GOAL 8 · TARGET 8.9 地域・文化・コミュニティ 4分 / 2166文字 反対のあった町で、よい隣人になる #204

7年の反対のあとで、町の「よい隣人」になる:ニューヨーク州の「ワイルドフラワー・ファームズ」が、土地の4%だけを使い、地域とつながる方法

ニューヨーク州のハドソン・バレー、ガーディナーという町に、「ワイルドフラワー・ファームズ」がある。公式サイトによると、ニューヨーク市から車で90分。140エーカー(約57ヘクタール)の土地に、65の客室が、木々の下や野の花の草原の中に建つ。ミシュランの「キー」を2つ受けている。

このリゾートは、すんなり生まれたわけではない。地元の新聞によると、計画から開業まで、7年にわたって、開発する側と地元の反対の声との話し合いが続いた。この記事では、反対のあった町で、宿がどのように「よい隣人」になろうとしているのかを見ていく。

たとえば、木曜日の夜。地元の人が、宿の地下の部屋に集まり、地元の音楽家の演奏を聞く。

7年の話し合い

地元紙ハドソン・バレー・ワンの2023年1月11日の記事によると、計画は、かつて「ハートウッド」と呼ばれていた。土地は、もとは木の苗を育てる農場で、その前は酪農場だった。地元の住民の団体は、開発に反対して裁判も起こした。

地元紙タイムズ・ハドソン・バレーの2021年2月3日の記事によると、町の計画委員会は、2021年1月26日の会合で、計画を認めた。その時点の計画は、70室のホテルで、エネルギーの収支をゼロにすることを目指していた。

米コンデナスト・トラベラー誌によると、土地を買ったフィリップ・ラポポート氏とクリスティン・ラポポート氏は、近くに住む夫妻だ。

使うのは、土地の4%だけ

コンデナスト・トラベラー誌によると、開発したのは、土地の4%だけだ。141エーカーのうち54エーカーには、将来の開発を制限する取り決めを結んだ。そのうち33エーカーは、ハドソン・バレーで農業を続けるための土地だ。

地元紙によると、宿の農場は、2つある取り決めのうちの1つの土地にある。農場では、土を育てる農業に取り組み、料理人のための野菜を育てる。農場のない場所には、何千本もの木を新しく植えて、土地を野生に戻し、木の数を前より増やしたという。

電気は、地域の太陽光でまかなう。地元紙によると、宿は、敷地の外にある地域の太陽光発電に参加している。その発電量は、宿が使う電気の100%以上だ。コンデナスト・トラベラー誌によると、建物は、米国の省エネの認証「エナジースター」を取れるよう設計された。

地元の人を雇い、地元の店とつながる

宿は、町にどう関わっているのか。地元紙の記事によると、記事の時点で、働く人143人のうち130人を地元から採った。

宿の体験の担当者は、15を超える地元の会社や芸術家と組み、客に紹介している。となりのヨガの教室や蒸留所は、いつも組む相手だ。ヨガの教室を開いた人は、「同じ景色と、自然への愛と、心と体の健康を大切にする隣人として、よい関係がある」と話している。

レストランは、敷地の農場の野菜を使い、敷地で育たないものは近くから仕入れる。記事によると、肉の加工品も、チーズも、州内の工房から仕入れている。

働く人への待遇も、記事は伝えている。総支配人によると、医療と歯科と眼科の保険、401K(米国の確定拠出年金)、毎日2回の手づくりのまかない、そしてグループの24のホテルに泊まれる制度がある。レストランは、1年365日、朝・昼・夜を開ける。この地域では珍しいことだという。

町の人にも、門を開く

宿は、泊まる客だけのものではない。地元紙によると、広さ9,000平方フィートのスパは、一般の人にも開いている。専門の会社がつくった、約3マイル(約5キロ)の散歩道も、訪れる人を歓迎している。

毎週木曜日の夜には、地下の部屋で、無料の生演奏を開く。体験の担当者は、「地域の人を呼びこむ、いちばん大きな企画」と話す。演奏者の多くは、ハドソン・バレーの音楽家だ。

町の長は、記事の中で、宿は地域にとって大きな財産だと話している。地元の人を雇い、前の使い方より多くの固定資産税を納める。それでいて、学校に通う子どもも、町が手入れする新しい道路も増やさない。ただ一人計画に反対した町議会の議員も、「よい隣人である限り、計画そのものに反対したことはない」と話している。

日本の宿に置き換えると

日本でも、宿を新しく建てるとき、地域から心配の声が上がることがある。土地の多くを残す、地元の人を雇う、地元の店や作り手と組む、地域の人が気軽に来られる場をつくる。こうしたことが、よい隣人になる道すじになる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%(年5,110室泊)の宿が、地元の作り手や案内人10組と組み、客に体験を紹介するとする。5室泊に1回、1件5,000円の体験が予約されると、年1,022件で511万円。そのお金が、地元の10組に届く。1組あたり平均51万1,000円だ。

あわせて、月に1回、地域の人が無料で来られる催しを開く。年12回、1回30人が来れば、年360人が宿の中を知ることになる。宿の中を知ってもらうことが、信頼の第一歩になる。

使わない土地と、開いた門

ワイルドフラワー・ファームズは、土地の4%だけを使い、残りの多くを守る取り決めを結んだ。地元の人を雇い、地元の店と組み、町の人にも門を開く。7年の反対のあとで、宿は、町の一員になる道を歩んでいる。

持ち帰れる知識

  • 反対の声のある町では、使わない土地の広さが信頼につながる
  • 地元の人を雇い、地元の店と組むことで、宿の収入が地域に回る
  • 地域の人が気軽に来られる場が、宿を町の一員にする

宿で考えられること

  • 宿の土地のうち、残せる場所を書き出してみる
  • 地元の作り手や案内人と、組めることを探してみる
  • 地域の人が無料で来られる催しを、開いてみる

事業・予約への接続

ワイルドフラワー・ファームズでは、農場と地元の体験が、客がこの宿を選ぶ理由になっている。地域とのつながりが、滞在の体験を深めている。

Sources / 参考情報

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