GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 4分 / 2107文字 短い事例を、数字で読む #220

1室1日8.5リットルの雨:英国の「イビス・バジェット・バーミンガム・センター」の雨水タンクを、短い事例紹介から読み解く

英国中部の都市バーミンガム。町の中心に、250室の「イビス・バジェット・バーミンガム・センター」がある。以前は「エタップ・ホテル」という名前だった、アコー・グループの手ごろな価格のホテルだ。

このホテルは、屋根に降った雨をタンクにため、トイレや洗濯に使っている。欧州連合の企業向けの情報サイトに載った事例紹介は、わずか数行だ。けれども、そこにある2つの数字を読み解くと、雨水の値打ちが見えてくる。この記事では、短い事例を、計算と比べることで深く読んでいく。

たとえば、雨の朝。屋根を流れた雨が、配管を通って貯水タンクに集まっていく。

事例紹介に書かれていること

欧州クラスター協力プラットフォームの事例紹介によると、ホテルは、トイレやシャワー、厨房、掃除、洗濯などで、多くの水を使っていた。経営陣は、水道の水を節約し、費用を下げる方法を探し、屋根に降った雨を貯水タンクに流しこむ仕組みを入れた。

集めた雨水は、飲み水以外の目的に使われている。トイレを流す水、洗濯機、冷却塔、そして日々の掃除だ。この仕組みで、飲める水を年に最大780立方メートル節約し、水道の水の使用量は5〜10%減った。事例紹介は、この投資を「費用が高い」と分類している。

数字1:1室1日8.5リットル

780立方メートルは、78万リットルだ。250室で割ると、1室あたり年3,120リットル、1日あたり約8.5リットルになる。トイレを1回流すと6リットルほど使うとすると、1室1日に1〜2回分の水を、雨でまかなっている計算だ。

数字2:5〜10%から、全体を逆算する

5〜10%という幅からは、ホテル全体の水の量を逆算できる。780立方メートルが10%なら、全体は年7,800立方メートル。5%なら、1万5,600立方メートルだ。1室1日にすると、約85〜171リットルになる。

事例紹介には、幅がある理由は書かれていない。それでもわかるのは、雨水がホテル全体の水の1割以下を担っているということだ。

同じ英国の、もう一つの事例

同じ情報サイトには、英国のホテルチェーン「プレミア・イン」を運営するウィットブレッドの事例も載っている。新しく建てるプレミア・インのホテルには、シャワーなどの排水を再利用する仕組みを入れた。報告の時点で46か所に入れ、1室あたり1日平均30リットル、1つのホテルで年657立方メートルを節約した。飲み水の使用量は、平均30%減った。トイレには、再利用の水を使うことを決まりにした。

2つを並べると、違いが見える。1つのホテルで節約した量は、雨水の780立方メートルと、排水の再利用の657立方メートルで、大きくは変わらない。けれども、1室1日あたりでは、8.5リットルと30リットルだ。割合も、5〜10%と30%で違う。ホテルの大きさや、全体で使う水の量が違うため、単純には比べられない。

ただ、仕組みの性格の違いは、はっきりしている。雨水は、雨が降ったときしかたまらない。排水の再利用は、客がシャワーを浴びるかぎり、毎日水が生まれる。

雨水の、もう一つのよさ

情報サイトの水の解説によると、雨水には石灰分が含まれないため、掃除に使うと洗剤や薬品が少なくてすむ。一方で、雨水や排水を再利用する仕組みを、今ある建物にあとから入れるのは、大きな改装をするとき以外は費用が高く、難しいという。別の配管が必要になるからだ。そのため、最初から仕組みを組みこめる新しいホテルが有利だと書いている。

解説は、誰もいない時間に水のメーターを読む方法もすすめている。人が帰ったあとと、仕事が始まる直前にメーターを読めば、使っていないはずの時間に流れている水、つまり水もれがわかる。

アコーの2024年12月の水の方針によると、2019年には、少なくとも3分の1のホテルが、水の問題が大きい地域にあった。方針は、できる場所では雨水を集め、一度使った水を再利用することを挙げている。

日本の宿に置き換えると

780立方メートルを集めるには、どれくらいの屋根が必要なのか。日本の単位なら、1平方メートルに1ミリの雨が降ると1リットルになる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、年に1,700ミリの雨が降る町の宿で、降った雨の80%を集められるとする。1平方メートルの屋根から、年に1.36立方メートルが集まる。屋根が200平方メートルなら、年272立方メートルだ。20室・稼働率70%(年5,110室泊)で、トイレに1室泊あたり30リットル使うとすると、年153.3立方メートル。タンクが足りれば、トイレの水はすべて雨でまかなえる計算になる。水の料金を1立方メートルあたり600円とすると、年9万1,980円だ。

短い数字から、多くを読む

イビス・バジェット・バーミンガム・センターの事例紹介は、短い。それでも、780立方メートルと5〜10%という2つの数字から、1室1日8.5リットル、ホテル全体の水の量、そして排水の再利用との違いまで読み取れる。数字を割り、比べることで、宿にとっての雨水の値打ちが見えてくる。

持ち帰れる知識

  • 節約した量を室数と日数で割ると、身近な量になる
  • 割合の数字からは、全体の量を逆算できる
  • 雨水と排水の再利用は、水が生まれる仕組みが違う

宿で考えられること

  • 宿の屋根の広さと、年の雨の量を調べてみる
  • トイレや掃除に、毎日どれだけ水を使うか測ってみる
  • 改装の予定があれば、別の配管を入れられないか考えてみる

事業・予約への接続

イビス・バジェット・バーミンガム・センターは、手ごろな価格のホテルでも、雨水の仕組みで水道の水を減らせることを示している。費用を抑える工夫は、価格を保つ力にもなる。

Sources / 参考情報

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