GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 4分 / 2220文字 「100%」が何の100%かを読む #210

「排水を100%再利用」と「水の20%」:ギリシャの「サニ・リゾート」の報告書から、水の数字の読み方を学ぶ

ギリシャ北部、第2の都市テッサロニキに近いハルキディキ半島に、「サニ・リゾート」がある。米国の旅行誌エリート・トラベラーの2022年7月18日の記事によると、リゾートには5つのホテルがあり、森と湿地とエーゲ海を含む、1,000エーカー(約405ヘクタール)の自然保護区に散らばっている。

リゾートを運営するサニ・イコス・グループは、毎年、環境や社会への取り組みをまとめた報告書を出している。そこには、「排水を100%再利用」という言葉がある。この記事では、報告書を読みながら、この「100%」が何の100%なのかを確かめ、水の数字の読み方を学んでいく。

たとえば、夏の朝。処理された水が、リゾートの庭の芝生や木々に配られていく。

炭素中立で知られるリゾート

グループの2021年の報告書によると、サニ・リゾートは、2020年に、ギリシャで初めて炭素中立のリゾートになった。出す温室効果ガスと、減らしたり吸収したりする量を、差し引きでゼロにしたということだ。エリート・トラベラーの記事によると、リゾートは2019年から、100%再生可能な電気で動いている。2021年には、世界旅行賞で「世界をリードする高級グリーンリゾート」に選ばれた。

グループの2023年の報告書は、2030年までに排出を実質ゼロにする目標を掲げている。対象は、自社で直接出す排出と、買った電気による排出だ。

「100%」は、どの範囲か

では、水はどうか。グループの2023年の報告書は、2023年の要点として、「排水の再利用100%」を挙げている。ただ、その数字には、「排水処理施設を持つホテルで」という言葉が添えられている。

本文を読むと、範囲はさらにはっきりする。報告書によると、グループは2022年に、自治体の下水道につながっていない、自前の排水処理施設を持つすべてのリゾートで、排水を100%再利用した。つまり、「100%」とは、自前の施設で処理した排水を、すべて使い道に回したという意味だ。2021年の報告書でも、「すべての施設で水の再利用100%」と書いたうえで、注をつけている。

全体で見ると、約20%

次に、水の使用量の全体を見てみる。2023年の報告書によると、グループ全体の2023年の淡水の使用量は、121万4,891立方メートルだった。一方、再利用した水は30万7,965立方メートル。報告書は、これを使用量全体の20%として示している。

確かめてみよう。淡水と再利用した水を足すと、152万2,856立方メートル。そのうち再利用した水は、約20.2%になる。報告書の20%と合う。

つまり、「排水を100%再利用」と「水全体の約20%が再利用の水」は、どちらも正しい。前者は排水の行き先の話で、後者は水全体の中の割合の話だ。宿の数字を読むときも、伝えるときも、この違いに気をつけたい。なお、これらの数字は、サニ・リゾートだけでなく、グループのリゾート全体のものだ。

処理した水は、庭へ

報告書は、処理した排水で庭に水をやることを、取り組みの一つに挙げている。処理した排水で庭に水をやれば、淡水を減らさずに景色を保てる。

報告書は、ほかの工夫も挙げている。水もれを見つける仕組みを入れて、すぐに直す。蛇口に、水に空気を混ぜて量を減らす部品をつける。庭には、水をあまり必要としない植物を植える。働く人には、毎年、水を節約する研修をする。

さらに、たくさんの水のメーターから集めたデータで、使い方をその場で見守っている。急に使用量が増えたら、すぐに手を打つ。2023年の宿泊客1人1泊あたりの水の使用量は、0.84立方メートルだった。報告書によると、サニ・リゾートの水は井戸から取り、敷地の施設でためて処理している。

湿地と森を守る

報告書によると、リゾートのそばには、約110ヘクタールのサニ湿地がある。欧州の自然保護区の網に登録された場所で、225種を超える鳥が見られる。ギリシャで見られる鳥の、ほぼ半分だ。リゾートは、ギリシャの鳥の保護団体と組んで、湿地と鳥を見守り、バードウォッチングの道をつくった。

リゾートが世話をする「サニの森」は、古いアレッポマツの森だ。報告書によると、森林の研究機関との調べで、森が15万トンを超える二酸化炭素を吸収したことが確かめられた。庭や森の手入れで出る枝や葉は、すべて堆肥にしている。

日本の宿に置き換えると

日本の宿でも、「排水を再利用している」「水を節約している」と伝えるとき、何の何割なのかをはっきりさせると、信頼につながる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%(年5,110室泊)の宿が、1室泊あたり600リットルの水を使うとする。年3,066立方メートルだ。このうち、処理した排水を庭の水やりに年300立方メートル回すとする。水やりの水をすべて処理水にできれば、「水やりは100%再利用の水」と言える。しかし、宿の水全体から見ると、約9.8%にあたる。水道の料金を1立方メートルあたり600円とすると、年18万円の節約だ。

数字の範囲を、正直に

サニ・リゾートの報告書は、「排水の再利用100%」と、水全体の中の再利用の割合の両方を示し、100%の範囲を注で明らかにしている。大きな数字を伝えるときこそ、何の数字なのかを添えることが、信頼される伝え方になる。

持ち帰れる知識

  • 「100%」が何の100%なのかを、確かめて読む
  • 排水の行き先の割合と、水全体の中の割合は違う
  • 水のメーターのデータで、使い方の変化にすぐ気づける

宿で考えられること

  • 宿の水の数字が、何の何割なのかを書き出してみる
  • 庭の水やりに、どれだけの水を使っているか調べてみる
  • 水もれを早く見つける方法を考えてみる

事業・予約への接続

サニ・リゾートでは、炭素中立や水の再利用が、高級なグリーンリゾートとしての評価につながっている。数字の範囲を正直に示すことが、評価を支えている。

Sources / 参考情報

  • Sani/Ikos Group(英文) - 2023年 ESG報告書(PDF)
    裏付け: 排水処理施設を持つホテルで排水の再利用100%、2022年に自治体の下水道につながっていないリゾートで排水を100%再利用、2023年の淡水の使用量121万4,891立方メートル、再利用した水30万7,965立方メートルで全体の20%、1人1泊0.84立方メートル、水もれを見つける仕組み・蛇口の部品・処理した排水で水やり・水の少ない植物・毎年の研修、水のメーターでの見守り、井戸の水を敷地でためて処理、約110ヘクタールの湿地と225種を超える鳥、鳥の保護団体との見守り、サニの森が15万トンを超える二酸化炭素、枝や葉の堆肥、2030年の実質ゼロ、ギリシャで初めての炭素中立のリゾート
  • Sani/Ikos Group(英文) - 2021年 ESG報告書(PDF)
    裏付け: 2020年にギリシャで初めての炭素中立のリゾート、すべての施設で水の再利用100%(注つき)、2021年の1人あたりの水の使用量0.8立方メートル
  • Elite Traveler(英文) - サニ・リゾートの中へ:ギリシャで最も豪華なエコの旅先(2022年7月18日)
    裏付け: テッサロニキに近い、5つのホテル、1,000エーカーの自然保護区、2019年から100%再生可能な電気、2020年から炭素中立、2021年の世界旅行賞で世界をリードする高級グリーンリゾート
  • Acumen Stories(英文) - サニ・イコス・グループが、地中海の持続可能な観光の新しい基準をつくる(2024年10月8日)
    裏付け: 2030年の実質ゼロの目標、すべてのリゾートが炭素中立、処理施設で排水の100%を水やりに再利用、1,000エーカーの自然保護区
  • Sani/Ikos Group(英文) - 2022年 ESG報告書(PDF)
    裏付け: 2030年の実質ゼロ、ギリシャで初めての炭素中立のリゾート、自治体の下水道につながっていない施設を除き、すべてのリゾートで排水を100%再利用、処理した排水での水やり、水もれを見つける仕組み

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