2年で50トンの生ごみを、菜園の土に:スコットランドの「ザ・トリドン」が、敷地の中で堆肥をつくる方法
スコットランドの北西、高地地方に「ザ・トリドン」がある。公式サイトの歴史のページによると、1887年に、ラブレス伯爵が狩りの館として建てた。2004年に、ダン・ローズ=ブリストウ氏とロヘイズ氏の夫婦が事業を買い取り、いまも敷地に住みながら営んでいる。ホテルには18の部屋とスイートがあり、ほかに「ステーブルズ」や水辺の「ボートハウス」にも泊まれる。
敷地には、2エーカー(約0.8ヘクタール)の菜園がある。館を建てたときは、材料をすべて船で運び込み、菜園の土までアイルランドから運んだという。1999年、この菜園は、作物を育てるビクトリア朝の庭によみがえった。その菜園の土を、いまは厨房の生ごみが育てている。
年25トンの生ごみを、外に出さない
地元紙ロスシャー・ジャーナルの2023年4月の記事によると、ザ・トリドンでは、客の皿の残りと仕込みのくずから、年に25トンの生ごみが出ていた。それまでは手で混ぜる堆肥箱を使っていたが、より効率のよい方法に変えたいと考えた。生ごみを外の業者に運んでもらい、埋め立てられることも避けたかった。
2021年5月、英国の会社タイディ・プラネットの堆肥化装置「ロケット・コンポスター」を入れた。公式サイトの年表には、2021年の出来事として「すべての生ごみを処理するため、ロケット・コンポスターを設置」と書かれている。
装置の大きさ
タイディ・プラネットによると、入れた型「A900」は、長さが約4.0mある。1日に最大215リットルの生ごみを処理でき(量は条件で変わる)、約14日で堆肥になる。
電気の使用量は、平均で1週間に約64キロワット時とされる。1年52週で計算すると、約3,300キロワット時になる。装置を動かすにも、電気がいることは覚えておきたい。
2年で、何が変わったか
ホテル業界誌ホテル・スコットランドの2023年4月の記事によると、装置を入れて2年で、約50トンの生ごみを堆肥にした。できた堆肥は、2エーカーの菜園で、レストランの野菜を育てるのに使っている。
お金の面では、次の二つが変わった。
- 外の業者に生ごみを処分してもらう費用が、2年で約1万2,000ポンド減った
- 外から堆肥を買う必要がなくなった。以前は年に約2,500ポンドかかっていた
ごみの回収の回数も、2回から1回に減ったという。
「1万7,000ポンド」の中身
タイディ・プラネットが業界のニュースサイトに出した記事には、「1万7,000ポンドの節約」という見出しがついている。数字の中身を分けてみる。
処分の費用の1万2,000ポンドは「2年分」だ。1年あたりにすると約6,000ポンドになる。堆肥の2,500ポンドは「1年あたり」で、2年分なら5,000ポンドだ。二つを2年分でそろえて足すと、1万2,000+5,000=1万7,000ポンドになる。見出しの数字は、この合計だと考えられる。1年あたりにそろえると、約8,500ポンドだ。
数字の期間をそろえずに足すと、まちがった合計になる。見出しの大きな数字を見たら、何年分かを確かめたい。
18室で割らない
50トンを2年で割ると、1年に25トン、1日に約68キロになる。ここで「18室で割って、1室あたり何キロ」と計算したくなるが、それは正確ではない。生ごみは、18室のホテルだけでなく、ステーブルズやボートハウスの客、レストランやパブで食事をする人からも出るからだ。
堆肥は、取り組みの一つ
公式サイトの年表によると、ザ・トリドンは、暖房とお湯をバイオマスのエネルギーに切り替えた。2017年には、水をすべて敷地の井戸(ボーリングした穴)からくむようにした。英国の団体カーボン・トラストの炭素管理の計画も終えている。2026年には、ミシュランのグリーンスターを受けた。
オーナーのダン・ローズ=ブリストウ氏は「私たちは、すべての判断で、環境、社会への影響、経営のあり方を考えている。この装置は、私たちの持続可能性のパズルの大切なひとつだ」と話している。資源を自分たちで扱えるようになったことも、利点に挙げている。
日本の宿に置き換えると
堆肥化の装置は、処分の費用が減る一方で、電気代がかかる。両方を並べて考えたい。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、生ごみが1日15キロ出る宿を考える。1年で5,475キロだ。処分の費用が1キロあたり40円なら、年21万9,000円かかる。小さな堆肥化の装置を入れて、7割を宿の中で堆肥にできれば、処分の費用は15万3,300円減る。装置の電気を1週間30キロワット時、1キロワット時30円とすると、年4万6,800円かかる。差し引きで、年10万6,500円が浮く計算だ。装置の費用は別にかかる。
土に返す道を、敷地の中に
ザ・トリドンでは、厨房の生ごみが堆肥になり、菜園の土になり、野菜になって厨房に戻ってくる。ごみを外に運ぶ回数が減り、買っていた堆肥もいらなくなった。数字を読むときは、何年分か、どこから出たごみかを確かめると、その意味がよく見えてくる。
持ち帰れる知識
- 節約の数字は、何年分かをそろえてから足す
- 生ごみの量は、どこから出たかを確かめてから割る
- 堆肥化の装置にも電気がいる
宿で考えられること
- 1日の生ごみの量を、1週間はかってみる
- いまの処分の費用を、1キロあたりで出してみる
- できた堆肥を使える畑や庭が近くにあるか考えてみる
事業・予約への接続
厨房の生ごみが土になり、菜園の野菜になってレストランに戻る。この流れは、料理の背景として客に伝えられる話にもなる。
Sources / 参考情報
- Hotel Scotland(英文) - 敷地での堆肥化で、ザ・トリドンの節約が進む(2023年4月14日)
裏付け: A900を入れて2年で約50トン、2エーカーの菜園、処分費約1万2,000ポンド、回収を半分に、年約2,500ポンドの堆肥の購入がなくなった、炭素中立を目指す、2021年5月に設置、手で混ぜる堆肥箱から、年25トン(皿の残りと仕込み) - Ross-shire Journal(英文) - ザ・トリドン、敷地での堆肥化で1万2,000ポンドを節約(2023年4月13日)
裏付け: 2年で1万2,000ポンドと50トン、2021年5月、1日最大215リットル、年約2,500ポンド、年25トン、外の業者と埋め立てを避けたい - Recycling Inside(英文) - ロケット・コンポスターがザ・トリドンの1万7,000ポンドを節約(2023年4月13日、タイディ・プラネットが掲載)
裏付け: 見出しの「1万7,000ポンド」、約50トン、約1万2,000ポンド、回収を2回から1回に、年約2,500ポンド、ローズ=ブリストウ氏の言葉(すべての判断で環境・社会・ガバナンスを考える、パズルの大切なひとつ、資源を自分たちで扱える) - Tidy Planet(英文) - A900 ロケット・コンポスター
裏付け: 長さ約4.0m、1日最大215リットル(条件で変わる)、約14日で堆肥、平均で週約64キロワット時 - The Torridon(英文) - 歴史
裏付け: 1887年にラブレス伯爵が狩りの館として建設、2004年に夫婦が買い取り敷地に住む、材料は船で運び菜園の土はアイルランドから、1999年に2エーカーの菜園を復活、2021年にすべての生ごみを処理するためロケット・コンポスターを設置、バイオマスで暖房とお湯、2017年に水をすべて井戸から、カーボン・トラストの炭素管理の計画、2026年にミシュランのグリーンスター - The Torridon(英文) - 公式サイト
裏付け: ホテルは18の部屋とスイート、ステーブルズ、ボートハウス