GOAL 5 · TARGET 5.5 人・働き方・包摂 4分 / 2344文字 女性のガイドを、採って、育てて、続けてもらう #200

女性のガイドが国に5人もいなかったころ:ボツワナの「チョベ・ゲーム・ロッジ」が、女性だけのガイドチームを育てた方法

ボツワナの北、チョベ国立公園の中を流れるチョベ川のほとりに、「チョベ・ゲーム・ロッジ」がある。公式サイトによると、この地域で、そしてボツワナで最も古い5つ星のロッジだ。客室は40室とスイート4室。川沿いには250メートルの板の遊歩道がある。ヴォーグ誌によると、約4,500平方マイルの国立公園の中で、ただ一つの常設のロッジだ。TTGの記事によると、建物は1960年代に建てられた。

このロッジのサファリを案内するのは、女性だけのガイドチーム「チョベ・エンジェルズ」だ。サファリのガイドは、長く男性の仕事とされてきた。この記事では、ロッジが女性のガイドをどう採り、どう育て、どう続けてもらったかを見ていく。

たとえば、朝の川。ガイドが静かなボートを岸から離し、水を飲みに来たゾウの群れに、ゆっくりと近づいていく。

1人の女性ガイドから

旅行業界誌TTGの2018年の記事によると、フローレンス・カギソ氏は2004年、ロッジで最初の、そしてただ1人の女性ガイドとして働き始めた。彼女はすぐに人気になり、彼女の案内でなければ嫌だという客も多かった。

ガイドになると決めたとき、家族は反対した。カギソ氏は記事の中で、動物に襲われるかもしれない、とくに妊娠していたら危ない、タイヤを替えたり長い時間外にいたりするのは女性の仕事ではない、と家族が心配したと話している。そのことが、かえって自分を証明しようという決意を強くしたという。

国に5人もいなかった

米ヴォーグ誌の2025年の記事によると、ヨハン・ブルワー氏が2004年に総支配人になったとき、ロッジの女性ガイドは1人だけだった。客の反応がとても良いのを見て、女性を増やそうとした。ところが、強い文化の抵抗と、広い疑いの目にぶつかった。

「驚いたことに、国全体で女性のガイドは5人もいなかった」と、ブルワー氏は話している。「女性はボツワナでガイドをしない」という思いこみがあった。

そこでブルワー氏は、地元のメディアを使って女性に呼びかけた。さらに、ボツワナ野生生物研修所に、女性の修了生をロッジに送ってほしいと頼んだ。旅行誌の記事によると、のちにロッジの環境担当になるツェピソ・ヴィヴィアン・ディプフ氏は2005年、ロッジが国の新聞に出した広告で、この道を知った。広告には、研修所への応募に女性を歓迎すると書かれていたという。

ヴォーグ誌の記事で、早い時期のガイドの一人、マレボゴ・マングウェガペ氏は、研修所のクラスは女性15人と男性15人で、女性は全員が厳しい研修に合格したと振り返っている。

2010年に、ガイドは全員が女性に

ヴォーグ誌とTTGの記事によると、2010年までに、ロッジのガイドは全員が女性になった。全員が女性になった年を2012年とする記事もある。

採るだけでは足りなかった。ヴォーグ誌によると、ブルワー氏は、男女同じ給料と、手厚い産休の決まりを整えた。女性が働き続けられる環境をつくるためだ。

先輩が後輩を励ますことも大きかった。のちにガイド長になるカギソ氏は、「私にできるのだから、あなたたちにもできる」と後輩を励まし続けたという。

ロッジは、女性ガイドの育つ場所に

チョベ・エンジェルズは、ロッジの外にも影響を広げた。ヴォーグ誌によると、ケニアやザンビアのロッジでも、似た取り組みが生まれた。今ボツワナで働くおよそ100人の女性ガイドのうち、半分以上が、チョベ・エンジェルズで仕事を始めたという。

ガイドの仕事は、案内だけではない。ロッジの公式サイトの2025年の記事によると、チョベ・エンジェルズは、英国オックスフォード大学の研究室とつながる保全の団体と組み、ライオンの写真の撮り方を学んだ。ひげの並び方や耳の切れこみ、鼻の色、傷あとを記録し、ライオン一頭一頭を見分けるデータベースをつくるためだ。主にガイドから集めたデータで、ライオンの数を見守る仕組みを目指している。

静かなボートと、電気の車

ロッジは、エネルギーの面でも新しいことを試してきた。公式サイトによると、2014年に、太陽の光で動くボートとサファリの車を導入した。TTGの記事によると、これはアフリカで初めてで、2017年にロンドンの旅行見本市の「責任ある観光の賞」を受けた。

TTGの2018年の記事の時点で、ホテルの870個の電球は、すべてLEDに替わっていた。太陽光パネルは電気の8%近くをまかない、新しいパネルを加えて18%にする計画だった。電気のサファリ車は1台3万5,000ドルかかったが、ブルワー氏は、宣伝の効果と客の声で、買った瞬間にもとを取ったと感じたと話している。地元の失業の問題に応えて、地域の若者19人を研修生として受け入れていた。

日本の宿に置き換えると

日本の宿でも、送迎の運転や自然の案内、設備の管理など、男性が多い仕事がある。女性が入りにくい理由を一つずつ確かめ、採り方、育て方、続けられる決まりを整えることができる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%(年5,110室泊)の宿が、送迎の運転を担う女性スタッフ2人の免許の取得を支えるとする。1人30万円とすると、年60万円。1室泊あたり約117円になる。3年続ければ、6人になる。同時に、給料の決まりと産休・育休の決まりを見直し、先輩が後輩の相談に乗る時間を、月に1回、1時間ずつ設ける。

採って、育てて、続けてもらう

チョベ・ゲーム・ロッジの女性ガイドは、1人から始まった。呼びかけて採り、研修所と組んで育て、同じ給料と産休の決まりで働き続けられるようにした。その積み重ねが、一つの国の、ガイドという仕事の姿を変えてきた。

持ち帰れる知識

  • 「この仕事は男性のもの」という思いこみは、1人の成功から崩れ始める
  • 採るだけでなく、給料と休みの決まりが、働き続ける力になる
  • 先輩が後輩を励ます仕組みが、次の人を育てる

宿で考えられること

  • 宿の中で、男女の偏りが大きい仕事を書き出してみる
  • その仕事に女性が入りにくい理由を、スタッフに聞いてみる
  • 給料や産休・育休の決まりを、見直してみる

事業・予約への接続

チョベ・ゲーム・ロッジでは、女性だけのガイドチームが、客がこの宿を選ぶ理由の一つになっている。働く人の物語が、滞在の体験を深めている。

Sources / 参考情報

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