GOAL 8 · TARGET 8.9 地域・文化・コミュニティ 3分 / 2045文字 村の宿を、太陽の光で動かす #205

送電網の届かなかった村で、宿は村のものになった:南アフリカの「ブルングラ・ロッジ」が、太陽の光で走る車で客を運ぶ方法

南アフリカの東、「ワイルド・コースト」と呼ばれる海岸に、ンキレニという村がある。コーサ語を話す人々の村だ。村には、「ブルングラ・ロッジ」という小さな宿がある。南アフリカの日刊紙デイリー・マーベリックの2023年7月6日の記事によると、近くの町ムタタから約100キロ離れている。

旅行誌ゲッタウェイの記事によると、宿には、コーサの伝統的な丸い小屋が10棟ある。5棟は相部屋、5棟は個室で、ほかに森の中のテントもある。この宿は、村の人々が100%所有し、運営している。

この記事では、電気の届かなかった村で、宿が太陽の光をどう使い、村のものになってきたかを見ていく。

たとえば、朝の村。宿の前に止めた電気の車が、太陽の光でためた電気を受けて、町へ客を迎えに行く準備をしている。

電気が届いたのは、2023年の夏

デイリー・マーベリックの記事によると、ワイルド・コーストの奥の村々に国の送電網の電気が届いたのは、2023年の夏のことだ。村の人々は長い間、まきの火とガスに頼ってきた。

およそ8年前、国の事業で、家ごとに小さな太陽光パネルと電池が配られた。けれども、明かりをいくつかと、携帯電話やラジオを充電するのがやっとだった。手入れをする力が村になく、パネルは次第に動かなくなった。

2004年、太陽の光で始めた宿

記事によると、宿は2004年、デーブ・マーティン氏が村につくった。太陽光とガス、堆肥のトイレ、雨水をためる仕組みを使ってきた。マーティン氏は、当時の国の送電網は30〜40キロ先で止まっていて、宿まで届くとは思えなかったと話す。太陽光パネルは今の10倍も高かったが、それでも太陽光を選ぶ理由があったという。

ゲッタウェイ誌の2025年10月の記事によると、宿は100%太陽光で動く。シャワーは、火で温める「ロケットシャワー」だ。2025年5月の記事によると、宿は水を大切に使い、ごみのリサイクルに取り組み、マングローブの木も育てている。

2014年から、村のものに

デイリー・マーベリックの記事によると、宿は2014年から、村が100%所有している。マーティン氏と妻のレジャン・ウッドロフ氏は、今も村に住み、宿の仕事や、村の暮らしをよくするさまざまな事業に関わっている。

ゲッタウェイ誌の記事によると、宿は、公正な旅を後押しする南アフリカの仕組み「フェアトレード・トラベル・パス」に参加している。

宿の売り上げは、そのまま村の暮らしに直結する。デイリー・マーベリックの記事によると、記事の時点で、観光客はまだコロナ禍の前に戻っていなかった。宿の収入が減ると、少なくとも35の家族の収入が、直接減るという。宿は、開業以来初めて、政府の資金に申しこんだ。

太陽の光で走る送迎車

宿が申しこんだのは、長く費用を減らし、村の財産になる事業だった。記事によると、宿は、南アフリカの公的な開発の機関に、7人乗りの四輪駆動の電気自動車と、その車専用の太陽光発電の資金を求めた。

選んだのは、メルセデス・ベンツの電気自動車「EQB」だ。電池の容量は66キロワット時。専用の太陽光は、15キロワットのパネルと30キロワット時の電池からなる。費用は合わせて190万ランド弱。その85%を開発の機関が出し、太陽光を取りつけた会社も補助した。その会社は、村の若者に、太陽光の手入れの方法を教えた。

マーティン氏によると、それまでの送迎車は、空港や近くのバス停への送迎で、年に10万ランドの軽油代がかかっていた。電気の車なら、その分が浮く。満充電には4〜5時間かかり、1回の充電で400キロ走れる。ムタタまで2往復できる距離だ。

デイリー・マーベリックの記事によると、この車は、南アフリカに輸入された同じ型の車として、まだ10台目だった。マーティン氏は、太陽の光で車を充電できることを示し、ほかの運転手や会社にも考えてほしいと話している。

日本の宿に置き換えると

日本にも、駅から遠く、送迎が欠かせない宿がある。送迎車を電気の車に替え、宿の屋根の太陽光で充電すれば、燃料代を減らせる。手入れの方法を地元の人が学べば、地域に技術も残る。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%(年5,110室泊)の宿が、送迎車で年に2万キロ走るとする。ガソリン車が1リットルで10キロ走り、ガソリンが1リットル170円なら、年34万円。電気の車が1キロワット時で6キロ走り、電気が1キロワット時30円なら、年10万円。差は年24万円で、1室泊あたり約47円になる。

あわせて、宿の仕事のうち、地元の人に任せられるものを書き出してみる。手入れや案内を地元の人が担うほど、宿の収入が地域に残る。

村のものになった宿

ブルングラ・ロッジは、送電網の届かなかった村で、太陽の光で始まった。宿は村のものになり、今は太陽の光で走る車で客を運ぶ。小さな宿でも、変化の一部になれることを、海辺の村が示している。

持ち帰れる知識

  • 送電網がないことは、太陽光を選ぶ理由にもなる
  • 宿を地域の人が持てば、収入がそのまま地域に残る
  • 設備の手入れを地元の人が学ぶことで、技術が地域に根づく

宿で考えられること

  • 送迎の燃料代と走る距離を、1年分書き出してみる
  • 宿の仕事のうち、地元の人に任せられるものを探してみる
  • 設備の手入れの方法を、地元の人と一緒に学んでみる

事業・予約への接続

ブルングラ・ロッジでは、村が持つ宿に泊まり、村の暮らしにふれることが、客がこの宿を選ぶ理由になっている。太陽の光で走る送迎車も、旅の体験の一部になっている。

Sources / 参考情報

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