式サイトに2022年1月に掲載された「インパクト・ビル」によると、2021年は売上の24%を宣伝や旅行会社への手数料に使い、残る8%のうち6%を宿の開発と共同経営者への配分に、2%を地域の活動に回した。2021年の活動は、グアナカステの乾燥林の保護、地元の大工の工房、地元の学校、宿の前のサンゴ礁とウミガメを守る取り組みの四つだった。同じ年には、宿に一番近い村の学校に新しいトイレをつくった。
日本の宿に置き換えると
カシーヤから学べるのは、宿を建てる方法と、電気を使う量を減らす工夫を、一緒に考えられるということだ。日本の宿でも、客室の冷蔵庫を本当に置く必要があるかを見直したり、窓を開けて風を通せる部屋づくりを考えたりできる。増築するときには、取り外せる基礎や地元の木材を選ぶ方法もある。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、客室の冷蔵庫1台が年に300kWhの電気を使う20室の宿を考える。全室で冷蔵庫をやめて飲み物を別の方法で冷やせば、300kWhの20室分で、年に6,000kWhを減らせる。1kWhを30円とすれば、年に18万円分になる計算だ。
持ち帰れる知識
- 電気は、つくる方法と使う量の両方から考えられる
- 建物は、取り外せる形で建てることもできる
- 客室の設備を見直すと、使う電気を減らせる
- お金の使い道を客に見せることもできる
宿で考えられること
- 客室の冷蔵庫やエアコンに、どれだけ電気を使っているか調べてみる
- 窓を開けて風を通せる部屋があるか確かめてみる
- 増築や改修のときに、取り外せる基礎や地元の木材を選べないか考えてみる
事業・予約への接続
カシーヤは、森の中で太陽の電気だけで過ごし、去るときには跡を残さない滞在を、宿の魅力として伝えている。泊まったお金がどこに使われるかまで見えることは、自然の中で責任ある滞在をしたい客にとって、この宿を選ぶ理由の一つになる。
Sources / 参考情報
- Dezeen(英文) - カシーヤ・パパガヨのテントの客室が、コスタリカの熱帯の森からのぞく(2020年9月)
裏付け: パリのAW²が設計、1本の木も切らずコンクリートも釘も使わず、パパガヨ湾を見下ろす岩がちな半島、影響を小さくではなくゼロに、客室をまとまりに分けて123エーカー(49ヘクタール)の敷地に配置、村の大きさ、地面から持ち上げ解体できる、跡を残さず去れる、地元の木材の骨組みと床、ねじの杭で地面を傷めずに抜ける、屋根と壁は帆布、電気はすべて太陽光、敷地の井戸、電気自動車、浜辺のバー・レストラン・スパ・共用の場所、合わせて2,000㎡、2018年11月に完成 - Cool Hunting(英文) - コスタリカの環境に配慮したカシーヤ・パパガヨ
裏付け: 2018年12月に開業、使う電気を細かく見張る、Wi-Fi・天井の扇風機・エアコン、冷蔵庫の代わりにクーラーボックスで一日中入れ替え、屋内と屋外のシャワー、エアコンか網戸を閉めて窓を開けるか選べる、すべて太陽電池で動きパネルは敷地のあちこちに置かれる、湧き水と雨季の雨水、堆肥式のトイレ、浮かせた木の通路、基礎にもコンクリートを使わない - Kasiiya(英文) - 木を愛して:カシーヤの大工と工房の物語(公式サイト、2021年11月、ウェブアーカイブ)
裏付け: 創業者メディ・ルヘルジャリ氏の言葉(木はゆっくり消え、コンクリートは自然を好きになる理由を壊す)、敷地の木を切らない、木材はすべて植え直しが行われている森から、2017年に最初のテントを建てた大工が最初の従業員、布をかぶせて太陽の熱で木を乾かす、次の2室で家具の85%をコスタリカの外ではなく近くの村でつくることを目指す - Kasiiya(英文) - インパクト・ビル:滞在が地域にもたらすもの(公式サイト、2022年1月、ウェブアーカイブ)
裏付け: 2021年の使い道、売上の24%を宣伝と手数料に、残る8%のうち6%を開発と配分、2%を地域の活動に、乾燥林の保護・地元の大工の工房・地元の学校・サンゴ礁とウミガメの四つ、ヌエボ・コロンの学校に新しいトイレ