GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 4分 / 2137文字 タンクの大きさより、何回満たせるか #211

1万6,800リットルのタンクは、大きいのか小さいのか:オーストラリア・ヌーサの「ソフィテル」が、地下駐車場にためた雨で庭とプールをうるおす方法

オーストラリア東部のクイーンズランド州に、ヌーサという海辺の町がある。にぎやかなヘイスティングス通りに、「ソフィテル・ヌーサ・パシフィック・リゾート」があった。ホテルを運営するアコーの2024年4月29日の記事によると、このリゾートは、地下の駐車場に雨水をためて、庭の水やりとプールに使っている。

ためられる量は、1万6,800リットル。この記事では、この数字が大きいのか小さいのかを考えながら、雨水のタンクの読み方を学んでいく。

なお、地元の報道によると、このリゾートは改装を経て、2025年12月から「エリシウム・ヌーサ・リゾート」という名前に変わった。この記事の取り組みは、ソフィテルの名前だった時期のものだ。

たとえば、夏の夕立のあと。降った雨が集められ、地下駐車場のタンクにたまっていく。

ユネスコに認められた町

ヌーサは、自然の豊かさで知られる。ヌーサ生物圏保存地域の公式サイトによると、ヌーサは2007年、クイーンズランド州で初めて、ユネスコの生物圏保存地域に登録された。人と自然がともに生きる地域として認められる仕組みだ。

広さは約15万ヘクタールで、沖合3キロまでを含む。そのうち約42%が保護されている。世界に2か所しかない古い湿地「エバーグレーズ」の一つ、ヌーサ・エバーグレーズもある。地域の人々は、この土地の伝統的な持ち主であるカビ・カビ(グビ・グビ)の人々を敬っている。

地下駐車場に、雨をためる

アコーの記事によると、リゾートは長年、エネルギーと水の節約、食べ物や資材のごみの削減、使い捨てのプラスチックをなくすことに取り組んできた。2023年11月には、オーストラリアのエコツーリズムの団体から「持続可能な観光」の認証を受けた。

水を節約するために設計したのが、雨水をためる仕組みだ。地下の駐車場に1万6,800リットルの雨水をため、ホテルの庭の水やりとプールに送る。アコーの別のページによると、客室では、使い捨ての小さなボトルをやめ、詰め替えのできる大きな容器のシャンプーなどを置いている。

1万6,800リットルは、どれくらいか

1万6,800リットルは、16.8立方メートルだ。家庭のお風呂(200リットルとする)なら、84杯分になる。

ホテルの使う水と比べると、どうだろう。2014年に発表された欧州のホテルの水の研究によると、アコーは2010年、1室1泊あたりの水の使用量を、手ごろな1つ星のホテルで187リットル、5つ星のソフィテルで1,568リットルと報告していた。これはブランド全体の平均で、このリゾートの数字ではない。それでも目安として割ると、1万6,800リットルは、5つ星のホテルの約10.7室泊分にあたる。

つまり、タンクにためられる量は、ホテル全体の水から見れば多くない。それでも、意味は大きい。雨が降るたびにタンクが満たされ、使えばまた空きができる。大切なのは、タンクの大きさより、1年に何回満たせるかだ。

水の足あとの、残りの60%

アコーの記事は、もう一つ大切な数字を示している。グループの「水の足あと」のうち、40%は、客室のシャワーや蛇口など、ホテルで直接使う水だ。残りの60%は、主に食べ物や飲み物を仕入れる段階で使われる水だという。

雨水のタンクは、40%の側の取り組みだ。食べ物の仕入れや、ごみを減らす取り組みは、60%の側にも関わる。リゾートが水と食べ物の両方に取り組んできたのは、この数字から見ても理にかなっている。

アコーの2024年12月の水の方針によると、アコーは1970年から水を大切に使う取り組みを進めてきた。2019年には、少なくとも3分の1のホテルが、水不足などの水の問題が大きい、またはとても大きい地域にあった。方針は、水の量を見守る部品や水もれの点検とともに、できる場所では雨水を集め、一度使った水を再利用することを挙げている。ヌーサの雨水のタンクは、この方針を形にした一つの例といえる。

日本の宿に置き換えると

日本の宿でも、雨水のタンクを置くとき、「何リットルのタンクか」に目が向きがちだ。けれども、タンクの値打ちは、何回満たして使えるかで決まる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%(年5,110室泊)の宿が、5立方メートルの雨水タンクを置くとする。庭の水やりに毎日使い、1年に30回、雨で満たして使い切れたとすると、年150立方メートルになる。水の料金を1立方メートルあたり600円とすると、年9万円。1室泊あたり約17.6円だ。

一方、使い道が少なく、1年に5回しか使い切れなければ、年25立方メートル、1万5,000円にとどまる。同じタンクでも、使い方で値打ちは6倍違う。トイレや掃除にも雨水を回し、使い切る回数を増やすことが大切になる。

大きさより、回る回数

ソフィテル・ヌーサ・パシフィック・リゾートは、地下駐車場に1万6,800リットルの雨をため、庭とプールに使ってきた。ホテル全体の水から見れば多くない量でも、雨が降るたびに満たして使えば、少しずつ水道の水を減らせる。タンクの数字を見るときは、何回回せるかを一緒に考えたい。

持ち帰れる知識

  • タンクの値打ちは、大きさより、何回満たして使えるかで決まる
  • ホテルの水の足あとの多くは、食べ物の仕入れの段階にある
  • 数字は、何と比べるかで見え方が変わる

宿で考えられること

  • 雨水を、毎日使える使い道を探してみる
  • タンクを1年に何回満たせるか、計算してみる
  • 水の使用量を、1室泊あたりで記録してみる

事業・予約への接続

ソフィテル・ヌーサ・パシフィック・リゾートでは、自然の豊かな町にふさわしい水の使い方が、認証という形で客に伝わっていた。町の自然を守る姿勢が、宿の評価につながっている。

Sources / 参考情報

関連する記事