雨を飲み水にし、汚れた水はバナナの木に返す:メキシコ・バカラルの「ホテル・マカバ」が、七色の湖を汚さない方法
メキシコのユカタン半島の南に、バカラルという町がある。町の前には、「七色の湖」と呼ばれる湖が広がる。米国の旅行誌アイランズの2025年3月19日の記事によると、町は州の南端の都市チェトゥマルから約25マイル(約40キロ)の場所にある。湖の色は、一日のうちに移り変わる。
町の中心に、「ホテル・マカバ」という小さなエコ・ブティックホテルがある。記事によると、町の中心の広場から2ブロック、湖は通りの向かい、湖の色は一日のうちに移り変わる、湖とは通りをはさんだ向かいの場所だ。この記事では、この宿が、雨を飲み水に変え、汚れた水を湖に流さないために、どんな仕組みを使っているのかを見ていく。
たとえば、夕方の雨。屋根に落ちた雨が集められ、地下の水槽へと流れこんでいく。
七色の湖が、色を失いかけている
宿の仕組みを見る前に、湖のことを知っておきたい。メキシコ国立自治大学(UNAM)の広報誌の2021年4月12日の記事によると、バカラルの湖は、ユカタン半島で最も広い、地表にある淡水の湖だ。湖には、細菌がつくる岩「ストロマトライト」の、世界で最も大きな礁がある。
ところが、記事によると、2020年6月から、湖の青い色が茶色や緑っぽい色に変わった。研究者は、大きな熱帯の嵐で流れこんだ細かい粒などが原因だと説明する。そして、「観光や農業のよくないやり方で生態系が弱っているため、元に戻れていない」と話している。湖の色を取り戻すには、岸のマングローブの林を回復させることが必要だという。
2020年7月7日の報道では、同じ研究者が、無秩序な観光と、汚れた水の処理が足りないことを、大きな原因として挙げている。町のホテルの稼働率は、年間を通じて85%を超えるという。湖に流れこむ窒素やリンが、水の中の小さな生き物を増やし、色を変えている。
汚れた水を湖に流さないことは、この町の宿にとって、湖を守る大切な一歩になる。
雨は、屋根から地下の水槽へ
宿の公式サイトによると、宿は雨水を集める仕組みを使っている。屋根は、雨を集めやすいように特別に設計した。集めた雨は、地下の水槽に運んでためる。この雨水が、宿の飲み水の主な水源だ。
米国のホテル紹介サイト「ホテル・スクープ」の記事によると、屋根から流れる雨は、すべて集めて水槽にためる。石や植物を使った自然のろ過の仕組みで、客の飲み水と、プールの水をつくる。
プールの水は、植物でこす
公式サイトによると、宿のプールでは、水草が水をこす。この働きの中で藻が生まれ、その藻が魚のえさになる。自然の循環で生態系の釣り合いを保ち、化学薬品を使わずにすむようにしている、と公式サイトは書いている。
ただし、ホテル・スクープの記事によると、プールは最初は化学薬品を使っていなかったが、新型コロナの流行で方針を変え、化学薬品を使うようになったという。今どのように運用しているかは、確かめられなかった。
汚れた水は、バナナの木へ
宿の公式サイトによると、宿は、蒸発散槽という水槽を使って、汚れた水を100%再利用している。バナナやパパイヤの木を植えた槽に、汚れた水を通す。木は根から水を吸い、葉から空気に返す。公式サイトによると、木1本で、1日に最大80リットルの汚れた水を蒸発させるという。
この仕組みなら、汚れた水を湖に流さずにすむ。アイランズ誌の記事も、宿は飲み水のために雨水を集め、汚れた水を植物の水やりに再利用していると伝えている。
生ごみは、畑の土に
公式サイトによると、宿は生ごみを集めて堆肥にし、できた土を宿の畑で使う。畑で育てた野菜は、宿のレストランの料理になる。レストラン「ワァ」の名前は、マヤの言葉で「トルティーヤ」を意味する。料理には、宿の畑や森の中の畑で育てた材料と、地元の食材を使う。
ホテル・スクープの記事によると、宿は鶏も飼っている。せっけんなどは詰め替えの容器に入っている。明かりはLEDで、トイレは水の少ないものを使う。使い捨てのプラスチックは出さず、ビールや炭酸飲料の多くは、返せる瓶で出す。
電気は、太陽の光で
今の公式サイトによると、宿の太陽光パネルが、宿のエネルギーをすべてまかなっている。アイランズ誌も、宿はすべてのエネルギーを太陽光パネルから得ていると伝えている。一方、ホテル・スクープの記事を書いた人が訪れたときには、まだパネルはなく、「近日導入」とされていた。宿の仕組みは、少しずつ整えられてきたことがわかる。
日本の宿に置き換えると
日本にも、湖や川、海のそばで、水の色や透明さが観光の魅力になっている土地がある。汚れた水をきれいにしてから流す、雨水をためて庭や掃除に使う。どれも、宿の前の水を守ることにつながる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、屋根の広さが300平方メートルの宿があるとする。年に1,600ミリの雨が降り、その80%を集められるとすると、年に384立方メートルの雨水になる。20室・稼働率70%(年5,110室泊)の宿なら、1室泊あたり約75リットルだ。庭の水やりや掃除に使えば、その分の水道の水を減らせる。水の料金を1立方メートルあたり600円とすると、年23万400円になる。
雨は、毎月同じように降るわけではない。たとえば、年1,600ミリのうち60%の960ミリが6月から10月の5か月に降るとする。この5か月で集まる雨水は230.4立方メートルで、1か月あたり46.08立方メートルになる。残りの7か月は合わせて153.6立方メートル、1か月あたり約21.9立方メートルだ。雨の少ない月に足りなくならないよう、水槽の大きさを決めておく必要がある。
汚れた水を植物に返す仕組みも、数字で考えられる。公式サイトの「木1本で1日に最大80リットル」をもとに、仮に10本の木を植えたとすると、蒸発させられるのは最大で1日800リットル、30日で2万4,000リットルになる。ただし、これは最大の量で、天気や季節で変わる。
前の湖を、汚さない
ホテル・マカバは、屋根で雨を集めて飲み水にし、水草でプールの水をこし、汚れた水をバナナの木に返す。宿の前の七色の湖を守るために、水の入り口と出口の両方を工夫している。
持ち帰れる知識
- 宿の前の水が観光の魅力なら、汚れた水を流さないことが大切になる
- 雨水は、ためておけば、宿の水源の一つになる
- 植物の力で、水をこしたり、蒸発させたりできる
宿で考えられること
- 宿の屋根に、年にどれだけの雨が降るか計算してみる
- 汚れた水が、どこへ流れていくのか確かめてみる
- 庭の水やりや掃除に、雨水を使えないか考えてみる
事業・予約への接続
ホテル・マカバでは、湖を守る水の仕組みが、宿の考え方として客に伝わっている。宿の前の湖の美しさと、宿の取り組みが結びついている。
Sources / 参考情報
- Hotel Makaabá(スペイン語) - 私たちの生態系(公式サイト)
裏付け: 太陽光パネルですべてのエネルギー、特別に設計した屋根で雨を集め地下の水槽にためて飲み水の主な水源に、水草のろ過と藻と魚で化学薬品を使わない、蒸発散槽で汚れた水を100%再利用、バナナやパパイヤの木1本で1日に最大80リットル、生ごみの堆肥と畑、地元の産品を優先 - Hotel Makaabá(スペイン語) - ホテル・マカバ(公式サイト)
裏付け: レストラン「ワァ」はマヤの言葉で「トルティーヤ」、宿の畑や森の中の畑の材料と地元の食材 - Hotel Scoop(英文) - バカラルのホテル・マカバ:魔法の湖の町のエコな宿
裏付け: 屋根の雨をすべて集めて水槽に、石や植物の自然のろ過で飲み水とプールの水、プールは最初は化学薬品を使わなかったがコロナのあとは使うことに、汚れた水の処理の設備、鶏、詰め替えの容器、LEDと水の少ないトイレ、使い捨てのプラスチックなし、返せる瓶、訪れたときは太陽光パネルがなく「近日導入」 - Islands(英文) - バカラルの、遊び心と手ごろな上質さにあふれたホテル(2025年3月19日)
裏付け: チェトゥマルから約25マイル、町の中心の広場から2ブロック、湖は通りの向かい、湖の色は一日のうちに移り変わる、すべてのエネルギーを太陽光パネルから、飲み水のために雨水を集め、汚れた水を植物の水やりに再利用 - Gaceta UNAM(スペイン語) - バカラルの湖は、少しずつ傷んでいる(2021年4月12日)
裏付け: ユカタン半島で最も広い地表の淡水の湖、世界で最も大きなストロマトライトの礁、2020年6月から青い色が茶色や緑っぽい色に、熱帯の嵐で流れこんだ粒など、観光や農業のよくないやり方で元に戻れない、岸のマングローブの回復が必要 - Animal Político(スペイン語) - 汚染で、バカラルの湖が色を失い始めている(2020年7月7日)
裏付け: UNAMの研究者が、無秩序な観光と汚れた水の処理の不足を原因に挙げた、ホテルの稼働率は年間を通じて85%超、窒素やリンが小さな生き物を増やし色が変わる