GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 4分 / 2230文字 働く人が支える水の循環 #217

毎朝、水のメーターを読む:バンコクの「コートヤード・バイ・マリオット・スワンナプーム空港」で、1日40立方メートルの再利用を支える働く人たち

タイの首都バンコク。スワンナプーム空港の近く、ラートクラバン地区に、468室の「コートヤード・バイ・マリオット・バンコク・スワンナプーム空港」がある。このホテルは、排水を処理して、1日に約40立方メートルを敷地の中でもう一度使っている。

この数字を伝えたのは、2026年5月に国際的な学術誌に載った研究だ。研究者は、ホテルで働く11人と客1人に話を聞いた。この記事では、設備の話だけでなく、働く人たちが水の再利用をどう支え、どう感じているのかを見ていく。

たとえば、朝の機械室。技術スタッフが、水のメーターの数字を一つずつ記録していく。

2つの流れに、水を戻す

研究によると、ホテルは排水を再利用できる水準まで処理し、2つの流れで敷地に戻している。

1つめは、庭の水やりだ。客の目に直接ふれない場所の木や植えこみに使い、庭の手入れに水道の水を使う量を減らしている。2つめは、冷却塔だ。空調の大きな冷凍機を冷やす冷却塔は、水を蒸発させて熱を逃がす。そこで使うはずの飲み水の一部を、処理した水で置きかえている。2つを合わせて、1日に約40立方メートルになる。

これを計算すると、1年でおよそ1万4,600立方メートルだ。468室で割ると、1室あたり1日約85リットルにあたる。研究は、水の料金と水不足への心配が高まっている国で、この量は小さくないと書いている。

蛇口の一つひとつまで

再利用だけではない。研究によると、働く人の手洗い場の蛇口は、すべて手をかざすと水が出る仕組みで、出しっぱなしにならない。客室の蛇口やシャワーには、水に空気をまぜて、勢いを保ったまま量を減らす部品がついている。トイレは、大と小で流す量を選べる。

水の質は、外部の会社が3か月ごとに調べる。飲み水、お湯、プールの水、入ってくる排水と出ていく排水まで、細菌と化学物質を検査する。大きな建物の配管で増えやすいレジオネラ菌には、特に気をつけている。

毎日の記録が、もれを見つける

技術スタッフは、水の小さなメーターをすべて毎日読み、記録している。いつもの量と比べて、水もれやおかしな使われ方を早く見つけるためだ。毎月、もれの点検もする。建物を管理するシステムは、水と電気のデータを1つの画面にまとめ、管理者はリアルタイムで使い方を見ることができる。

働く人は、どう感じているか

研究によると、話を聞いたテーマの中で、水の節約は最もそろって前向きに受けとめられていた。水を節約する取り組みを負担だと話した人は、一人もいなかった。

理由の一つは、お金の流れがわかりやすいことだ。水を使う量が減れば、料金が下がり、ホテルの利益につながる。それは、間接的に、働く人の給料やサービス料の分配にもつながる。働く人自身の暮らしと環境のための行動が、まっすぐ結びついていた。

現場の工夫もある。客室係は、浴室の掃除を、洗剤をつける、時間をおく、こする、すすぐ、乾かすという手順で進め、すすぎ直しを減らしている。グラスはまとめて食器洗い機にかける。厨房では、野菜をひたした水を、鍋の下洗いに使ってから、きちんと洗っている。

働く人から出た、次の案

研究では、働く人から新しい案も出た。一人は、ホテルの広く平らな屋根の雨を、簡単なろ過で庭の水やりに使うことを提案した。もう一つは、会議の休憩のあとに大量に捨てられる、飲み残しのコーヒーやジュース、水だ。食べ残しと分ければ、処理したり再利用したりできるという。研究は、こうした案がまだ正式に提案されていないものの、仕事の範囲を超えて考える人たちがいることを示していると書いている。

電気も同じように記録している。技術スタッフは、店や冷凍機の部屋、事務所などの小さなメーターから毎日電気の量を読み、マリオットの環境データの仕組みに入れる。仕組みは、客が泊まった1室あたりのエネルギーを計算する。ホテルは毎年2〜5%減らす目標を立て、毎月確かめている。建物の管理システムは、冷房の基本の温度を22〜23度に設定している。

一方で、研究は課題も伝えている。研究の時点で、エネルギーから計算した二酸化炭素の量(床面積あたり)は、前の年より3〜4%増えていた。約200人の働く人のうち、省エネの決まりをいつも守っているのは6〜7割、ごみの分別も3〜4割の人が正しくできていないと見られていた。続けて学ぶ機会が足りないためだという。

マリオット・インターナショナルは、2016年を基準に、2025年までに1室あたりの水の使用量を15%減らす目標を掲げてきた。

日本の宿に置き換えると

大きな設備がなくても、毎日メーターを読むことはできる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で、トイレの水もれが起き、1日に1立方メートルの水がむだに流れるとする。月に1回しかメーターを見なければ、気づくまでに30日、30立方メートルを失う。水の料金を1立方メートルあたり600円とすると、1万8,000円だ。毎朝メーターを読めば、2日で気づける。失うのは2立方メートル、1,200円ですむ。差は1回で1万6,800円になる。

設備を動かすのは、人

1日40立方メートルという数字は、処理の設備だけでは生まれない。毎朝メーターを読む人、すすぎを減らす人、野菜の水で鍋を洗う人がいる。働く人が、節約が自分の暮らしにもつながると感じられることが、水の循環を支えている。

持ち帰れる知識

  • 水の再利用は、毎日の記録と点検に支えられている
  • 節約が働く人の暮らしにつながると、取り組みが続きやすい
  • 現場の人は、次の改善の案を持っている

宿で考えられること

  • 毎朝、決まった時間に水のメーターを読んでみる
  • 掃除や洗い物の手順で、すすぎ直しを減らせないか見直す
  • 働く人に、水の節約の案を聞いてみる

事業・予約への接続

コートヤード・バイ・マリオット・バンコク・スワンナプーム空港は、468室と会議の施設を持つ。水の再利用やごみの分別の取り組みは、環境への配慮を求める会議や団体の客に伝えられる。

Sources / 参考情報

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