GOAL 12 · TARGET 12.5 廃棄物・循環経済 4分 / 2216文字 分けることを、仕事にする #219

1日9トンのごみを、手で分ける仕事:「サンフランシスコ・マリオット・マーキース」が、障害のある人たちと埋め立てのごみを減らす方法

米国カリフォルニア州のサンフランシスコ。大きな会議場のある地区に、「サンフランシスコ・マリオット・マーキース」が建っている。38階建てに1,500室、3つのレストランとカフェ、広い会議場を持つ。ここでは、毎日約2万ポンド(約9トン)のごみが出る。

そのごみを裏方で分けているのは、障害のある人たちのチームだ。この記事では、ごみを分ける作業が、どのように「仕事」になり、ホテルと町の両方を助けているのかを見ていく。

たとえば、朝の搬入口。働く人が段ボールをたたみ、ごみを青と緑の箱に分けていく。そばでは、仕事の指導役が見守っている。

町が、分別を義務にした

サンフランシスコ市の環境局の2017年5月18日の発表によると、ホテルは1989年の開業のときから、地元の非営利団体ツールワークスと組んできた。ツールワークスは、障害のある人に職業訓練と仕事を提供する団体だ。ホテルは、客室の清掃や館内の掃除などの仕事を、障害のある人たちに任せてきた。

転機は2009年だった。市が、町のごみをなくす目標のために、すべての事業者にリサイクルと堆肥化を求めはじめた。市の環境局によると、食べ物のくずを含めて分別を義務にしたのは、カリフォルニア州の市で初めてだった。ホテルは、毎日出る約2万ポンドのごみを、もっとうまく扱う方法を探した。そこで手を挙げたのが、ツールワークスのスタッフだった。

片手間から、毎日の仕事へ

発表によると、ホテルの搬入口では、埋め立て用の大きな箱の代わりに、堆肥にする緑の箱と、リサイクルする青の箱が並ぶようになった。ツールワークスの仕事の指導役が現場にいて、迷ったときに答える。

この作業は、最初はツールワークスのチームがほかの仕事を終えたあとに手伝うものだった。それが、専任のチームが週7日行う仕事に育った。チームは「ごみゼロの手伝い役」と呼ばれ、すべてを正しい場所に分ける。堆肥にするもの、リサイクルするもの、そして保護施設に寄付して再び使うものだ。

働く一人は、「ここで6年以上働いている。いちばん好きなのは、ツールワークスとマリオットの人たちと一緒に働くことだ」と話している。

85%、そして89%

その結果、ホテルはごみの85%をリサイクルと堆肥にまわすようになった。米国のホテルで最も高い水準の一つだ。2017年5月、市と、市のごみを集める会社は、ホテルとツールワークスを表彰した。

ホテルを所有する会社の2017年8月17日の発表によると、ホテルはごみを集める会社から、24万9,000ドルの払い戻しも受けた。米国環境保護庁の事例紹介によると、市では、事業者が実際にごみを減らした分に応じて、料金が割り引かれる。ごみを集める会社の担当者は、「正しく分けると、ごみが減り、事業者の費用が下がる。仕事と、費用の節約と、環境を守ることの、三方よしだ」と話している。

計算すると、毎日の約9トンのうち85%なら、約7.7トンが埋め立てに行かずにすむことになる。

ホテルの総支配人は、当時、「ツールワークスが来る前は、ごみの処理を担う力が私たちになかった。今は、障害のある人にやりがいのある仕事を提供しながら、運営の効率と利益もよくなっている」と話した。

マリオットの公式サイトによると、今では、ごみをリサイクルや堆肥にまわす割合は、月ごとに89%を超える。ごみは手で分けて、リサイクルできるものをすべて取り出す。料理の油、電池、電球、塗料、電子機器も、別にリサイクルしている。

会議でも、ごみを減らす

公式サイトによると、ホテルは店や会議場の床から、ペットボトルの水をなくした。会議の場所には給水所を置く。厨房では食べ物のくずをすべて堆肥にし、余った宴会の料理は、できるときに寄付する。調味料は大きな容器で出し、会議室のメモ帳や紙もやめた。

公式サイトが紹介する市の2024年5月7日の記事によると、ホテルは市で最も大きな「グリーン・ビジネス」の認証を受けた事業者で、州でも3番目に大きい。

町のしくみが、後を押す

市の環境局によると、市は2019年に決まりを改め、ごみを多く出す事業者に点検を求め、必要に応じて「ごみゼロの手伝い役」を入れるよう求めている。市のサイトには、手伝い役を提供する会社や団体の一覧があり、ツールワークスもその一つだ。マリオット・マーキースから始まった形が、町の仕組みの一部になっている。

日本の宿に置き換えると

日本でも、障害のある人が働く就労支援の事業所と組んで、清掃や分別を任せる宿がある。分別の質が上がると、捨てるごみの量と費用が下がる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%(年5,110室泊)の宿で、1室泊あたり1キロのごみが出るとする。年5,110キロだ。今は40%を資源にまわしているが、分別の担当を置いて80%にできたとする。捨てるごみは年2,044キロ減る。処分の費用を1キロあたり40円とすると、年8万1,760円だ。分別の作業を1日1時間とすると、年365時間の仕事が地域に生まれる。

分けることを、仕事にする

サンフランシスコ・マリオット・マーキースは、町が分別を義務にしたとき、ごみを分ける作業を、障害のある人たちの毎日の仕事に育てた。ごみは減り、費用も下がり、仕事も生まれた。ごみを分ける手間は、誰かの大切な仕事にもなる。

持ち帰れる知識

  • 分別の質が上がると、ごみと費用の両方が減る
  • 分別の作業は、地域の人の仕事になる
  • 町の決まりや料金の仕組みが、取り組みを後押しする

宿で考えられること

  • 今のごみのうち、資源にまわせているのは何割か調べてみる
  • 就労支援の事業所に、分別や清掃の仕事を相談してみる
  • 会議や宴会で、使い捨てをやめられるものを書き出してみる

事業・予約への接続

サンフランシスコ・マリオット・マーキースでは、会議の給水所や調味料の大きな容器、メモ帳の廃止など、環境に配慮した会議の取り組みを主催者に伝えている。

Sources / 参考情報

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