ジャガイモの皮は、むかない:577室の「リスボン・マリオット」が、ポルトガルの家庭料理の知恵と「7割の準備」で食品ロスを9か月で半分にした方法
ポルトガルの首都リスボン。577室の「リスボン・マリオット・ホテル」は、町で最も大きなホテルの一つだ。会議や催しが多く、1日に900食を超える料理を出す。
食品ロスを減らす仕組みを提供する英国の会社ウィノウの事例紹介によると、このホテルは2024年、食べ物のごみを30%減らす目標を立てた。結果は、9か月で50%減。目標を大きく超えた。
捨てたものをはかる話は #002、朝食ビュッフェで何を変えたかは #214 で紹介した。この記事では、「最初に全部つくらない」ことと、ポルトガルの料理の知恵、そして外の審査を受けることに注目する。
たとえば、朝食の始まる前。料理人が、予想した量の7割だけの卵料理を並べ、残りの卵は厨房に置いておく。
はかっていたのに、変わらなかった
ホテルは、以前から手で食べ物のごみを記録していた。けれども、総支配人は「手ではかっていたが、そのデータで何もしていなかった。集めていただけで、変えるために使っていなかった」と振り返る。総支配人は、マリオットで20年近く働き、英国で持続可能性の取り組みを支えたあと、リスボンに来た。着任した日から、食品ロスを大切な課題に決めていた。
1週間に50キロの卵
ウィノウの仕組みで見えたのは、朝食の終わりに捨てる量の多さだった。料理長は、「最初は、1週間に50キロの卵を捨てていた。スクランブルエッグだけで、年に1万ユーロ近くになる」と話す。
そこで厨房は、予想した量の70%だけを最初につくり、あとは様子を見ながら少しずつ足すようにした。スクランブルエッグのごみは65%減った。
計算すると、1週間50キロは年に約2,600キロだ。1万ユーロを2,600キロで割ると、1キロあたり約3.85ユーロになる。
ジャガイモの皮と、残ったパン
料理長は、厨房の当たり前も問い直した。ポルトガルの伝統料理、塩ダラの「バカリャウ」に使うジャガイモの皮むきだ。「本当にむく必要があるのか。皮は風味と栄養を加えるし、2日ごとに2キロのごみが減る」。2日で2キロなら、年に約365キロになる。
厨房は、材料を生かすポルトガルの伝統の料理にも頼った。残ったパンをにんにくとコリアンダーで炒める素朴な付け合わせ「ミーガシュ」をメニューに加えた。バカリャウで出る塩ダラの切れ端は、蒸して手でほぐし、新しい料理に使う。
減らして、よく見せる
菓子パンは、大きなかごに山盛りにするのをやめ、地元らしい上品な並べ方に変えた。パンと菓子パンのごみは94%減った。総支配人は、「実は出す量は減らしたが、見た目はよくなった。体験が上がり、ごみも減った」と話す。
働く人の食堂では、ごみ箱を置かない「ゼロ・ビン・デー」を始めた。取った分を食べきるよう、そっと促す日だ。最初は月に1回だったが、今は2週間に1回になり、広く支持されている。
外の目で、確かめる
ホテルは、食品ロスへの取り組みを、外部が審査する認証「ザ・プレッジ・オン・フードウェイスト」で確かめた。認証団体の2025年9月10日の発表によると、ホテルはポルトガルで初めて、満点の100%で「オールスター」の段階を得た。9か月かけて、仕入れ、下ごしらえ、客との関わり、捨て方まで、7つの柱にわたって料理と飲み物の運営を変えた。祝いの場として、ごみを出さない料理の会も開いた。
認証団体の記事によると、30年以上このホテルで働くレストランと宴会の責任者は、19歳でプールの係として働き始めた人だ。最も効果があったのは、ビュッフェや宴会の料理を小さく盛ることだったという。客は、足りなければまた取りに来られる。週ごとの食べ物のごみの報告も見て、実際に食べられた量から準備の量を決めている。
一品料理のメニューには、材料をむだなく使う「ゼロ・ウェイスト」の皿も加えた。ある会社の宴会では、この皿について尋ねた客が、同僚を呼んで一緒に試し、自分の会社の給食の担当にもこの考えを伝えると話したという。
数字で見る成果
ウィノウの事例紹介によると、成果は年に換算して1万食分、食材の費用3万1,000ユーロ、二酸化炭素に換算して16.9トンだ。食べ物のごみは、売上に対する割合で50%減った。事例紹介の資料では、料理と飲み物についての客の満足度も11.5ポイント上がった。総支配人は、「満足度が大きく上がったのは、思いがけない成果だった」と話している。
1日900食を1年続けると、約32万8,500食になる。救われた1万食は、その約3%にあたる。食材の費用は、1食分あたり約3.1ユーロだ。
日本の宿に置き換えると
日本の宿の朝食でも、卵料理や焼き魚を最初に全部並べ、終わりに捨てることがある。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、毎朝、卵料理を3キロつくり、終わりに1キロ捨てている宿があるとする。年に365キロだ。最初に予想の7割、2.1キロだけをつくり、様子を見て少しずつ足すことで、捨てる量が65%減ったとする。年に237.25キロが減る。卵料理の材料費を1キロあたり800円とすると、年18万9,800円になる。
全部つくらない勇気
リスボン・マリオットは、はかったデータを「変えるため」に使い始めた。最初は7割だけつくり、ジャガイモの皮をむかず、残ったパンを伝統の料理に変えた。そして、外の審査で確かめた。食品ロスを減らす知恵は、新しい技術の中だけでなく、昔からの料理の中にもある。
持ち帰れる知識
- はかったデータは、変えるために使って初めて役に立つ
- 最初に全部つくらず、様子を見て足すと、ごみが減る
- 伝統の料理には、材料を生かす知恵がある
宿で考えられること
- 朝食の料理を、最初は7割だけ並べてみる
- 皮や切れ端を使える料理を、料理人と考えてみる
- 働く人の食事で、食べきる日をつくってみる
事業・予約への接続
リスボン・マリオットでは、料理を小さく盛り、並べ方をよくしたことで、客の満足度が上がった。ごみを出さない皿は、会議や宴会の客との会話のきっかけにもなっている。
Sources / 参考情報
- Winnow(英文) - リスボン・マリオットは、どのように食べ物のごみを50%減らし、客の満足度を上げたか(事例紹介)
裏付け: 577室・1日900食超・町で最大級、2024年に30%の目標で9か月で50%減、総支配人の経歴と「手ではかっていたが何もしていなかった」、週50キロの卵で年1万ユーロ近く、70%だけつくり少しずつ足して65%減、ジャガイモの皮で2日ごとに2キロ、ミーガシュと塩ダラの切れ端、菓子パンの並べ方で94%減、「出す量は減らしたが見た目はよくなった」、ゼロ・ビン・デーは月1回から2週間に1回、年に1万食・3万1,000ユーロ・16.9トン、売上に対する割合で50%減、「満足度が上がったのは思いがけない成果」 - Winnow(英文) - リスボン・マリオットの事例紹介(PDF)
裏付け: 料理と飲み物についての客の満足度が11.5ポイント上がった、パンと菓子パンのごみ94%減 - The PLEDGE on Food Waste(英文) - オールスター:リスボン・マリオット・ホテルの事例(2025年9月10日)
裏付け: ポルトガルで初めて満点の100%オールスター、9か月で仕入れ・下ごしらえ・客との関わり・捨て方まで7つの柱、ごみを出さない料理の会、外部が審査する認証 - The PLEDGE on Food Waste(英文) - リスボン・マリオットの客との関わり
裏付け: 30年以上働くレストランと宴会の責任者・19歳でプールの係から、ビュッフェと宴会で小さく盛る、週ごとの報告で準備の量を決める、ゼロ・ウェイストの皿、宴会の客が同僚を呼び自社の給食の担当に伝えると話した - Marriott(英文) - リスボン・マリオット・ホテルの体験(公式サイト)
裏付け: グリーンキーの認証、ザ・プレッジ・オン・フードウェイストの認証、余った食べ物の寄付、地元の旬の食材