GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 4分 / 2679文字 使わないことを、宿の決まりにする #209

エアコンも、塩素も使わない:英国コーンウォールの「スカーレット」が、崖の上の宿で水と電気を減らす方法

英国の南西の端、コーンウォールの北の海岸に、モーガン・ポースという入り江がある。その崖の上に、ホテル「スカーレット」が建つ。公式サイトによると、37の客室はすべて、空と海と陸の眺めに向いている。

この宿は、「使わない」ことを大切にしている。エアコンを使わない。外のプールの水をきれいにするのに、化学薬品を使わない。この記事では、崖の上の宿が、水と電気を減らすために何を選び、どんなつまずきを乗り越えてきたのかを見ていく。

たとえば、夏の午後。窓を開けると、大西洋からの海風が部屋を涼しくしていく。

三姉妹が建てた宿

英国のホテル業界誌ザ・ケータラーの2009年10月12日の記事によると、スカーレットは、ウィッティントン家の三姉妹が考えた宿だ。三姉妹は、スカーレットのすぐ上の崖に建つ家族向けのホテル「ベドルーサン」も営んでいる。ベドルーサンは、記事の当時で開業から37年がたっていた。記事によると、三姉妹にとって、環境の技術は一時の流行ではない。ベドルーサンでは、まだ「変わった考え」と思われていた時代から、太陽光パネルを取りつけ、屋根に草を育ててきた。

水は、二度使う

公式サイトによると、宿の配管は、シャワーやお風呂で使った水を集め、トイレを流すのに使えるように設計されている。こうした一度使った水を「グレーウォーター」と呼ぶ。

ザ・ケータラーの記事は、少し違う書き方をしている。雨水を集めて得たグレーウォーターで、トイレを流すという。雨水とシャワーの水の両方を使うのか、時期によって変わったのかは、確かめられなかった。どちらにしても、飲み水と同じきれいな水でトイレを流さずにすむ。

葦と藻が、プールの水をこす

公式サイトによると、外のプールでは、水をこすのに化学薬品を使わない。葦と藻が、同じように水をきれいにしてくれるからだ。

ただし、この仕組みは、最初から順調だったわけではない。ザ・ケータラーの記事によると、開業前の試験営業のあいだに、自治体から、この自然のプールを閉じるよう命じられた。水の中の病原体が多かったためだ。同じころ、ボイラーが止まり、客がひと朝お湯を使えないこともあった。

その後、どう乗り越えたのかは確かめられなかった。それでも、今の公式サイトは、葦と藻で水をこすプールを宿の特徴として紹介している。新しい仕組みは、初めからうまくいくとは限らない。つまずいても、改めながら続けることが大切だ。

熱は、太陽と木から

公式サイトによると、スパの屋内プールは、寒い冬の日でも動く太陽の熱の仕組みで温めている。暖房は、木を燃やすバイオマスボイラーでつくる。ザ・ケータラーの記事によると、このボイラーは、部屋とお湯を温める。燃料は、コーンウォール産の丸太だ。木の粒を固めたペレットは、つくるのにより多くのエネルギーがいるため、使わないという。記事によると、駐車場の上には、150平方メートルの太陽光パネルもある。

電気も、使わない工夫を

公式サイトによると、宿は、100%再生可能な電源から電気を買っている。それでも、できるだけ使わないことを大切にしている。省エネのLEDの明かりは、人がいないと消える。外の温かい湯船は、泡を出さない。電気を減らすためで、下の海の音も、よく聞こえる。

部屋には、お茶やコーヒーのセットを置いていない。一回分ずつの使い捨ての小袋が、たくさんのプラスチックのごみになるからだ。代わりに、電話をすれば、いつでもいれたてを部屋に届ける。せっけんは、コーンウォールの作り手から仕入れ、家に持ち帰ってもらう。

建物も、自然に返せるように

公式サイトによると、庭に立つ木の柱は、もとは近くの港で、海岸がけずられるのを防いでいた古い柵だ。建物は、将来、ていねいに解体できるようにつくった。木の骨組み、銅の外壁、アルミの屋根の骨組み、屋根の膜まで、すべてリサイクルできる。屋根には、海辺に咲くハマカンザシを植え、地元の虫のすみかにしている。

泊まるたびに、自然へ

公式サイトによると、スカーレットの予約には、1件ごとに5ポンドの寄付が含まれている。寄付は宿の地域基金に入り、コーンウォール野生生物トラストの、これまでで最も大きな自然回復の事業を支える。

トラストの2023年11月16日の記事によると、スカーレットとベドルーサンの客の寄付でできた基金は、ヘルマン・トー自然保護区の野生に戻す取り組みのための募金に、最大3万ポンドを上乗せすると申し出た。英国の野鳥の専門サイト、バードガイズの2023年5月12日の記事によると、ヘルマン・トーはトラストで最も大きな保護区で、5か所に分かれて約283ヘクタールある。トラストはここで、コーンウォールで最も大きな自然回復の計画を進めている。

英国の公共放送BBCの2026年3月25日の記事によると、トラストはその後、「これまでで最も大きく、最も意欲的な」自然回復の事業「トー・トゥ・ショア」を始めた。総額は500万ポンドで、そのうち330万ポンドは、国営宝くじの文化遺産基金からの助成だ。ヘルマン・トー自然保護区から川の流域を通って海までの生きもののすみかをつなぎ、ビーバーを増やす計画もある。

日本の宿に置き換えると

日本の宿でも、一度使った水や雨水でトイレを流すことはできる。建て替えや改修のときに配管を分けておけば、飲み水と同じきれいな水を使わずにすむ。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%(年5,110室泊)の宿で、1室泊あたり40リットルの水をトイレに使うとする。年204.4立方メートルになる。これをすべて、一度使った水や雨水でまかなえれば、水道の水を同じだけ減らせる。水の料金を1立方メートルあたり600円とすると、年12万2,640円だ。1室泊あたりでは24円になる。

一度に全部を切りかえる必要はない。たとえば、1年目は改修した5室だけでグレーウォーターを使うとする。20室のうち25%なので、年51.1立方メートル、3万660円の節約になる。2年目に10室(50%、年102.2立方メートル、6万1,320円)、3年目に20室と広げれば、つまずいたときも、少ない部屋で直しながら進められる。

使わないことを、決める

スカーレットは、エアコンを使わず、プールに化学薬品を使わず、部屋にお茶の小袋を置かない。自然のプールは、最初はつまずいた。それでも、「使わない」ことを宿の決まりにして、水と電気を減らし続けている。

持ち帰れる知識

  • 一度使った水や雨水で、トイレを流せる
  • 新しい仕組みは、初めからうまくいくとは限らない
  • 「使わない」と決めることも、環境への工夫になる

宿で考えられること

  • トイレに、どれだけの水を使っているか調べてみる
  • 改修のときに、配管を分けられないか考えてみる
  • なくせる設備や備品がないか、見直してみる

事業・予約への接続

スカーレットでは、自然のプールや海の音が聞こえる湯船が、宿の体験そのものになっている。使わない工夫が、客にとっての魅力にもなっている。

Sources / 参考情報

  • Scarlet Hotel(英文) - 崖の上のエコホテル(公式サイト)
    裏付け: 37の客室、エアコンを使わない、外のプールは化学薬品を使わず葦と藻で、ハマカンザシの屋根、港の古い柵の柱、解体とリサイクルができる建物、100%再生可能な電源の電気、人がいないと消えるLED、泡を出さない湯船、太陽の熱で屋内プール、バイオマスボイラーの暖房、シャワーやお風呂の水でトイレ、お茶のセットを置かない、地元のせっけん、予約1件ごとに5ポンドを地域基金へ
  • The Caterer(英文) - スカーレット:環境に配慮できてうれしい(2009年10月12日)
    裏付け: ウィッティントン家の三姉妹、すぐ上のベドルーサンは当時で開業37年、コーンウォール産の丸太で部屋とお湯を温めるボイラー、ペレットを使わない理由、駐車場の上の150平方メートルの太陽光パネル、雨水を集めたグレーウォーターでトイレ、葦でこすプール、試験営業中にボイラーが止まった、病原体が多くプールを閉じるよう自治体に命じられた
  • Cornwall Wildlife Trust(英文) - 自然への贈り物が、大きな自然回復の事業を支える(2023年11月16日)
    裏付け: ベドルーサンとスカーレットの寄付でできた基金、ヘルマン・トー自然保護区の野生に戻す取り組み、最大3万ポンドの上乗せ
  • BirdGuides(英文) - コーンウォールで最大の自然回復の計画(2023年5月12日)
    裏付け: コーンウォール野生生物トラストがヘルマン・トー自然保護区で最大の自然回復の計画、5か所で約283ヘクタール
  • BBC(英文) - 「意欲的な」自然の事業が、コーンウォールの生きもののすみかをつなぐ(2026年3月25日)
    裏付け: トラストの最も大きく意欲的な自然回復の事業「トー・トゥ・ショア」、総額500万ポンド、国営宝くじの文化遺産基金から330万ポンド、生きもののすみかをつなぐ、ヘルマン・トーにビーバーを増やす

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