GOAL 12 · TARGET 12.3 食品・フードロス・堆肥 4分 / 2376文字 作りすぎを、次の料理に #229

作りすぎた肉と野菜を、ラビオリに変える:メキシコ・カンクンの「ロイヤルトン・シック・カンクン」が、ビュッフェの食品ロスを56%減らした方法

メキシコのカリブ海側、カンクンのホテルが並ぶ地区に、「ロイヤルトン・シック・カンクン」がある。大人だけが泊まれる、食事や飲み物が料金にふくまれる「オールインクルーシブ」のリゾートだ。食品ロスを測る機器の会社 Winnow のケーススタディによると、456室に9つのレストランがあり、1日に4,000食を超える料理を出している。

リゾートを運営するブルー・ダイヤモンド・リゾーツは2025年7月31日、このうち一つのビュッフェで、6か月の試験導入のあいだに食品ロスを56%減らしたと発表した。この記事では、料理人たちが「作りすぎ」をどんな料理に変えたのかと、56%がどんな物差しの数字なのかを見ていく。

舞台は、ビュッフェ「エレメンツ」

試験の場所は、ビュッフェ「エレメンツ・グルメ・ビュッフェ」だ。発表によると、リゾートの1日4,000食の一部を出す、量の多い厨房だという。最初の目標は40%減だったが、結果は56%減だった。

発表は、オールインクルーシブのリゾートでは、店が多く、客も多いため、むだが生まれやすいと説明している。リゾートの食品ロスは、中価格帯や手ごろな価格のホテルより50%以上多く、1食あたり平均191グラムだという。

作りすぎを、別の料理に

Winnow のデータで見えたのは、ビュッフェの作りすぎだった。Winnow は、オールインクルーシブのリゾートでは、作りすぎが厨房のごみの23〜57%を占めるとしている。料理人たちは、次のように変えた。

  • メキシコの朝食料理チラキレスを、前もってつくり置くのをやめ、客の前でその場でつくる
  • 作りすぎた肉などのたんぱく質の料理や野菜を、ラビオリやカネロニに仕立て、新しいソースを合わせる
  • 余ったパンは、従業員の食事やデザートに回す
  • 果物の皮や野菜の切れ端は、ソースやシロップ、飲み物に使う。パイナップルの皮もその一つだ

料理長のフレディ・チー氏は、こう話している。「作りすぎた分を、ラビオリやカネロニのような料理に変える。データに導かれた創造性だ。ごみは、チャンスになる」。

料理人の時間も減った

グループの料理長クラウディオ・フローレス氏は、時間の変化をあげる。「仕込みの作業は減り、結果は良くなった。少ないもので、多くのことができるとわかった」。ケーススタディによると、むだな仕込みが減った分、料理人は盛りつけや新しい料理、客へのサービスに時間を使えるようになった。

総支配人のルイス・キンテロ氏は「お客さまは、食品ロスを減らす意味を理解している。持続可能性を大切にしているが、質も求めている。この試験で、どちらかをあきらめる必要はないとわかった」と話す。

結果の数字

ケーススタディは、結果を次の四つで示している。

  • 食品ロスは、金額で56%減
  • 年換算で16.5万米ドルの節約
  • 年246.4トンの二酸化炭素に相当する排出を防ぐ
  • 年14万食分の食べ物を守る

16.5万ドルを14万食で割ると、1食あたり約1.18ドルになる。246.4トンを14万食で割ると、1食あたり約1.76kgの二酸化炭素に相当する。14万食を365日で割ると、1日あたり約384食分だ。

目標の40%と比べると、結果の56%は16ポイント上回り、目標の1.4倍の減り方だった。しかも、これは9つのレストランのうち1つ、6か月の試験での数字だ。

費用の目安

Winnow のニュースによると、オールインクルーシブのリゾートで Winnow を使うと、ビュッフェの作りすぎが減り、食品の費用が2〜8%下がるのが一般的だという。年に500万ドルの食材を買うリゾートなら10万〜40万ドル、1,000万ドルなら20万〜80万ドルになる。同じニュースは、ホテル会社イベロスターが60を超えるリゾートで Winnow を使い、埋め立てに回すごみを80%以上減らしたとも伝えている。

56%は「金額」の数字

ここで注目したいのは、56%が「金額で」測った数字だということだ。同じ Winnow のケーススタディでも、香港のマンダリン オリエンタルの73%は「重さで」測っている。

金額で測ると、値段の高い肉や魚を減らした効果が大きく出る。重さで測ると、重い米や野菜を減らした効果が大きく出る。どちらが正しいということではない。けれども、二つの割合をそのまま並べて「どちらが上か」と比べることはできない。

広がり

ケーススタディによると、ブルー・ダイヤモンド・リゾーツは7つのブランドで80を超える施設を運営している。発表によると、取り組みはリゾートのほかのレストランにも広がり、ブルー・ダイヤモンド・リゾーツの3つの施設でも始まった。キンテロ氏は「このシステムを最初に入れたホテルとして、会社や業界の手本になった」と話している。

日本の宿に置き換えると

宿の夕食ビュッフェでも、作りすぎは起きる。ただし、一度ビュッフェ台に並べた料理を、ほかの料理に使い直すことは、衛生の面から勧められない。考えたいのは、台に出す前に厨房で余った分だ。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、夕食ビュッフェの厨房で、台に出す前の肉と野菜の料理が毎晩1.5kg余り、捨てているとする。年に547.5kgになる。このうち半分を、翌日のまかないや、パスタの具などに仕立て直せたとする。年273.75kgを捨てずにすむ。材料費を1kgあたり1,200円とすると、年32万8,500円分だ。

減らすことと、生かすこと

ロイヤルトン・シック・カンクンの料理人たちは、作りすぎを減らすだけでなく、出てしまった分を次の料理に生かした。データで「何が余るか」がわかると、余り方に合わせた料理を考えられる。食品ロスを減らす取り組みは、料理人の腕の見せどころにもなる。

持ち帰れる知識

  • 削減率は、金額で測ったか、重さで測ったかを確かめる
  • 何が余るかがわかると、余り方に合わせた料理を考えられる
  • つくり置きを、その場での調理に変えると、余りが減ることがある

宿で考えられること

  • 台に出す前に厨房で余る料理を、1週間記録してみる
  • 余りやすい食材の、次の使い道を決めておく
  • つくり置きの料理の一部を、その場での調理に変えられないか考えてみる

事業・予約への接続

客の前で料理をつくることや、余った食材を新しい料理に変えることは、客の楽しみにもなる。ケーススタディは、こうした工夫が客を驚かせ、喜ばせたと伝えている。

Sources / 参考情報

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