GOAL 12 · TARGET 12.3 食品・フードロス・堆肥 4分 / 2271文字 皿とグラスを、土地に近づける #178

牛肉の料理は1皿だけに:コスタリカの山の宿「ホテル・ベルマール」が、メニューを地元の畑と海に近づけた方法

コスタリカの雲霧林で知られるモンテベルデに、ホテル・ベルマールがある。公式サイトによると、家族で営む独立した宿で、1985年に、この地域で2番目の宿として開業した。食べ残しを自分たちの農園の動物のえさや堆肥に戻す循環は、#164で紹介した。

今回取り上げるのは、皿とグラスの中身だ。宿は2024年、レストランやバーのメニューを大きく作り直した。肉と乳製品を減らし、近くの海の貝を増やし、ふだん捨てる部分を調味料に変え、飲み物も庭と農園の素材でつくる。料理の中身を、宿の周りの土地に近づける試みだ。

2024年、メニューを作り直した

米国の雑誌HOMBRE1の2024年6月の記事によると、新しいメニューは、宿の創作料理の料理長、アルバロ・ロドリゲスが手がけた。宿のレストラン「セラヘス」、醸造所を兼ねた「セルベセリア・ベルマール」、ジュースバーとティールームのすべてで、ごく近くの食材を選ぶ方針をとる。食材は、広げた宿の有機の菜園と、二酸化炭素の排出を差し引きゼロにした農園「フィンカ・マドレ・ティエラ」、そして周りの野山での採集から来る。

新しいメニューは、宿の二酸化炭素の排出を減らすことを狙い、植物の食材を中心に組み立てた。台所で使う肉と乳製品は20%減り、牛肉の料理は1皿だけになった。その分、植物の食材と、持続可能な方法でとった魚介が増えた。客に好評な料理の例として、タマリンドとひよこ豆のテンペが紹介されている。テンペは、豆を発酵させてつくるインドネシアの食べ物だ。

ロドリゲス料理長は「台所と食堂で、持続可能性を第一にすることが欠かせない。旅の人はコスタリカのすべてを味わいに来る。だから一皿ごとに、この地域の恵みと味を出す」と語っている。業界誌ホテル・マネジメント・ネットワークも、2024年6月に同じ内容を伝えた。

晴れた日に見える海から

宿の客室の一部からは、太平洋側のニコヤ湾が見える。HOMBRE1によると、晴れた日に宿から見えるこのニコヤ湾が、増やした魚介の仕入れ先になった。アサリやムール貝、その日にとれた魚は、湾の「コスタ・デ・パハロス」という、責任ある漁をする区域から来る。

宿は、地元の仕入れ先についても、持続可能性への取り組みと考え方を確かめた。環境と人にとって、より責任ある品を仕入れるためだという。

捨てる部分を、味に変える

料理には、高級料理の技と、酢漬けや発酵といった昔ながらの方法を組み合わせる。HOMBRE1によると、昔からの保存の技は、味を深めるだけでなく、季節の食材を一年中使い切る助けになる。食べ物のむだが減り、遠くから品物を運ぶことによる環境への負担も軽くなる。

台所では、ふだん捨てられる調理の副産物を、乾燥させたり、粉にしたり、発酵させたりして、別の料理の材料に生まれ変わらせる。宿でつくる酢は、セロリや、昔からの品種のバナナ、ブーゲンビリアの花からできている。

宿の公式サイトも、レストランの考え方を説明している。むだを出さない料理と飲み物を、味の強さと環境との調和、そして地域の経済への貢献を考えて選ぶ。見過ごされてきた食材や野山での採集、忘れられかけた料理の伝統を取り入れる。めざすのは、生き物の多様さを守り、土を守り、排出を減らす食事だという。

グラスの中も、庭と農園から

飲み物も変わった。HOMBRE1によると、新しいカクテルは、ニューヨークのバーの専門家が、地元の素材と「庭からグラスへ」という考え方で開発した。たとえば「トロピカル・オールドファッションド」には、フィンカ・マドレ・ティエラのバナナを漬け込んだウイスキーを使う。「ベラ・コリンズ」には、バーのすぐ外の庭で摘んだブーゲンビリアの花を使う。

宿の醸造所では、醸造の責任者と一緒に、蜂蜜や季節の果物、ハーブなど、すべて地元の素材を使った発酵の飲み物もつくった。アルコールを含むコンブチャと、ハイビスカスの蜂蜜酒だ。公式サイトによると、醸造所のビールは、雲霧林のわき水を使って宿でつくられ、スイカのエールや季節のスタウトもある。醸造所は宿の客だけでなく、外の人も利用できる。2024年11月には、世界の屋台料理とコスタリカの大衆食堂から着想を得た、地元の食材による新しい食事のメニューも始まった。

客が自分で体験できる時間もある。公式サイトによると、宿の客は無料で、1時間のカクテル教室に参加できる。かごを持って宿の庭を歩き、ハーブや花を摘んで、2杯のカクテルをつくる。毎週金曜日の午後3時からは、醸造所で宿のビール3種を味わい、つくり方の説明を聞く時間がある。

日本の宿に置き換えると

ホテル・ベルマールから学べるのは、地元のものを「足す」だけでなく、遠くから来るものを「減らす」ことも、メニュー作りの一部にしたことだ。牛肉を1皿に絞り、近くの海の貝と畑の野菜を増やし、捨てる部分を調味料に変えた。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)。夕食を1日20人に出す宿で、主菜の選択肢のうち牛肉の料理を3つから1つに減らした結果、牛肉を選ぶ客が1日15人から5人になったとする。1人分の牛肉を120グラムとすると、1日の使用量は1.8キロから0.6キロに減る。年300日営業なら、540キロが180キロになる。減った分を、近くの漁港の魚や畑の野菜の料理に振り向ければ、仕入れのお金は地域に向かう。

メニューを作り直したホテル・ベルマールは、皿とグラスの中身を、宿から見える海と、歩いて行ける畑に近づけていた。

持ち帰れる知識

  • 遠くから来る食材を減らすことも、メニュー作りの一部にできる
  • 近くの海や畑から仕入れると、料理に土地の物語が生まれる
  • 酢漬けや発酵は、季節の食材を使い切り、むだを減らす
  • 飲み物も、庭や農園の素材で地元のものにできる

宿で考えられること

  • 主菜の中で、遠くから来る食材の料理がいくつあるか数えてみる
  • 近くの漁港や農家から仕入れられる食材を探してみる
  • ふだん捨てている野菜の皮や切れ端を、調味料にできないか試してみる

事業・予約への接続

宿から見える海の貝や、歩いて行ける畑の野菜は、その宿でしか味わえない料理になる。客が庭でハーブを摘むような体験も、食事の時間を滞在の思い出に変える。

Sources / 参考情報

  • Hotel Belmar(英文) - 持続可能性 / レストラン・セラヘス
    裏付け: 家族で営む独立した宿、1985年にこの地域で2番目の宿として開業、ニコヤ湾が見える客室、地元の食材と農園と菜園、むだを出さない料理と飲み物を味・環境・地域の経済への貢献で選ぶ、見過ごされた食材・採集・料理の伝統、生き物の多様さと土を守り排出を減らす食事
  • Hotel Belmar(英文) - セルベセリア・ベルマール / クラフトビールの試飲 / 庭からグラスへのカクテル教室 / 新しいメニューの発表(2024年11月16日)
    裏付け: 雲霧林のわき水で宿でつくるビール、スイカのエールと季節のスタウト、宿の客と外の人が利用できる、金曜15時から1時間・3種の試飲とつくり方の説明・宿の客は無料、庭でハーブと花を摘む1時間の教室・2杯・宿の客は無料、世界の屋台料理とコスタリカの大衆食堂から着想した地元の食材の新しいメニュー
  • HOMBRE1(英文) - コスタリカのホテル・ベルマールが、新しい料理と飲み物のメニューと持続可能性の取り組みを発表(2024年6月30日)
    裏付け: ロドリゲス料理長、セラヘス・醸造所・ジュースバーとティールームの新しいメニュー、菜園とフィンカ・マドレ・ティエラと採集、植物中心で排出を減らす、肉と乳製品を20%減らし牛肉は1皿、植物と魚介が増えた、タマリンドとひよこ豆のテンペ、晴れた日に見えるニコヤ湾のアサリ・ムール貝・その日の魚とコスタ・デ・パハロスの責任ある漁の区域、料理長の発言、仕入れ先の取り組みを確かめた、酢漬けと発酵で季節の食材を使い切る、乾燥・粉・発酵で副産物を生かす、セロリ・バナナ・ブーゲンビリアの酢、ニューヨークの専門家のカクテル、バナナのウイスキーとブーゲンビリアの花、すべて地元の素材のコンブチャとハイビスカスの蜂蜜酒
  • Hotel Management Network(Yahoo Finance掲載、英文) - コスタリカのホテル・ベルマールの新しいメニューは環境を重視(2024年6月4日)
    裏付け: ロドリゲス料理長、菜園とフィンカ・マドレ・ティエラ、肉と乳製品を20%減らす、植物と魚介が増えた、ニコヤ湾のアサリとムール貝、酢漬けと発酵でむだを減らす、副産物を別の料理の材料に、地元の素材のカクテル

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