村がお金を借りて建て、村で回す:ガイアナの先住民の村「スラマ」のエコロッジが、働く場と森を守ってきた方法
南米の北東部、ガイアナの南に広がるルプヌニ地方。草原のサバンナと熱帯雨林が出会う場所に、先住民マクシの人々が暮らす村、スラマがある。パカライマ山地のふもとにあり、100万エーカーの熱帯雨林の保護区「イウォクラマ」と境を接している。
ガイアナの政府広報によると、2018年の時点で、村の人口はおよそ304人だった。この小さな村が、自分たちで建て、自分たちで営んできたのが「スラマ・エコロッジ」だ。
最初の客の支払いが、最初の宿に
政府広報によると、1990年代の半ばまで、村の暮らしは主に自給のための農業に頼っていた。現金の仕事を求める一部の男性は、国の北西部や国境の向こうのブラジルへ、木を切る仕事や金を掘る仕事に出ていた。
1996年、スラマは初めて観光客を迎えた。客が泊まるために村に払ったお金で、村は最初の宿を建てた。
国際的な観光の団体の本に収められた事例の章(開業から7年の時点)によると、村は2004年にエコツーリズムの事業を始めた。目標は、「自然の資源と伝統の文化を、社会にふさわしいやり方で生かし、地域が主体のエコツーリズムの事業を、自分たちで育て、持ち、営むこと」。宿を建てるために、村は100万ガイアナ・ドル(約5,000米ドル)を借りた。この借金は予定より早く返し終えたという。村は観光を「緑のゴールドラッシュ」と呼ぶ。
少人数だけを迎える宿
同じ章によると、宿は地元の材料と伝統の建て方でつくられた。当時は、ベナブと呼ばれる伝統の小屋の客室が4棟、4つの客室がある建物、食事と集いのための大きなベナブがあった。川沿いには、森の奥に泊まるキャンプも持つ。
宿が迎えるのは、少人数のグループだけだ。森の中の場所と、村の毎日の暮らしへの負担を小さくするためだという。村のガイドが、山歩き、薬草の散策、鳥の観察、丸木舟での川下りなどに客を案内する。
村の4分の1が、観光で働く
同じ章によると、観光は、この地域で最も大きな経済の柱になった。70人を超える人、村の4分の1が、観光で働いている。宿の接客、ガイド、料理、手仕事、運転などの直接の仕事のほか、農家、狩人、漁師、建設や修理の仕事として、間接に関わる人もいる。村の収入の60%以上が観光から生まれ、75%の世帯が観光から収入を得ている。政府広報も、2018年に同じ割合を伝えている。
宿で働く人は、交代で勤める。同じ章は、そうすることで、働く人が村の伝統の暮らしを続けられると説明する。2021年の取材で、宿の支配人ジャッキー・アリコックさんは、交代で雇うことで、観光に関わる人を幅広く支えられると話した。アリコックさん自身、2002年に客室の清掃と台所の仕事から働き始めた人だ。
利益は、村の基金に
宿の利益は、宿の家具の入れ替え(村の若者の木工の取り組みでつくった家具)、キャンプの整備、客と物資を運ぶ車、衛星のインターネット、太陽光発電に使われた。
さらに、客が払う料金と、働く人の拠出を合わせて、村の投資の基金を支えている。基金は、村の保健と教育の設備や学用品、太陽光発電、風車、10代の若者の大学の奨学金、作物を市場へ運ぶトラックなどに使われた。村の起業家に小さなお金を貸す仕組みにもお金を回している。
森を守ることが、仕事になる
スラマは、イウォクラマにならい、村の土地を、野生の生き物のための区域と、資源を持続的に使う区域に分ける計画をつくった。同じ章によると、村の土地のうち20平方キロメートルを保護区とし、2010年には国際自然保護連合(IUCN)の支えで、自然の調査を行った。
野生の生き物をわなでとることは、1994年から禁じている。絶滅が心配される木、ブレットウッド、レターウッド、グリーンハート、ワラマデンを切ることも禁じ、植林と見回りを始めた。1998年からは、6歳から18歳の子どもの「ジュニア野生生物クラブ」があり、鳥や動物の観察、調査の方法を学ぶ。村の子どもたちは、客を自然や文化の散策に案内し、教室にも迎える。
たとえば、朝の村の学校。教室を訪ねた客に、子どもたちが、きのう森で見た鳥の名前を教える。
文化を守る取り組みもある。女性たちのキャッサバづくりは、客の見学の場にもなっている。女性が集まって手仕事をし、客に売る品をつくる場所もある。20人を超える文化のグループが、踊りや歌でマクシの暮らしを伝え、学校ではマクシの言葉を教えている。
2021年の取材で、アリコックさんは、客が守るべきことの一覧をつくり、守らない人は村の一部の場所に入れないと話した。
村から村へ
2011年、スラマ・エコロッジは、カリブ観光機構の持続可能な観光の賞を、ほかの1か所と共に受けた。同じ章によると、スラマは少なくとも6つの村が観光の事業を始めるのを手伝ってきた。
2026年10月にガイアナの首都ジョージタウンで開かれたカリブ観光機構の会議を伝えた記事は、スラマ・エコロッジを、エコツーリズムを土地の持続的な使い方と決めた村の人々が持ち、営む宿として紹介した。ガイアナ観光局は、50を超える地域で、地域が主体で地域が持つ観光を支えている。
日本の宿に置き換えると
スラマから学べるのは、宿の利益と、客の料金の一部を、地域の基金として見える形にすることだ。何に使ったかを示せば、地域の人も客も、宿を続ける意味を共有できる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿で、1室泊あたり200円を地域の基金に積み立てるとする。年5,110室泊なら、年102万2,000円になる。10年続ければ1,022万円で、地域の子どもの体験学習や、森の見回りの費用に回せる。
持ち帰れる知識
- 最初の客の支払いが、最初の宿の資金になった
- 少人数だけを迎えると、自然と暮らしへの負担を小さくできる
- 交代で雇うと、多くの人が観光に関われ、伝統の暮らしも続けられる
- 利益と料金の一部を地域の基金にすると、使い道が見える
宿で考えられること
- 地元の人を、季節や時間帯で交代して雇えないか考えてみる
- 宿の売り上げの一部を、地域の活動に回す仕組みを話し合ってみる
- 客に守ってほしいことを、一覧にして予約の前に伝えてみる
事業・予約への接続
村の人が案内する体験そのものが、泊まる理由になる。スラマ・エコロッジは、村の人が持ち、営む宿であることを伝え、森と文化を村の人と一緒に歩く滞在を届けている。
Sources / 参考情報
- IIPT(国際観光平和協会、英文) - スラマ村のエコロッジ:伝統と新しい方法を合わせ、生物多様性と持続可能な暮らしを守る(ジュディ・カーワッキさん)
裏付け: マクシの約300人の村、2004年に事業を開始、事業の目標の言葉、100万ガイアナ・ドル(約5,000米ドル)を借りて建て予定より早く返済、緑のゴールドラッシュ、開業7年の時点、2011年のカリブ観光機構などの賞、イウォクラマは100万エーカー、土地を野生の区域と持続的な利用の区域に分ける計画、20平方キロメートルの保護区、2010年のIUCNの支えの調査、地元の材料と伝統の建て方、ベナブの客室4棟と4室の建物と食事のベナブ、川沿いのキャンプ、少人数のグループだけ、子どもが散策を案内し教室に迎える、70人超(村の4分の1)、収入の60%以上、75%の世帯、1998年からのジュニア野生生物クラブ(6〜18歳)、1994年からわな猟を禁止、ブレットウッド・レターウッド・グリーンハート・ワラマデンの伐採禁止と植林・見回り、交代で勤め伝統の暮らしを続ける、女性のキャッサバづくり、女性の手仕事の場、20人超の文化のグループ、学校でマクシの言葉、利益の使い道(若者の木工の家具・キャンプ・車・衛星インターネット・太陽光)、客の料金と働く人の拠出で基金(保健・教育・学用品・太陽光・風車・奨学金・トラック)、小さな貸し付けの仕組み、少なくとも6つの村を支援 - Department of Public Information, Guyana(英文) - スラマ・エコロッジは地域の観光の手本(2018年7月4日)
裏付け: 人口およそ304人、マクシの人々、1996年に初めての観光客を迎え支払いで最初の宿を建てた、1990年代半ばまでは自給の農業で一部の男性は北西部やブラジルで木を切る・金を掘る仕事、2011年のカリブ観光機構の賞をハリソンズ・ケーブと共に受けた、収入の約60%が観光から、75%の世帯が観光から収入 - Inclusive Business Action Network(英文) - ガイアナの観光:暮らしを支え、自然を守る(ジャッキー・アリコックさんへのインタビュー)(2021年9月23日)
裏付け: 村が育て、持ち、営む事業、2004年に開業、支配人のアリコックさんは2002年に客室の清掃と台所の仕事から始めた、交代で雇い観光に関わる人を幅広く支える、客が守ることの一覧をつくり守らない人は村の一部の場所に入れない - Ron Fanfair(英文) - 土地に根ざすガイアナの先住民の地域が、観光の未来をつくる(2026年10月9日)
裏付け: 2026年10月にジョージタウンで開かれたカリブ観光機構の会議、スラマ・エコロッジはエコツーリズムを土地の持続的な使い方と決めたスラマの人々が持ち営む、ガイアナ観光局は50を超える地域で活動し地域が主体で地域が持つ観光の枠組み - Explore Guyana(ガイアナ観光ホスピタリティ協会、英文) - ガイアナの自然のリゾートとエコロッジ(2025年6月21日)
裏付け: パカライマ山地のふもとのサバンナと熱帯雨林、マクシの人々が持ち営む、地域の観光で最も知られた成功例の一つ、地域の雇用と伝統の知恵を守り、ほかの地域の取り組みにも影響を与えた