GOAL 12 · TARGET 12.2 水・衛生・循環 4分 / 2160文字 「100%」と言わずに、今の数字を伝える #222

「100%」とは、まだ言わない:メキシコ初のBコープのホテル「エル・ガンソ」が、排水の処理を直しながら、処理した水の30〜40%を庭に使う方法

メキシコ北西部、バハ・カリフォルニア半島の南の端。太平洋とコルテス海が出会うあたりに、サン・ホセ・デル・カボの町がある。マリーナと漁師の船着き場にはさまれた場所に建つのが、69室の「ホテル・エル・ガンソ」だ。

ホテルの資料によると、エル・ガンソは大人専用のホテルで、屋上には海を見わたすプールがあり、泳げる専用の浜も持っている。2012年、パブロ・サンチェス・ナバロが、客室のある芸術家の滞在施設と録音スタジオとして開いた。今も音楽と美術が、このホテルの中心にある。

そしてエル・ガンソは、2022年、メキシコのホテルとして初めて「Bコープ」の認証を受けた。

たとえば、夕方の屋上。プールのそばで音楽が流れ、客がグラスを傾けている。その足もとでは、ホテルが自分で処理した水が、庭の植物に回されている。

Bコープの点数を読む

Bコープは、「Bラボ」という団体が、企業の社会と環境への取り組みを点数で評価する認証だ。ロスカボスの観光局の2023年8月の記事によると、評価は、地域、企業の統治、環境、働く人、顧客の5つの分野にわたる。記事は、エル・ガンソがメキシコで初めて、中南米では3番目に認証を受けたホテルだと伝えている。この認証は、70を超える国で使われているという。

Bラボの公開情報によると、エル・ガンソの認証は2022年4月。そのときの点数は84.6点だった。いまの点数は92.4点で、7.8点上がっている。

認証には80点が必要だ。また、一般の企業がこの評価を受けたときの点数の中央値は50.9点だという。92.4点は、その約1.8倍にあたる。

自前の処理施設と、浜の油よけ

観光局の記事によると、エル・ガンソは、自前の排水処理施設を持ち、浜辺には油を受け止める装置(グリーストラップ)を設けている。記事は、これらを、海を守る姿勢のあらわれだと書いている。

直すことから始めた

フォーブス誌の2025年10月の記事は、エル・ガンソが排水処理施設を全面的に改良した経緯を伝えている。

まず2024年、専門家に技術的な助言と診断を頼み、問題点を洗い出した。2025年には、処理槽に空気を送りこむ散気装置を取り替え、酸素を送る力を高めた。処理した水の質を上げるためだ。一般に、こうした処理では、微生物が水の汚れを分解する。その働きには、酸素が欠かせない。

ホテルのサステナビリティ担当の責任者、アルン・ルス氏は、フォーブスのメールの取材にこう答えている。「今は、処理した水の30〜40%を庭の水やりに再利用している。ホテルの外の公共の緑地にも水を提供できるよう、広げる計画だ」。

「100%」と言わない理由

ルス氏は、もう一つ大切なことを話している。「早まって『100%』と言うのではなく、今どこにいて、次に何をするかを伝える」。

環境への取り組みでは、「100%」や「ゼロ」といった言葉が目を引く。けれども、エル・ガンソは、30〜40%という今の数字と、外の緑地へ広げるという次の一歩を、そのまま示した。幅のある数字は、正直さのあらわれでもある。

プラスチックと、ごみの分別

公式サイトによると、エル・ガンソは「デスプラスティフィカテ(プラスチックをやめよう)」という取り組みで、使い捨てのプラスチックを環境にやさしいものに替え、詰め替えの仕組みを広げている。客と働く人の両方に、使いすぎない暮らし方を呼びかけている。

ごみは、働く人が毎日、リサイクルできるものを分けている。再び使えるものを、埋め立てに回さないためだ。また、環境への負荷を測る仕組みを入れ、汚れのもとになる排出を記録して、減らすことに役立てている。

地域とともに

ホテルの公式サイトによると、エル・ガンソは2015年、ホテルの隣の土地に「ラ・プラヤ地域センター」を設けた。非営利の団体で、周りの5つの地区の1,500人以上の住民が利用している。芸術の講座、英語やパソコンの教室、栄養の講座、地域の台所がある。

予約サイト「カインド・トラベラー」を通じて1泊予約されるごとに、1米ドルがこのセンターに届く。毎月第1火曜日には、ホテルの駐車場で、センターと一緒に地域のリサイクルの回収所を開いている。海を守るための話し合いの場「アスール・パシフィコ」も、毎年ホテルで開いている。

日本の宿に置き換えると

処理した水をどこまで使えているかを、幅のある数字で伝えるやり方は、規模の小さな宿でもまねできる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%(年5,110室泊)の宿を考える。1室泊あたり200リットルの排水が出るとすると、年1,022立方メートルになる。その30%を庭に回せば306.6立方メートル、40%なら408.8立方メートルだ。水の料金を1立方メートルあたり600円とすると、水道の水を年18万3,960円〜24万5,280円分減らせる計算になる。

今の数字と、次の一歩

エル・ガンソは、Bコープの点数を84.6点から92.4点に上げてきた。排水の処理でも、まず診断し、装置を替え、30〜40%という今の数字を示している。完成したと言う前に、どこまで来たかを伝える。その姿勢が、取り組みへの信頼を支えている。

持ち帰れる知識

  • 設備を直す前に、専門家の診断で問題を洗い出す
  • 幅のある数字は、正直さのあらわれにもなる
  • 認証の点数は、上がり方を見ると取り組みの進み方がわかる

宿で考えられること

  • 排水や処理した水を、今どれだけ使えているか数えてみる
  • 「100%」と書く前に、範囲と数字を確かめる
  • 次に何をするかを、客にも伝えてみる

事業・予約への接続

エル・ガンソは、1泊ごとに地域センターへ1米ドルが届く仕組みを予約サイトと組んでいる。取り組みの今の数字と次の一歩を示すことが、ホテルへの信頼につながっている。

Sources / 参考情報

  • Hotel El Ganzo(英文) - サステナビリティ
    裏付け: 2012年の開業、2022年にメキシコのホテルで初めてBコープ、ラ・プラヤ地域センター(2015年、隣の土地、非営利、5つの地区の1,500人以上、芸術・英語・パソコン・栄養・地域の台所)、カインド・トラベラーで1泊ごとに1米ドル、毎月第1火曜日の地域のリサイクル回収所、アスール・パシフィコを毎年開催、デスプラスティフィカテ(使い捨てのプラスチックを替え詰め替えを広げる)、毎日のリサイクルの分別
  • Hotel El Ganzo(英文) - 報道向け資料
    裏付け: 69室(海に面した60室と9つのスイート)、大人専用、屋上のプール、泳げる専用の浜、2012年にパブロ・サンチェス・ナバロが芸術家の滞在施設と録音スタジオとして開業、マリーナと漁師の船着き場の間、太平洋とコルテス海が出会う場所
  • Hotel El Ganzo(英文) - ホテル・エル・ガンソ
    裏付け: 汚れのもとになる排出を測る環境の管理の仕組み
  • B Lab(英文) - ホテル・エル・ガンソ(Bコープの公開情報)
    裏付け: 2022年4月に認証、2022年の点数84.6、いまの点数92.4、認証に必要な80点、一般の企業の中央値50.9
  • Visit Los Cabos(英文) - ホテル・エル・ガンソの新しい総支配人(2023年8月17日)
    裏付け: メキシコで初めて、中南米で3番目のBコープのホテル、地域・統治・環境・働く人・顧客の5分野、70を超える国で使われる認証、自前の排水処理施設と浜辺の油を受け止める装置
  • Forbes(英文) - 華やかさを失わずに環境に配慮する高級ホテル(2025年10月23日)
    裏付け: 排水処理施設の全面的な改良、2024年に技術的な助言と診断、2025年に散気装置を取り替え酸素を送る力を高めた、処理した水の30〜40%を庭に再利用、外の公共の緑地へ広げる計画、「早まって100%と言わない」というルス氏の言葉

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