GOAL 14 · TARGET 14.2 海洋・沿岸保全 5分 / 2872文字 ダイブショップの輪で植え戻す #185

1軒の宿が始めたサンゴの再生が、島じゅうの仕組みに:ボネールの「バディ・ダイブ」と、「リーフ・リニューアル財団」の歩み

カリブ海の南、ベネズエラの北に浮かぶオランダ領の島、ボネール。岸から歩いて海に入るだけでサンゴ礁に出会える島として、世界のダイバーに知られる。

その島の中心の町クラレンダイクに、バディ・ダイブ・リゾートがある。公式サイトによると、リゾートが初めて客を迎えたのは1980年8月19日。今の経営者の家族が引き継いだ2002年には、46室のアパートメントと、ボート3隻の小さなダイビングの拠点しかなかった。今は73室のアパートメントと2つのレストランを持ち、ダイビングの指導団体PADIの5つ星の拠点として、6隻のボートを走らせる。

創設のパートナーとして

公式サイトによると、2012年、ボネールのサンゴ礁を守り、再生するための非営利の団体「リーフ・リニューアル財団ボネール」が生まれた。バディ・ダイブは、設立のときからのパートナーだ。最初の保育園も、サンゴを植え戻す最初の場所も、最初の事務所も、バディ・ダイブにあった。最初に訓練を受けたスタッフやボランティア、サンゴの再生の講習も、ここから始まった。

始まりの作業は、サンゴを集めることだった。公式サイトによると、財団は、ボネール国立海洋公園とバディ・ダイブのスタッフのボランティアと一緒に、枝状のサンゴ、スタッグホーンコーラルとエルクホーンコーラルの、遺伝的に異なる株を集めた。これが保育園の元になる株になり、定期的にかけらに分けて、新しい世代を育ててきた。いろいろな株を集めておけば、植え戻したサンゴ礁の遺伝的な多様性が高まり、変化に強くなる。

財団の目標は、植え戻すことだけではない。管理されないまま流れ込む雨水や、十分でない下水の処理など、陸から海を弱らせる原因を、地域と一緒に見つけて減らすことも掲げている。

宿の桟橋から行ける保育園

公式サイトによると、サンゴを大量に育てる中心の保育園は、人があまり立ち入らない隣の小島、クライン・ボネールの沖にある。もう一つの保育園は、宿の前の海「バディーズ・リーフ」にある。水深6メートルの、海底が深く落ち込む縁に「サンゴの木」が並び、サンゴを育てると同時に、ダイバーの訓練に使われる。この保育園には、宿の桟橋から潜って行ける。

宿では毎週、財団の活動を紹介する説明会を開く。客は、保育園での作業、サンゴのかけらの切り分け、植え戻しの技術を学べる。さらに学びたい人は、PADIの「リーフ・リニューアル・ダイバー」の講習を受けられる。

たとえば、朝の桟橋。講習を受けるダイバーが、器材を背負いながら、きょう植え戻すサンゴの話をしている。

数字は、いつのものか

サンゴの数は、資料によって違う。宿の公式サイトのページには、時期の違う数字が並んでいる。あるページは、8つの保育園で1万4,000本以上が育ち、2013年から3万本を植え戻したと書く。別のページは、2万2,000本以上を植え戻したと書く。

いちばん新しい財団の2025年の年次報告書によると、これまでに植え戻したサンゴは7万5,456本。2025年の1年だけで1万645本を植えた。保育園では、2万2,000本以上のサンゴを育てられる。植え戻したサンゴが広がる範囲は、1万1,260平方メートルになる。

ダイブショップの輪

財団の大きな力は、島のダイブショップの輪だ。年次報告書によると、2025年の時点で、17のダイブショップが財団と組んでいる。この年に2つのダイブショップが新しく加わった。各店は、ボランティアを訓練し、保育園や植え戻しの場所の手入れをし、決まったやり方で観察の記録を集める。

財団の講習を教える指導者は39人で、2025年に6人増えた。講習を終えて認定を受けたダイバーは2,815人で、この年だけで349人増えた。活動するボランティアは200人を超え、報告書は、海の中で過ごした時間を5,089時間と記している。1軒の宿から始まった取り組みは、島じゅうの店と旅人が担う仕組みになった。

熱波のあとで

順調なことばかりではない。年次報告書によると、2023年と2024年の記録的な海の熱波で、サンゴの白化と病気が広がり、保育園のサンゴも減った。財団は、ダイブショップの指導者の手を借りて、西の海岸の14か所の保育園で、サンゴの健康と生き残りを記録した。エルクホーンコーラルの生き残りは、遺伝子型と場所によって大きく違った。

2025年、財団は、熱に耐えて生き残ったサンゴを島じゅうで探し、保育園に集めることに力を移した。脳のような形のサンゴや岩のようなサンゴなどを育てる保育園では、12種、113の遺伝子型を育てている。この年に加えた遺伝子型は47で、前の年より71%増えた。

8年後の海

植え戻しの効果も、確かめられ始めている。年次報告書によると、島の南西の「ピンク・ビーチ」では、490平方メートルの場所に、12の遺伝子型のスタッグホーンコーラルを1,250株植え戻した。植え戻しから8年後、すぐ北の、何もしていない場所と比べると、魚の数も、魚の重さの合計も、サンゴに覆われた割合も、植え戻した場所のほうが多かった。今では、育ったサンゴが毎年産卵し、周りのサンゴ礁に幼生を送っている。

宿の陸側でも

バディ・ダイブは、宿の運営でも海への負担を減らしている。公式サイトによると、海水から塩を取り除いてつくった水道の水を、そのまま飲める。客には、繰り返し使える水筒を持ってくるよう勧める。レストランの食べ残しは毎日、地元の農家に引き取られ、牛のえさになる。ごみは圧縮する機械で処理し、プラスチック、段ボール、それ以外に分ける。宿は、この機械を島で2番目に使い始めた会社だという。

ライオンフィッシュの駆除にも取り組む。ライオンフィッシュはカリブ海に入り込んだ外来の魚で、もともといるサンゴ礁の魚をおびやかしている。宿はダイビングの途中でこの魚をとり、とり方を学ぶ講習も開く。客が自分でとった魚を午後3時から5時の間に宿のレストランに持ち込めば、さばいて、その日の夕食に料理してくれる。

ボネールの観光の公社は2022年、島を訪れる人が、海の資源を大切に使い、島の文化と自然を尊重すると誓う「ボネール・ボンド」を始めた。署名した人に代わって、公社は財団のサンゴの木を支援する。宿は、すべての客に署名を勧めている。

日本の宿に置き換えると

バディ・ダイブの歩みからわかるのは、1軒の宿が始めた取り組みでも、地域の仲間に開けば、島全体の仕組みに育つということだ。保育園を1軒で持たなくても、地域のダイビング店や宿が、ひとつの保全団体を一緒に支える形がとれる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)。海辺の町の宿5軒が、それぞれ年に10万円を出し合うと、年に50万円になる。サンゴ1本を育てて植え戻す費用を2,000円とすると、年に250本を植え戻せる。10年続ければ2,500本になる。

宿の桟橋の先で育つサンゴは、島じゅうのダイバーの手を借りて、海に戻っていく。

持ち帰れる知識

  • 遺伝的に異なる株を集めて育てると、植え戻したサンゴ礁が変化に強くなる
  • 1軒で始めた取り組みも、地域の店に開けば大きな仕組みに育つ
  • 数字は資料の時期で変わるので、いちばん新しい報告で確かめる
  • 植え戻した場所と、何もしない場所を比べると、効果を確かめられる

宿で考えられること

  • 地域の海や森の保全団体と、宿が一緒にできることを話し合ってみる
  • 近くの宿やダイビング店と、保全の費用を出し合う形を考えてみる
  • 食べ残しを引き取ってくれる農家を探してみる

事業・予約への接続

バディ・ダイブは、宿の桟橋から行ける保育園と、サンゴの再生の講習を、ダイバーが泊まる理由にしている。潜るたびに海を少しよくできることが、繰り返し訪れる客を生む力になる。

Sources / 参考情報

  • Reef Renewal Foundation Bonaire(英文) - 2025年の年次報告書
    裏付け: これまでに7万5,456本を植え戻し・2025年は1万645本、保育園で2万2,000本以上を育てられる、植え戻しの範囲1万1,260平方メートル、17のダイブショップ・2025年に2店が加わる、指導者39人(2025年に6人増)、認定ダイバー2,815人(2025年に349人増)、活動するボランティア200人超、海の中で5,089時間、2023年と2024年の熱波で白化と病気・保育園のサンゴが減る、14か所で記録・エルクホーンの生き残りは遺伝子型と場所で違う、2025年は熱に耐えたサンゴを集める、12種・113の遺伝子型(71%増)・47の遺伝子型を追加、ピンク・ビーチの490平方メートル・12の遺伝子型・1,250株・8年後に魚の数と重さとサンゴの割合が比較の場所より多い・毎年産卵
  • Buddy Dive Resort(英文) - サステナビリティ
    裏付け: 2012年に生まれた財団の設立からのパートナー、最初の保育園と植え戻しの場所と事務所、最初のスタッフとボランティアと講習、2022年に始まったボネール・ボンドと財団のサンゴの木、海水からつくる飲める水道の水と水筒、ライオンフィッシュの駆除と講習・午後3時から5時に持ち込めば夕食に料理、圧縮の機械は島で2番目、食べ残しは毎日農家の牛のえさに
  • Buddy Dive Resort(英文) - リーフ・リニューアル財団ボネール
    裏付け: 遺伝的な多様性を守り、保育園と植え戻しで浅いサンゴ礁を再生し、雨水の流れ込みや下水の処理など陸の原因を減らす、国立海洋公園とスタッフのボランティアでスタッグホーンとエルクホーンの株を集める、株を分けて新しい世代を育てる、8つの保育園で1万4,000本以上・2013年から3万本を植え戻す、中心の保育園はクライン・ボネールの沖、バディーズ・リーフの水深6メートルの保育園は訓練に使い宿の桟橋から行ける、毎週の説明会、PADIのリーフ・リニューアル・ダイバー
  • Buddy Dive Resort(英文) - バディ・ダイブについて
    裏付け: 1980年8月19日に開業、2002年に引き継いだときは46室とボート3隻、今は73室と2つのレストラン、PADIの5つ星の拠点で6隻のボート、2012年に財団をつくる、2万2,000本以上を植え戻した

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