作りすぎた肉と野菜を、ラビオリに変える:メキシコ・カンクンの「ロイヤルトン・シック・カンクン」が、ビュッフェの食品ロスを56%減らした方法
メキシコのカリブ海側、カンクンのホテルが並ぶ地区に、「ロイヤルトン・シック・カンクン」がある。大人だけが泊まれる、食事や飲み物が料金にふくまれる「オールインクルーシブ」のリゾートだ。食品ロスを測る機器の会社 Winnow のケーススタディによると、456室に9つのレストランがあり、1日に4,000食を超える料理を出している。
リゾートを運営するブルー・ダイヤモンド・リゾーツは2025年7月31日、このうち一つのビュッフェで、6か月の試験導入のあいだに食品ロスを56%減らしたと発表した。この記事では、料理人たちが「作りすぎ」をどんな料理に変えたのかと、56%がどんな物差しの数字なのかを見ていく。
舞台は、ビュッフェ「エレメンツ」
試験の場所は、ビュッフェ「エレメンツ・グルメ・ビュッフェ」だ。発表によると、リゾートの1日4,000食の一部を出す、量の多い厨房だという。最初の目標は40%減だったが、結果は56%減だった。
発表は、オールインクルーシブのリゾートでは、店が多く、客も多いため、むだが生まれやすいと説明している。リゾートの食品ロスは、中価格帯や手ごろな価格のホテルより50%以上多く、1食あたり平均191グラムだという。
作りすぎを、別の料理に
Winnow のデータで見えたのは、ビュッフェの作りすぎだった。Winnow は、オールインクルーシブのリゾートでは、作りすぎが厨房のごみの23〜57%を占めるとしている。料理人たちは、次のように変えた。
- メキシコの朝食料理チラキレスを、前もってつくり置くのをやめ、客の前でその場でつくる
- 作りすぎた肉などのたんぱく質の料理や野菜を、ラビオリやカネロニに仕立て、新しいソースを合わせる
- 余ったパンは、従業員の食事やデザートに回す
- 果物の皮や野菜の切れ端は、ソースやシロップ、飲み物に使う。パイナップルの皮もその一つだ
料理長のフレディ・チー氏は、こう話している。「作りすぎた分を、ラビオリやカネロニのような料理に変える。データに導かれた創造性だ。ごみは、チャンスになる」。
料理人の時間も減った
グループの料理長クラウディオ・フローレス氏は、時間の変化をあげる。「仕込みの作業は減り、結果は良くなった。少ないもので、多くのことができるとわかった」。ケーススタディによると、むだな仕込みが減った分、料理人は盛りつけや新しい料理、客へのサービスに時間を使えるようになった。
総支配人のルイス・キンテロ氏は「お客さまは、食品ロスを減らす意味を理解している。持続可能性を大切にしているが、質も求めている。この試験で、どちらかをあきらめる必要はないとわかった」と話す。
結果の数字
ケーススタディは、結果を次の四つで示している。
- 食品ロスは、金額で56%減
- 年換算で16.5万米ドルの節約
- 年246.4トンの二酸化炭素に相当する排出を防ぐ
- 年14万食分の食べ物を守る
16.5万ドルを14万食で割ると、1食あたり約1.18ドルになる。246.4トンを14万食で割ると、1食あたり約1.76kgの二酸化炭素に相当する。14万食を365日で割ると、1日あたり約384食分だ。
目標の40%と比べると、結果の56%は16ポイント上回り、目標の1.4倍の減り方だった。しかも、これは9つのレストランのうち1つ、6か月の試験での数字だ。
費用の目安
Winnow のニュースによると、オールインクルーシブのリゾートで Winnow を使うと、ビュッフェの作りすぎが減り、食品の費用が2〜8%下がるのが一般的だという。年に500万ドルの食材を買うリゾートなら10万〜40万ドル、1,000万ドルなら20万〜80万ドルになる。同じニュースは、ホテル会社イベロスターが60を超えるリゾートで Winnow を使い、埋め立てに回すごみを80%以上減らしたとも伝えている。
56%は「金額」の数字
ここで注目したいのは、56%が「金額で」測った数字だということだ。同じ Winnow のケーススタディでも、香港のマンダリン オリエンタルの73%は「重さで」測っている。
金額で測ると、値段の高い肉や魚を減らした効果が大きく出る。重さで測ると、重い米や野菜を減らした効果が大きく出る。どちらが正しいということではない。けれども、二つの割合をそのまま並べて「どちらが上か」と比べることはできない。
広がり
ケーススタディによると、ブルー・ダイヤモンド・リゾーツは7つのブランドで80を超える施設を運営している。発表によると、取り組みはリゾートのほかのレストランにも広がり、ブルー・ダイヤモンド・リゾーツの3つの施設でも始まった。キンテロ氏は「このシステムを最初に入れたホテルとして、会社や業界の手本になった」と話している。
日本の宿に置き換えると
宿の夕食ビュッフェでも、作りすぎは起きる。ただし、一度ビュッフェ台に並べた料理を、ほかの料理に使い直すことは、衛生の面から勧められない。考えたいのは、台に出す前に厨房で余った分だ。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、夕食ビュッフェの厨房で、台に出す前の肉と野菜の料理が毎晩1.5kg余り、捨てているとする。年に547.5kgになる。このうち半分を、翌日のまかないや、パスタの具などに仕立て直せたとする。年273.75kgを捨てずにすむ。材料費を1kgあたり1,200円とすると、年32万8,500円分だ。
減らすことと、生かすこと
ロイヤルトン・シック・カンクンの料理人たちは、作りすぎを減らすだけでなく、出てしまった分を次の料理に生かした。データで「何が余るか」がわかると、余り方に合わせた料理を考えられる。食品ロスを減らす取り組みは、料理人の腕の見せどころにもなる。
持ち帰れる知識
- 削減率は、金額で測ったか、重さで測ったかを確かめる
- 何が余るかがわかると、余り方に合わせた料理を考えられる
- つくり置きを、その場での調理に変えると、余りが減ることがある
宿で考えられること
- 台に出す前に厨房で余る料理を、1週間記録してみる
- 余りやすい食材の、次の使い道を決めておく
- つくり置きの料理の一部を、その場での調理に変えられないか考えてみる
事業・予約への接続
客の前で料理をつくることや、余った食材を新しい料理に変えることは、客の楽しみにもなる。ケーススタディは、こうした工夫が客を驚かせ、喜ばせたと伝えている。
Sources / 参考情報
- Royalton Resorts(英文) - ロイヤルトン・シック・カンクン、AIで試験店の食品ロスを56%削減(2025年7月31日)
裏付け: 大人専用のオールインクルーシブ、9つのレストランの一つで6か月の試験・56%減、エレメンツは1日4,000食の一部を出す、チラキレスのその場での調理、ラビオリとカネロニ、リゾートの食品ロスは50%以上多く1食平均191グラム、キンテロ氏の言葉、14万食・246トン超、ほかのレストランと3施設に拡大 - Winnow(英文) - ロイヤルトン・シック・カンクンは、どうやって年14万食を守っているのか
裏付け: 456室・9つのレストラン・1日4,000食超、目標40%に対し56%、金額で56%減、年換算16.5万ドル、246.4トン、14万食、チー氏の言葉、パンを従業員の食事やデザートに、果物の皮や切れ端をソース・シロップ・飲み物に(パイナップルの皮)、フローレス氏の言葉、ブルー・ダイヤモンドは7ブランド80超の施設 - Winnow(英文) - オールインクルーシブのリゾートで食品ロス防止の計画をつくる
裏付け: チー氏は総料理長、データでビュッフェの作りすぎがいちばんの原因とわかった、作りすぎは厨房のごみの23〜57% - Winnow(英文) - 数字で見る:リゾートは Winnow で食品ロスと費用をどう減らしているか(2026年9月)
裏付け: オールインクルーシブで食品の費用2〜8%減、500万ドルで10万〜40万ドル・1,000万ドルで20万〜80万ドル、イベロスター60超のリゾートで埋め立て80%以上減、ロイヤルトンは456室・9店・4,000食超・3施設に拡大 - Winnow(英文) - ケーススタディ:マンダリン オリエンタル 香港
裏付け: 73%は重さで測った数字