空気から1日6,000リットルの水をつくる:ドミニカ共和国の島「カヨ・レバンタード・リゾート」が、水を使う庭を在来の植物に変えた方法
カリブ海のドミニカ共和国。北東のサマナ湾に、カヨ・レバンタードという小さな島が浮かんでいる。旅行誌「コンデナスト・トラベラー」によると、首都サントドミンゴから100マイル(約160km)あまり、サマナの町から3マイル(約5km)。1月から3月には、約2,000頭のザトウクジラが湾にやってくるという。
この島にあるのが「カヨ・レバンタード・リゾート」だ。コンデナスト・トラベラーによると、いちばん小さな部屋でも580平方フィート(約54平方メートル)あり、最も大きな「シグナトゥーラ・ヴィラ」は2,700平方フィート(約250平方メートル)を超える。島では、真水をどう手に入れ、どう使うかを考えなければならない。このリゾートは、水を「つくる」ことと、水を「使わない」ことの両方に取り組んでいる。
たとえば、昼食のテーブル。運ばれてくる水は、プラスチックのボトルではなく、ガラスの瓶に入っている。その水は、島の空気からつくられたものだ。
空気の湿気から、飲み水をつくる
リゾートの公式サイトによると、ここには自前の飲み水の工場がある。空気中の湿気を取り出して、1日に最大6,000リットルの飲み水をつくる。米経済誌「フォーブス」の2025年10月の記事は、これを1日約1,585米ガロンと伝えている。
つくった水は、島の中でガラスの容器に詰める。フォーブスによれば、水はすべて、くり返し使えるガラス瓶に詰められている。プラスチックを使わないことで、海の生き物を守るためだと、リゾートは説明している。
6,000リットルは、どれくらいの量なのか。1年続けると、219万リットルになる。仮に1本500ミリリットルの瓶に詰めるとすると、1日1万2,000本分だ。
水のいる庭を、在来の植物の庭に
もう一つの取り組みは、庭を変えることだ。庭の植物は、選び方しだいで、必要な水の量が大きく変わる。
ドミニカ共和国の英字紙「ドミニカン・トゥデイ」の2026年5月の記事によると、ホテル会社ピニェロが支える「エコ・バイア財団」は、国立植物園で開かれた2026年の国際会議で、島の取り組みを発表した。環境技術者のフアン・ウランガ・ゴンサレス氏は、水を多く使う従来の庭を、在来種と固有種を中心にした、変化に強い自然の庭に変えてきた経緯を説明した。
発表によると、島ではこれまでに308種の植物が確認され、そのうち67%が在来種だった。計算すると、約206種になる。取り組みは、国立植物園と協力して進めてきたものだ。会議の参加者は島を訪れ、植え戻しの現場を見学した。
公式サイトによると、リゾートは国立植物園の保護種を敷地と島じゅうに植え、絶滅のおそれのある植物の研究センターの役割も担っている。財団は、在来の植物をおびやかす外来の植物を見つけて取り除き、鳥や爬虫類、昆虫を支える在来の植物を植えてきた。オオカバマダラなどのチョウのように、花粉を運ぶ生き物を守るためでもある。
電気と部屋の工夫
水だけではない。公式サイトによると、リゾートは太陽光パネルと、ごみを分解する設備を組み合わせて、運営の電気をまかなっている。2024年7月の公式ブログでは、生ごみを分解してガスを取り出し、発電に使うと説明している。
部屋には、照明や人の動きを感じるセンサー、ドアと窓のセンサー、温度と湿度を管理するシステムを入れている。チェックインは紙を使わず、部屋の鍵には自然の素材でつくった腕輪を使う。部屋にはプラスチックを置いていない。公式サイトは、こうした工夫で、客が自分の環境への負荷を小さくしながら滞在を楽しめるようにしていると説明する。
客も、記録に加わる
財団は、客が参加できる活動も用意している。植物や生き物の写真を投稿する市民科学のアプリ「iNaturalist」に、島で見つけた生き物を記録してもらう。研究者が、島の生き物のつながりを理解する助けになるという。45分の自然散策では、島の成り立ちや、今の環境の課題と解決策を案内する。
日本の宿に置き換えると
空気から水をつくる設備は、どの宿にも向くわけではない。けれども、水を詰めて出す方法と、庭の植物の選び方は、多くの宿で見直せる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%(年5,110室泊)の島の宿を考える。1室泊あたり500ミリリットルのペットボトルを2本置いているとすると、年に1万220本になる。くみ置きのガラス瓶に替えれば、この本数がそのまま減る。
庭については、300平方メートルの芝生に、夏の90日間、1平方メートルあたり1日4リットルの水をまくとする。合計は108立方メートルだ。土地に合った植物に替えて、水やりが4分の1ですむようになれば、27立方メートルになり、81立方メートルを節約できる。水の料金を1立方メートルあたり600円とすると、年4万8,600円だ。
水を足すことと、水を引くこと
カヨ・レバンタード・リゾートは、空気から水をつくって足す一方で、水のいる庭をやめて、使う水を引いている。どちらか一方ではなく、両方を組み合わせることで、島の限られた水を守ろうとしている。
持ち帰れる知識
- 水を「つくる」ことと「使わない」ことは、組み合わせられる
- 庭の植物を土地に合ったものにすると、水やりが減る
- 客が生き物を記録することも、保全の力になる
宿で考えられること
- 客室や食事で出している水のボトルの本数を数えてみる
- 庭の水やりに、夏の間どれだけ水を使っているか測ってみる
- 植え替えのときに、土地に合った植物を選べないか考えてみる
事業・予約への接続
カヨ・レバンタード・リゾートは、島でつくった水をガラス瓶で出し、自然散策や生き物の記録に客を誘っている。水と植物の取り組みそのものが、滞在の体験になっている。
Sources / 参考情報
- Cayo Levantado Resort(英文) - 持続可能性
裏付け: 空気中の湿気から1日最大6,000リットルの飲み水、島でガラスの容器に詰めてプラスチックをなくす、国立植物園の保護種を植える、絶滅のおそれのある植物の研究センター、太陽光パネルとごみを分解する設備で電気、紙を使わないチェックイン、自然の素材の鍵の腕輪、プラスチックのない部屋 - Cayo Levantado Resort(英文) - エコ・バイア財団
裏付け: 外来の植物を見つけて取り除く、鳥・爬虫類・昆虫を支える在来の植物を植える、オオカバマダラなど花粉を運ぶ生き物、iNaturalist への記録、45分の自然散策 - Cayo Levantado Resort(英文) - 熱帯の楽園での冒険とウェルネス(2024年7月30日)
裏付け: 生ごみを分解してガスを取り出し発電、照明・人感センサー・ドアと窓のセンサー・温度と湿度の管理 - Condé Nast Traveler(英文) - カヨ・レバンタード(2023年7月11日)
裏付け: サントドミンゴから100マイルあまり、サマナから3マイル、1〜3月に約2,000頭のザトウクジラ、いちばん小さな部屋は580平方フィート、シグナトゥーラ・ヴィラは2,700平方フィート超 - Dominican Today(英文) - エコ・バイア財団、国際会議でカヨ・レバンタードの再生の取り組みを紹介(2026年5月27日)
裏付け: ピニェロが支える財団、2026年の国際会議(国立植物園)、ウランガ・ゴンサレス氏が水を多く使う庭を在来種と固有種の庭に変えたと説明、308種を確認し67%が在来種、国立植物園との協力、参加者の島の見学 - Forbes(英文) - 華やかさを失わずに環境に配慮する高級ホテル(2025年10月23日)
裏付け: 新しい飲み水の工場で1日約1,585米ガロン(6,000リットル)、水はすべてくり返し使えるガラス瓶に詰める