GOAL 6 · TARGET 6.3 水・衛生・循環 4分 / 2481文字 研究の数字と、見込みの数字 #228

ビーカーの中で、濁りが87.3%消えた:インド・ドゥルグの学生たちが、モリンガとオクラでホテルの排水を試した研究

インド中部のチャッティースガル州に、ドゥルグという町がある。この町の工科大学「ビライ工科大学」の土木工学科の学生5人と、指導する助教が、ホテルの排水を植物の種で処理できるかを調べた。論文は、工学の国際誌 IJERT の2026年4月号に載った。

使ったのは、モリンガ(ワサビノキ)の種と、オクラの種からとった粘り気のある液だ。この記事では、研究でわかったことと、まだわかっていないことを分けて紹介する。最初に確かめておくと、これは実験室での研究で、ホテルに設備を入れた報告ではない。

研究の対象になったホテル

論文によると、排水は、ドゥルグにある45室の3つ星ホテルから集めた。ホテルの名前は書かれていない。365日営業し、満室のときは1日に2万5,000〜3万リットルの水を使う。シャワーや洗面、洗濯の排水(グレーウォーター)を処理して使い直す設備は、まだない。

ビーカーで、量を変えて試す

研究では、1リットルの排水を入れた容器に、モリンガの液、オクラの液、両方を混ぜた液を、1リットルあたり5〜25ミリリットル加えた。速く2分、ゆっくり20分かき混ぜ、30分置いて、上ずみの濁りを測った。どの条件も3回ずつ試し、平均をとっている。

結果は、次のとおりだ。

  • モリンガだけ:20ミリリットルで濁りが74.0%減り、それ以上入れても良くならなかった
  • オクラだけ:25ミリリットルで65.5%
  • 両方を15ミリリットルずつ:87.3%で、いちばん高かった

論文は、モリンガの成分が濁りの粒の電気を打ち消し、オクラの長い分子が粒どうしをつないで、大きく重い塊にすると説明している。

処理した水は、どこまできれいになったか

いちばんよい量で処理し、砂などのろ過も通した水を測ると、濁りは53.4から6.8(NTU)に下がった。論文の表では、インドの規格「IS 10500」の上限を10としている。水に浮かぶ細かい汚れ(TSS)は178から28 mg/L で84.3%減、汚れの指標の COD は221から58 mg/L で73.8%減、BOD は87から27 mg/L で69.0%減った。色も約85%薄くなり、においは消えた。

論文は、この水を、トイレの洗浄、庭の水やり、床の掃除、冷却塔の補給水、車の洗浄に使えるとしている。これらは、ホテルで使う水の35〜45%にあたるという。一方、プールの水や飲み水には、消毒やさらに細かいろ過を加えなければ勧められない、とも書いている。

基準の数字も、確かめておく

一つ気になる点がある。IS 10500 は、もともと飲み水の規格だ。インド規格局の文書では、濁りの上限を、望ましい値で1、ほかに水源がない場合でも5(NTU)としている。処理した水の6.8は、飲み水の規格としては、この5を上回る。

論文は、トイレや庭など、飲まない用途に使うことを前提に評価している。だから「規格を満たした」という言い方は、「飲まない用途として、論文が置いた上限を満たした」と読むのが正確だ。

ほかの研究も、同じ方向を示している。2018年に学術誌に載ったグレーウォーターの研究のまとめは、モリンガのような自然の材料で、特定の汚れを取り除けると紹介している。同時に、使う人の受け止めは、飲まない用途にかぎって前向きだったとも書いている。

ここからは、見込みの数字

論文は、このホテル(45室、平均稼働率約70%、1日2万7,000リットル)に設備を入れた場合の見込みも示している。

  • 1日約1万リットルを処理して、トイレと庭に回す
  • 1年で約365万リットルの水を節約する
  • 水道料金(1キロリットルあたり約20ルピー)で年約7万3,000ルピー、下水の料金で約3万6,500ルピー、合わせて年約1.09ラク(10万9,000ルピー)を節約する
  • 設備の費用は2.0〜2.5ラク(20万〜25万ルピー)

論文は、費用を回収するまでの期間を約2〜3年としている。ウェブ版では「23年」と読めてしまう表記になっているが、2.0〜2.5ラクを年1.09ラクで割ると、約1.8〜2.3年になる。

1万リットルは、1日2万7,000リットルの約37%で、論文のいう35〜45%の範囲に入る。

研究と、実際に動かすことの違い

ビーカーで87.3%が出ても、毎日1万リットルを処理する設備で同じ結果が出るとはかぎらない。種と粘液を毎日どう用意するか、だれが量を測るか、季節で排水がどう変わるか。こうしたことは、実際に設備を動かして確かめる必要がある。

それでも、この研究には意味がある。薬品の代わりに、身近な植物で濁りを減らせることを、数字で示したからだ。

日本の宿に置き換えると

日本では、排水を処理して使い直すには、決まりに合った設備と管理が必要になる。いきなり植物で処理することは勧められない。たとえば東京都の案内では、決まりの対象になる大きな建物(特定建築物)で、建物の中で使い直す水(雑用水)について、pH、におい、見た目、残っている塩素を7日以内ごとに1回、大腸菌を2か月以内ごとに1回調べることになっている。庭の水やりや掃除に使う場合は、濁りも2か月以内ごとに調べ、し尿をふくむ水は使えない。けれども、「どの水なら、飲み水ほどきれいでなくてよいか」を考えることは、どの宿でもできる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿が、床の掃除と庭の水やりに、1日あわせて400リットルの水道水を使っているとする。1年で146立方メートルだ。もし将来、この分を処理した水でまかなえれば、水の料金を1立方メートルあたり600円として、年8万7,600円分の水道水を減らせる。

数字を、二つに分けて読む

この論文には、実験で測った数字(87.3%など)と、計算で出した見込みの数字(年365万リットルなど)が入っている。前者はビーカーの中で確かめたもので、後者は設備がまだない中での見通しだ。二つを分けて読むと、研究がどこまで進み、次に何を確かめるべきかが見えてくる。

持ち帰れる知識

  • 実験で測った数字と、見込みの数字は分けて読む
  • 「どこに使う水か」で、必要なきれいさは変わる
  • 植物の力で濁りを減らす研究が進んでいる

宿で考えられること

  • 床の掃除や庭の水やりに、どれだけ水を使っているか測ってみる
  • 飲み水ほどきれいでなくてよい用途を、書き出してみる
  • 排水の使い直しを考えるときは、決まりと専門家に確かめる
  • 「規格を満たした」と聞いたら、どの規格のどの用途の数字かを確かめる

事業・予約への接続

地元の大学の研究は、宿にとっても学びの機会になる。研究の対象として協力することは、地域とのつながりにもなる。

Sources / 参考情報

  • IJERT(英文) - グレーウォーターを使い、ホテルの淡水の使用を減らす(2026年4月26日公開、15巻4号)
    裏付け: ビライ工科大学の学生5人と助教、ドゥルグの45室3つ星、365日営業、満室で1日2.5万〜3万リットル、使い直す設備なし、1リットルで5〜25 mL/L・3回ずつ、モリンガ74.0%(20 mL/L)・オクラ65.5%(25 mL/L)・両方15+15で87.3%、濁り53.4→6.8 NTU(上限10)、TSS 178→28、COD 221→58、BOD 87→27、色約85%、トイレ・庭・床・冷却塔・洗車で35〜45%、プールと飲み水は勧めない、約70%稼働で1日2.7万リットル、1日約1万リットル、年約365万リットル、1キロリットル約20ルピー、7.3万+3.65万で1.09ラク、設備2.0〜2.5ラク、回収期間
  • インド規格局(英文) - IS 10500:2012 飲み水の規格(第2版)
    裏付け: 飲み水の規格、濁りの上限は望ましい値1 NTU・ほかに水源がない場合5 NTU
  • Water, Air, & Soil Pollution(英文) - グレーウォーターの性質、処理、再利用と利用者の受け止め:レビュー(2018年)
    裏付け: モリンガなど自然の材料で特定の汚れを取り除ける、利用者の受け止めは飲まない用途にかぎって前向き
  • 東京都健康安全研究センター - 特定建築物の衛生管理基準
    裏付け: 雑用水の検査(pH・臭気・外観・遊離残留塩素は7日以内ごと、大腸菌は2月以内ごと、散水・修景・清掃用は濁度も2月以内ごと)、散水・修景・清掃にし尿を含む水は使えない

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