島に、海の見回り役が住んでいる:ベリーズの「ターネフ・アイランド・リゾート」が、釣りの宿として海を守る方法
中米ベリーズの沖に、ターネフ環礁がある。公式サイトによると、かつて海にそびえていた山の頂が、長い年月の間に海の底へ沈み、周りにサンゴ礁だけが残った。そのサンゴが積み重なり、陸地とラグーン、水路、サンゴ礁が入り組む島々になったという。
その環礁の南の端、リトル・キー・ボーケルという小さなサンゴの島に、ターネフ・アイランド・リゾートがある。島の広さは14エーカー(約5.7ヘクタール)、客室は26室だ。島へは、ベリーズシティの港から水曜日と土曜日の午後に出る宿の船で渡る。小さな島だが、ここには宿の客と働く人のほかに、もう一つの顔ぶれが暮らしている。環礁の海を見回る人たちだ。
1962年、ベリーズで初めての沖合の釣りの宿
公式サイトの年表によると、この島には古くはマヤの人々が住み、魚をとる拠点にしていた。17世紀には海賊が環礁の水路に隠れた。1941年からは釣りのキャンプが置かれ、1961年に島を買ったアメリカ人のビクター・バーホシー氏が、1962年にベリーズで初めての沖合の釣りの宿を建てた。2001年からは新しい家族が所有し、当時の建物のうち3棟が今も残る。
宿は、釣りとダイビング、シュノーケリングを中心につくられている。公式サイトによると、ダイビングのスポットは32か所あり、その多くは船で数分の距離だ。シュノーケリングは1日2回、25か所のスポットから選んで出かける。客室にテレビは置いていない。働く人の数は、いつも客の数より多いという。海の豊かさそのものが、宿の商品だ。
島に、保護区のレンジャーが住む
米国のダイビング誌が2024年に紹介した記事によると、ターネフ環礁は2012年に海洋保護区に指定された。環礁には、アンティル・マナティー、タイマイ、ナッソー・グルーパー、ヒラシュモクザメなど、数が減って絶滅が心配される生き物が暮らしている。
公式サイトによると、宿は「ターネフ環礁持続可能性協会(TASA)」のレンジャー3人を島に迎えている。レンジャーは、違法な漁や禁じられた漁のやり方、小さすぎる魚の水揚げを取り締まる。記事によると、TASAは保護区を日々守り、違法な漁を止める役目を担っている。
客も、この仕組みを支える。公式サイトのよくある質問によると、客は1人100ドルのTASAの保護区利用料を払う。この料金は、環礁の生態系を守るために役立てられる。
外来の魚を、ガイドが獲る
シュノーケリングに出るとき、宿のガイドはモリを持って潜る。狙うのは、カリブ海に外から入ってきたミノカサゴの仲間、ライオンフィッシュだ。公式サイトによると、ガイドは毎回のシュノーケリングで客にライオンフィッシュのことを教え、見つけると獲って、海の生き物への影響を和らげる。獲った魚は、夕食に出ることもある。
ダイビング誌の記事は、ダイビングのチームが熱心にライオンフィッシュを獲っているおかげで、この海のカリブ海のサメが人なつこいと書いている。一方で、獲ったライオンフィッシュをほかの生き物に与えるのは勧められないとも添えている。
ガイドは、客にサンゴ礁を傷めない過ごし方も伝える。サンゴに害の少ない日焼け止めを使うことや、海の生き物との安全な接し方だ。宿は、ダイバーが海を守る担い手になれるよう、教育に取り組む団体「REEF」にも加わっている。
釣った魚は、海に返す
宿の釣りは、すべて釣った魚を海に返す決まりだ。公式サイトは、環礁の魚と地元の漁師の暮らしを守るためだと説明している。釣りのプログラムは1週間に最大8人、1隻の船に最大2人までに限られる。ガイドは、地元で漁師として育った人たちだ。
宿を切り盛りする2人も、海とつながりが深い。アリーさんは大学で海洋生物学を学んだ。エディさんは、ターネフ環礁の浅瀬の釣り場を話し合う作業部会と、近くのライトハウス・リーフ環礁の助言の場に加わっている。宿は、研究者だった人を働き手に迎えているとも書いている。
島の暮らしも、海に負担をかけない
島の電気は発電機でまかなうが、お湯は太陽光で温める。シャワーは水の量を抑えたものを使い、トイレには海水を流す。庭の水やりには、使い直した水を点滴のように少しずつ与える。食材は季節に合わせて仕入れ、魚は地元の漁師から買う。モヒートに使うミントなどのハーブは、島で育てている。
宿の海に置き換えると
ターネフから学べるのは、宿が海を見回る人の拠点になり、客の料金がその活動を支える形をつくったことだ。海が豊かであるほど、宿の価値も上がる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)。海辺の12室の宿に、年にのべ4,000人が泊まるとする。1人500円の海の保全協力金を預かると、1年で200万円になる。地域の漁協などと話し合って使い道を決め、見回りの船の燃料や磯の掃除に充て、その結果を客に報告する。
持ち帰れる知識
- 海が商品の宿にとって、海を守ることは仕事そのものになる
- 見回る人に拠点を貸すことも、宿にできる保全の形だ
- 外来の生き物を獲る取り組みは、客に海の今を伝える場になる
- 釣りの人数を絞ると、海と地元の漁師の暮らしを守りやすい
宿で考えられること
- 地域の海や山を見回る人たちと、宿ができることを話し合ってみる
- 保全協力金を設け、使い道を客に報告する仕組みを考えてみる
- ガイドが客に、海や川での過ごし方を伝える時間を設けてみる
事業・予約への接続
ターネフ・アイランド・リゾートは、釣りやダイビングの客に、豊かな海とそれを守る仕組みをあわせて伝えている。海を守る活動に加われることが、自然を楽しみたい客にとって、この宿を選ぶ理由になる。
Sources / 参考情報
- Turneffe Island Resort(英文) - 持続可能性
裏付け: 研究者だった人を働き手に、TASAのレンジャー3人が違法な漁・禁じられた漁法・小さすぎる魚を取り締まる、グリーン・グローブ認証、REEFの会員、ガイドがサンゴ礁を傷めない過ごし方を教える、シュノーケリングのたびにライオンフィッシュを獲る、釣りは魚を返す、発電機の電気と太陽光の給湯、水量を抑えたシャワー、海水のトイレ、使い直した水で点滴の水やり、季節の食材と地元の漁師の魚、夕食のライオンフィッシュ、ミントなどのハーブ - Turneffe Island Resort(英文) - 島について / 宿について
裏付け: 沈んだ山の頂が環礁になった、リトル・キー・ボーケル、14エーカー、26室、働く人の数はいつも客より多い、マヤの人々、17世紀の海賊、1941年からの釣りのキャンプ、1961年にバーホシー氏が購入し1962年にベリーズ初の沖合の釣りの宿、2001年から新しい家族が所有し当時の建物3棟が残る、アリーさんは海洋生物学を学んだ、エディさんは浅瀬の釣り場の作業部会とライトハウス・リーフ環礁の助言の場に加わる - Turneffe Island Resort(英文) - よくある質問 / フライフィッシング / シュノーケリング
裏付け: 宿の船はベリーズシティの港から水曜と土曜の午後に出る、1人100ドルのTASAの保護区利用料が生態系の保全に役立つ、客室にテレビなし、発電機の電気と建物の太陽光パネル、釣りは魚を返す、1隻に最大2人・1週間に最大8人、地元で漁師として育ったガイド、ライオンフィッシュは外来種、ガイドがモリで獲り夕食に出ることもある、シュノーケリングは1日2回・25か所 - Turneffe Island Resort(英文) - スキューバダイビング
裏付け: ダイビングのスポットは32か所で多くが数分の距離、5人のダイブマスター - Scuba Diving(英文) - 注目の宿:ベリーズのターネフ・アイランド・リゾート(2024年1月)
裏付け: 2012年に海洋保護区に指定、アンティル・マナティー・タイマイ・ナッソー・グルーパー・ヒラシュモクザメ、TASAのレンジャー3人、TASAが保護区を日々守り違法な漁を止める、ライオンフィッシュを熱心に獲るおかげでサメが人なつこい、獲った魚をほかの生き物に与えるのは勧められない