1日9トンのごみを、手で分ける仕事:「サンフランシスコ・マリオット・マーキース」が、障害のある人たちと埋め立てのごみを減らす方法
米国カリフォルニア州のサンフランシスコ。大きな会議場のある地区に、「サンフランシスコ・マリオット・マーキース」が建っている。38階建てに1,500室、3つのレストランとカフェ、広い会議場を持つ。ここでは、毎日約2万ポンド(約9トン)のごみが出る。
そのごみを裏方で分けているのは、障害のある人たちのチームだ。この記事では、ごみを分ける作業が、どのように「仕事」になり、ホテルと町の両方を助けているのかを見ていく。
たとえば、朝の搬入口。働く人が段ボールをたたみ、ごみを青と緑の箱に分けていく。そばでは、仕事の指導役が見守っている。
町が、分別を義務にした
サンフランシスコ市の環境局の2017年5月18日の発表によると、ホテルは1989年の開業のときから、地元の非営利団体ツールワークスと組んできた。ツールワークスは、障害のある人に職業訓練と仕事を提供する団体だ。ホテルは、客室の清掃や館内の掃除などの仕事を、障害のある人たちに任せてきた。
転機は2009年だった。市が、町のごみをなくす目標のために、すべての事業者にリサイクルと堆肥化を求めはじめた。市の環境局によると、食べ物のくずを含めて分別を義務にしたのは、カリフォルニア州の市で初めてだった。ホテルは、毎日出る約2万ポンドのごみを、もっとうまく扱う方法を探した。そこで手を挙げたのが、ツールワークスのスタッフだった。
片手間から、毎日の仕事へ
発表によると、ホテルの搬入口では、埋め立て用の大きな箱の代わりに、堆肥にする緑の箱と、リサイクルする青の箱が並ぶようになった。ツールワークスの仕事の指導役が現場にいて、迷ったときに答える。
この作業は、最初はツールワークスのチームがほかの仕事を終えたあとに手伝うものだった。それが、専任のチームが週7日行う仕事に育った。チームは「ごみゼロの手伝い役」と呼ばれ、すべてを正しい場所に分ける。堆肥にするもの、リサイクルするもの、そして保護施設に寄付して再び使うものだ。
働く一人は、「ここで6年以上働いている。いちばん好きなのは、ツールワークスとマリオットの人たちと一緒に働くことだ」と話している。
85%、そして89%
その結果、ホテルはごみの85%をリサイクルと堆肥にまわすようになった。米国のホテルで最も高い水準の一つだ。2017年5月、市と、市のごみを集める会社は、ホテルとツールワークスを表彰した。
ホテルを所有する会社の2017年8月17日の発表によると、ホテルはごみを集める会社から、24万9,000ドルの払い戻しも受けた。米国環境保護庁の事例紹介によると、市では、事業者が実際にごみを減らした分に応じて、料金が割り引かれる。ごみを集める会社の担当者は、「正しく分けると、ごみが減り、事業者の費用が下がる。仕事と、費用の節約と、環境を守ることの、三方よしだ」と話している。
計算すると、毎日の約9トンのうち85%なら、約7.7トンが埋め立てに行かずにすむことになる。
ホテルの総支配人は、当時、「ツールワークスが来る前は、ごみの処理を担う力が私たちになかった。今は、障害のある人にやりがいのある仕事を提供しながら、運営の効率と利益もよくなっている」と話した。
マリオットの公式サイトによると、今では、ごみをリサイクルや堆肥にまわす割合は、月ごとに89%を超える。ごみは手で分けて、リサイクルできるものをすべて取り出す。料理の油、電池、電球、塗料、電子機器も、別にリサイクルしている。
会議でも、ごみを減らす
公式サイトによると、ホテルは店や会議場の床から、ペットボトルの水をなくした。会議の場所には給水所を置く。厨房では食べ物のくずをすべて堆肥にし、余った宴会の料理は、できるときに寄付する。調味料は大きな容器で出し、会議室のメモ帳や紙もやめた。
公式サイトが紹介する市の2024年5月7日の記事によると、ホテルは市で最も大きな「グリーン・ビジネス」の認証を受けた事業者で、州でも3番目に大きい。
町のしくみが、後を押す
市の環境局によると、市は2019年に決まりを改め、ごみを多く出す事業者に点検を求め、必要に応じて「ごみゼロの手伝い役」を入れるよう求めている。市のサイトには、手伝い役を提供する会社や団体の一覧があり、ツールワークスもその一つだ。マリオット・マーキースから始まった形が、町の仕組みの一部になっている。
日本の宿に置き換えると
日本でも、障害のある人が働く就労支援の事業所と組んで、清掃や分別を任せる宿がある。分別の質が上がると、捨てるごみの量と費用が下がる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%(年5,110室泊)の宿で、1室泊あたり1キロのごみが出るとする。年5,110キロだ。今は40%を資源にまわしているが、分別の担当を置いて80%にできたとする。捨てるごみは年2,044キロ減る。処分の費用を1キロあたり40円とすると、年8万1,760円だ。分別の作業を1日1時間とすると、年365時間の仕事が地域に生まれる。
分けることを、仕事にする
サンフランシスコ・マリオット・マーキースは、町が分別を義務にしたとき、ごみを分ける作業を、障害のある人たちの毎日の仕事に育てた。ごみは減り、費用も下がり、仕事も生まれた。ごみを分ける手間は、誰かの大切な仕事にもなる。
持ち帰れる知識
- 分別の質が上がると、ごみと費用の両方が減る
- 分別の作業は、地域の人の仕事になる
- 町の決まりや料金の仕組みが、取り組みを後押しする
宿で考えられること
- 今のごみのうち、資源にまわせているのは何割か調べてみる
- 就労支援の事業所に、分別や清掃の仕事を相談してみる
- 会議や宴会で、使い捨てをやめられるものを書き出してみる
事業・予約への接続
サンフランシスコ・マリオット・マーキースでは、会議の給水所や調味料の大きな容器、メモ帳の廃止など、環境に配慮した会議の取り組みを主催者に伝えている。
Sources / 参考情報
- San Francisco Department of the Environment(英文) - サンフランシスコ・マリオット・マーキースが、障害のある人を雇うリサイクルの仕組みでごみゼロを先導(2017年5月18日)
裏付け: 市とごみを集める会社が表彰、ツールワークスは障害のある人に職業訓練と仕事を提供する非営利団体、1,500室・38階・3つのレストランとカフェ・会議場、ごみゼロの手伝い役が堆肥・リサイクル・保護施設への寄付に分ける、85%で米国のホテルで最高水準の一つ、1989年の開業から協力、2009年に市がリサイクルと堆肥化を求めた、毎日2万ポンド、搬入口の緑と青の箱、現場の指導役、6年以上働く人の話、片手間から週7日の専任のチームへ、総支配人の話、ごみを集める会社の担当者の話 - Host Hotels & Resorts(英文) - サンフランシスコ・マリオット・マーキースが、障害のある人を雇うリサイクルの仕組みで表彰される(2017年8月17日)
裏付け: ホテルを所有、市の2020年のごみゼロの目標への対応、搬入口で約2万ポンドを分ける、2017年5月に表彰、ごみを集める会社から24万9,000ドルの払い戻し、85% - Marriott(英文) - サンフランシスコの持続可能なホテル(公式サイト)
裏付け: 月ごとに89%超、手で分ける、料理の油・電池・電球・塗料・電子機器、ペットボトルの水をなくした、給水所、食べ物のくずはすべて堆肥・余った宴会の料理の寄付、調味料の大きな容器・メモ帳の廃止、市の2024年5月7日の記事で市で最大・州で3番目のグリーン・ビジネス - San Francisco Department of the Environment(英文) - ごみゼロ:取り組みの歩みと成果
裏付け: 2009年に食べ物のくずを含むリサイクルと堆肥化を義務にしたカリフォルニア州で最初の市、2019年にごみを多く出す事業者の点検と手伝い役の関わりを求める改正 - San Francisco Department of the Environment(英文) - ごみゼロの手伝い役の一覧(PDF)
裏付け: 手伝い役を提供する会社や団体の一覧にツールワークス - U.S. EPA(英文) - ごみゼロの事例:カリフォルニア州サンフランシスコ(2017年1月の保存版)
裏付け: 事業者は実際にごみを減らした分に応じて料金の割引を受ける