2年かけて村の職人と部屋をつくった:チェンマイの「ラヤ・ヘリテージ」が、北タイの手仕事を宿の主役にする方法
タイ北部の古都チェンマイは、首都バンコクから700キロほど北にある。公式サイトによると、ラヤ・ヘリテージは、チェンマイの空港から車で30分、ピン川のほとりに建つ宿だ。庭に囲まれた3階建ての建物に、38室のスイートがある。
この宿の部屋で目を引くのは、建物ではなく、中に置かれたものだ。手でろくろを回した器、自然の染料で染めた布、細かな籐細工。どれも、北タイの村の職人と一緒につくられた。
建物は、手仕事の背景に
設計したのは、タイの建築家ブンラート・ヘムウィチットラパン氏だ。米国の旅行誌コンデナスト・トラベラーは、白くまっすぐな線の建物が、北タイの米倉のすっきりした形を思わせると紹介している。主張するための建物ではなく、細部の手仕事を引き立てる背景として設計されている。
公式サイトによると、建物は周りへの影響を抑えた3階建てで、素焼きの瓦、寄棟の屋根、古い硬い木材の柱と梁、桑の紙を張った建具が、北タイの伝統的な造りを感じさせる。川に面した広いベランダは、村の人たちが夕方に家の前に集まり、その日の出来事を語り合った時代を思い出させる造りだという。
開業前の2年間、村の職人と
公式サイトによると、宿のデザインチームは、開業前の2年間、北タイの小さな町や村で、織り手、陶工、木彫りの職人などと一緒に仕事をした。その作品が、宿のあちこちに置かれている。
部屋には、手彫りのチーク材の枠の鏡、地元でつくられた陶器のタイル、手で織り手で染めた布、手づくりの漆器が使われている。綿や麻、リネンといった自然の布は、昔ながらの糸紡ぎと機織りを今も続ける、タイでも数少ない村の機織りの協同組合から来ている。布を染めるのは、地元で育つ植物からとる本物の藍など、自然の染料だけだ。
コンデナスト・トラベラーによると、部屋には特別につくった陶器の茶器や手づくりの石けん、麦わら帽子も置かれている。1階の「クラーム」という部屋は藍色でまとめられ、専用のプールのテラスは素焼きのれんがで仕上げられている。
客が、手仕事にふれる時間
宿は、客が手仕事を自分で体験できる時間を毎日設けている。公式サイトの案内によると、平日の午後3時から1時間、曜日ごとに違う手仕事を教える。月曜日はパンダンの葉を折って花をつくり、水曜日は竹を編む。木曜日はタイの薬草を布で包んだ温める道具づくり、金曜日は木の枠の織り機で小さな布を織り、布を染める自然の材料について学ぶ。週末の朝にはヨガの時間もある。
火曜日につくるのは「タレオ」だ。北タイの言葉で「ワシの目」という意味で、村の人たちが魔よけとして家の前や畑に掛ける竹細工だという。客室では、このタレオが「起こさないでください」の札として使われることもある。
宿は、半日や1日の小旅行も手配している。行き先には、寺や市場、村に加えて、職人の工房も含まれる。コンデナスト・トラベラーによると、宿の家具をつくった職人に会いに行く旅も手配できる。正面の入り口の近くには売店「ヒムゴン」があり、職人がつくった家の飾りや服を売っている。
食べ物も、土地のものを
宿のレストラン「クーカオ」の名前は、北タイの米農家が昔使っていた、脱穀のための籐のかごに由来する。そのかごが、店の内装に使われている。公式サイトによると、ほぼすべての食材を、地元の持続可能な農園から仕入れている。コンデナスト・トラベラーは、川沿いにある宿の菜園の野菜も使い、使い捨てのプラスチックを置いていないと紹介している。料理は、近くのミャンマーやラオス、中国の雲南のレシピを今の形にしたもので、カレー風味の魚の汁をかけたビルマの米の麺モヒンガーなどが並ぶ。テラスでは、タイ北部チェンライの有機のお茶を出す。この宿は、同誌の「ゴールドリスト」に、2021年と2026年に選ばれている。
公式サイトの小旅行の案内では、客に、地元の人が営む店や食堂、ガイドを選ぶことや、手づくりの品を買うことを勧めている。そうすれば、使ったお金がそのまま地域に届くからだ。繰り返し使える水筒やカップ、買い物袋を持ってくることも呼びかけている。
宿を持つ企業グループは、事業は働く人と社会が株主と一緒に利益を得て初めて成功する、という考えを掲げる。グループは、貧しい家庭の子どもへの奨学金や、寄付された中古品を売って教育を支える活動、子どもに栄養のある食事を届ける活動を立ち上げ、支えている。
宿の部屋に置き換えると
ラヤ・ヘリテージから学べるのは、部屋の備品を、地域の手仕事を続けてもらうための注文に変えたことだ。客室で使い、売店で売り、体験で教えれば、職人の仕事は宿の中で何度も生きる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)。12室の客室に、近くの職人の湯のみを2個ずつ置くと24個になる。同じ湯のみを売店で1個3,000円で売り、月に20個売れると、1年で240個、72万円の売り上げになる。客室の分と合わせて、1人の職人に年264個の注文を出せる。
持ち帰れる知識
- 建物を控えめにすると、地域の手仕事が部屋の主役になる
- 備品の注文は、職人の仕事を続けるための支えになる
- 客が手仕事を体験すると、品物の背景が伝わる
- 客室で使う品を売店でも売ると、客が持ち帰れる
宿で考えられること
- 客室の備品の中で、地域の職人に頼めるものを探してみる
- 近くの職人に、客向けの短い体験を頼めないか相談してみる
- 客室で使っている品を、売店で売れないか考えてみる
事業・予約への接続
ラヤ・ヘリテージは、北タイの手仕事に囲まれた静かな川辺の滞在を、宿の魅力として伝えている。土地の文化に深くふれられることが、ありきたりではない旅を求める客にとって、この宿を選ぶ理由になる。
Sources / 参考情報
- Raya Heritage(英文) - 公式サイト / デザイン
裏付け: チェンマイはバンコクの北700キロ、空港から30分、ピン川沿いの38室のスイート、3階建て、建築家ブンラート・ヘムウィチットラパン氏、素焼きの瓦・寄棟の屋根・古い硬い木材の柱と梁・桑の紙の建具、川に面したベランダ、手彫りのチーク材の鏡・地元の陶器のタイル・手織り手染めの布・手づくりの漆器、昔ながらの糸紡ぎと機織りを続ける村の協同組合の綿・麻・リネン、地元の藍など自然の染料だけ - Raya Heritage(英文) - 持続可能性 / 地域への還元
裏付け: 開業前の2年間、北タイの町や村の織り手・陶工・木彫りの職人と仕事、ほぼすべての食材を地元の持続可能な農園から、事業は働く人と社会が株主と一緒に利益を得て成功する、グループが奨学金・中古品の再販・子どもの食事の活動を設立し支える - Raya Heritage(英文) - 毎日の文化体験(PDF) / 小旅行 / クーカオ / ヒムゴン
裏付け: 平日15時から16時、月曜はパンダンの葉の花・火曜はタレオ・水曜は竹編み・木曜は薬草の温める道具・金曜は木枠の機織りと自然の染料・週末の朝のヨガ、タレオは「ワシの目」で魔よけ、客室で「起こさないでください」の札に、職人の工房への小旅行、地元の店やガイドを選び手づくりの品を買うよう勧める、水筒・カップ・買い物袋の持参、クーカオは脱穀用の籐のかごに由来し内装に使う、地元の食材、入り口近くの売店で職人の品 - Condé Nast Traveler(英文) - ラヤ・ヘリテージ
裏付け: ゴールドリスト2021年と2026年、白くまっすぐな建物は北タイの米倉の形、建物は手仕事の背景、地域の職人と一緒につくった器・自然の染料の布・籐細工、38室、陶器の茶器・手づくりの石けん・麦わら帽子、藍色のクラームの部屋と素焼きれんがのプールのテラス、ミャンマー・ラオス・雲南のレシピとモヒンガー、チェンライの有機のお茶、家具をつくった職人を訪ねる小旅行、使い捨てプラスチックなし、ほぼすべての食材を地元の農園と川沿いの菜園から