空き瓶はグラスに、古タイヤは植木鉢に:バリの「アリラ・ヴィラズ・ウルワツ」が、宿の一角の「サステナビリティ・ラボ」でごみを埋め立てに出さない方法
インドネシア・バリ島の南、ブキット半島。石灰岩の崖の上の台地に、アリラ・ヴィラズ・ウルワツがある。シンガポールの建築事務所WOHAが設計したリゾートで、2026年9月のエピキュア誌の記事によると、ヴィラは65棟ある。
ホテルを運営するハイアットの公式サイトによると、このリゾートは、観光の環境認証「アースチェック」で、インドネシアで初めて最高の段階の認証を受けた。乾いた土地で水を使い回す設計がよく知られるが、ここで取り上げるのは、日々の運営で出るごみの行き先だ。
ホテルの一角を、実験室に
ごみの処理の中心にあるのが、敷地の中の「サステナビリティ・ラボ」だ。オーストラリアの旅行誌ラグジュアリー・トラベルの取材で、ラボを担当するパーマカルチャー(自然の仕組みを生かした暮らしと農の設計)の専門家シルビナ・ミゲルさんは、ラボを2019年11月に始めたと話している。
ラボの柱は3つある。土地と建物と地域を一体で考える設計、できるだけ自分たちでまかなう努力、そしてデータを集めることだ。宿には自前のごみの処理場があり、毎日ごみを集めて分け、処理し、使い直し、リサイクルし、別の製品に生まれ変わらせる。埋め立てに回すごみが出ないようにしている。持ち込まれるごみと出ていくごみ、毎週の収穫、毎日の生産量は、すべて量って記録する。
ホテル業界の団体「世界サステナブル・ホスピタリティ・アライアンス」が紹介した事例で、総支配人のヘマル・ジャインさんは、「ホテルの一角を、美しく持続可能なラボに変えることにした。そこから、この取り組みが始まった」と話している。
捨てていたものを、つくり直す
ハイアットの公式サイトは、宿の代表的なアップサイクルとして、3つを挙げる。空き瓶からグラスを、割れたガラスや陶器からタイルを、敷地を走るカートの古タイヤから植木鉢をつくる。
同じアライアンスの事例によると、ほかにも、客が使ったスリッパを細かくして、ビーズクッションの詰め物にする。古タイヤは、植木鉢だけでなく椅子にもなる。
ミゲルさんによると、ラボにはガラスの工房がある。厨房から出た瓶を、職員食堂やレストラン、宿の店で使うグラスにつくり変える。
たとえば、夕方のレストラン。客がワインを飲むグラスは、少し前まで、厨房の棚に並ぶ瓶だった。
生ごみは、土と家畜のえさに
公式サイトによると、生ごみはラボで栄養の多い堆肥に変え、宿の有機の菜園に使う。菜園には、唐辛子、食べられる花、ハーブ、果物の木が、自然の森をまねた形で植えられている。ミゲルさんによると、地元の団体「タンビャク・レスタリ」が宿の生ごみを集め、自分たちの養豚場のえさにしている。
ラボは、宿の中だけの場所ではない。ミゲルさんによると、ラボは働く人だけでなく、地域の人や団体、ホテルの学校の研修の場にもなった。ごみの処理の研修を開く地元の団体「R.O.L.E.財団」とは、宿のごみの一部を研修の材料として分け合っている。公式サイトによると、宿は西ジャワ州西バンドン県のパロンポン村の民間の研究所「パロンポン・RAWラボ」とも組み、たばこの吸い殻のごみを減らす方法を探っている。
プラスチックを、入口で止める
ごみを処理するだけでなく、そもそも持ち込まないことも大切にしている。公式サイトによると、宿は2021年6月から、裏方を含むリゾート全体で、使い捨てのプラスチックをなくした。食べ物のプラスチックの包装、袋、使い捨てのフォークやスプーンも使わない。働く人と客には、繰り返し使える袋を持ってくるよう勧めている。
飲み水は、敷地の中の浄水の設備でつくる。使い捨てのペットボトルの代わりに、ガラスの瓶に詰めて客室や敷地のあちこちに置き、洗ってまた使う。客室のアメニティも、プラスチックから、自然に分解されて堆肥にできる素材のものに替えた。公式サイトは、バリで最初にこの切り替えをしたリゾートだとしている。
宿は、国連環境計画と国連世界観光機関が進める「世界観光プラスチック・イニシアチブ」にも署名している。ミゲルさんは、要らないプラスチックの包装や備品を2025年までになくすという約束について、取材の時点で94%をなくしたと話している。
2026年、ごみの輪は農場へ
この流れは、2026年に新しい形になった。旅行誌トラベル・アンド・レジャー・アジアによると、宿は2026年8月1日、再生型の農場「ウマ・ブキット」を開いた。
エピキュア誌の記事によると、農場の中心にあるのは、何も無駄にしない循環の仕組みだ。宿の生ごみは、堆肥の設備と、生ごみを食べて育つ虫「アメリカミズアブ」の幼虫によって堆肥に変わる。キノコは、農業で出る副産物を使って育てる。鶏やアヒル、ヤギ、ウサギ、淡水魚などの生き物が、それぞれ養分の循環と土の再生に役割を持つ。
菜園では、唐辛子、ウコン、ショウガ、ナンキョウ、ヒラタケ、ジャワナガコショウなどを育て、その多くが宿の厨房に届く。客は、料理人と一緒にハーブを収穫したり、生ごみが堆肥になる様子を見たり、案内つきで農場を歩いたりできる。同じ記事は、バリでは生ごみの処理が今も課題になっていると指摘している。
日本の宿に置き換えると
アリラ・ヴィラズ・ウルワツの工夫は、ごみを「処理するもの」から「材料」に見方を変え、その流れをすべて量って記録したことにある。まずは、入ってくるものと出ていくものを量ることから始められる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)。20室・稼働率70%の宿では、年に5,110室泊になる。1室泊あたりの生ごみを0.3キロとすると、年に1,533キロ。仕込みの見直しと、食べ残しを減らす工夫で3割減らせれば、年に約460キロの生ごみが減る。残りを地域の農家の堆肥やえさに回せれば、燃やすごみはさらに減る。
ラボの棚に並ぶグラスとタイルは、どれも、もとはこの宿のごみだった。
持ち帰れる知識
- ごみを「材料」として見ると、新しい製品と仕事が生まれる
- 入ってくるごみと出ていくごみを量ると、減らす場所が見える
- 地域の団体と組めば、宿だけで処理できないごみにも行き先ができる
- ごみの循環を見せる場は、客が学ぶ体験にもなる
宿で考えられること
- 1週間、種類ごとにごみの量を量って記録してみる
- 空き瓶や古いタオルを、宿の中で使い直せないか考えてみる
- 生ごみを受け取ってくれる地域の農家を探してみる
事業・予約への接続
アリラ・ヴィラズ・ウルワツは、ラボや農場を案内するツアーを、滞在の体験として用意している。ごみがどこへ行くのかを自分の目で確かめられることが、環境に配慮する客にとって、この宿を選ぶ理由になる。
Sources / 参考情報
- Hyatt(英文) - アリラ・ヴィラズ・ウルワツ:サステナビリティ
裏付け: WOHAの設計、アースチェックでインドネシア初の最高の段階の認証、有機の菜園(唐辛子、食べられる花、ハーブ、果物の木)と生ごみの堆肥、空き瓶からグラス・割れたガラスと陶器からタイル・カートのタイヤから植木鉢、バリで最初に分解されて堆肥にできるアメニティ、サステナビリティ・ラボ、世界観光プラスチック・イニシアチブに署名(国連環境計画と国連世界観光機関)、パロンポン・RAWラボとたばこの吸い殻、2021年6月から裏方を含め使い捨てのプラスチックなし(包装、袋、フォークやスプーン)、浄水の設備とガラスの瓶、案内つきのサステナビリティ・ツアー - Luxury Travel Magazine(英文) - 旅を考え直す:無駄をなくせば、困らない(2024年7月25日更新)
裏付け: シルビナ・ミゲルさん(パーマカルチャーの専門家)、ラボは2019年11月に開始、3つの柱(一体の設計、自給の努力、データ)、自前のごみの処理場で毎日集めて分けて処理し埋め立てに回さない、ごみの出入りと収穫と生産をすべて量る、ラボが働く人と地域と団体とホテルの学校の研修の場に、ガラスの工房で厨房の瓶を職員食堂とレストランと店のグラスに、2021年から世界観光プラスチック・イニシアチブ・2025年までに要らないプラスチックの包装と備品をなくす約束で94%を達成、タンビャク・レスタリが生ごみを養豚場のえさに、R.O.L.E.財団とごみを分け合う - World Sustainable Hospitality Alliance(英文) - ハイアット:アリラ・ヴィラズ・ウルワツの事例(2023年)
裏付け: ホテルの一角をラボに変えた、空き瓶からグラス、割れたガラスと陶器からタイル、スリッパをビーズクッションの詰め物に、古タイヤから椅子と植木鉢、総支配人ヘマル・ジャインさんの言葉 - epicure(英文) - アリラ・ヴィラズ・ウルワツが再生型の農場ウマ・ブキットを公開(2026年9月24日)
裏付け: 「自然に根ざし、土から心へ」、生ごみを堆肥の設備とアメリカミズアブの幼虫で堆肥に、農業の副産物でキノコ、鶏・アヒル・ヤギ・ウサギ・淡水魚など、菜園の唐辛子・ウコン・ショウガ・ナンキョウ・ヒラタケ・ジャワナガコショウなどが厨房へ、収穫や堆肥づくりの見学や案内つきの散策、バリでは生ごみの処理が課題、石灰岩の崖の上の台地に65棟のヴィラ - Travel + Leisure Asia(英文) - アリラ・ヴィラズ・ウルワツが描く、バリのぜいたくな旅の次の章(2026年9月)
裏付け: ウマ・ブキットは2026年8月1日に開いた再生型の農場、生ごみを堆肥とアメリカミズアブの幼虫で循環