GOAL 12 · TARGET 12.5 廃棄物・循環経済 3分 / 2093文字 約束とその後を並べる #237

開業1か月で90%、1年で93%と認証:カナダの「1ホテル・トロント」の約束と、そのあと

宿が「ごみを90%減らします」と約束したとき、その数字はいつ、どうやって確かめられるのだろう。

カナダ・トロントの「1ホテル・トロント」は、2021年に開業した112室のホテルだ。#106 では、この宿が生ごみを処理機で土に変え、館内の植物に返す仕組みを紹介した。今回は、宿が開業のときに掲げたごみの約束と、そのあとに公表された数字を、時間の順に並べてみる。

開業のときの、二つの約束

1ホテルズの公式サイトの読みもの「ごみを、急いで減らす」によると、宿はゼロ・ウェイスト(ごみを出さない)の取り組みとして、次の約束を掲げた。

  • 開業から1か月で、ごみ全体の90%超を埋め立てに回さない
  • 開業から1年で、93%超を埋め立てに回さず、ゼロ・ウェイストの認証を取る

カナダの環境ビジネスのニュースサイト「サステナブルビズ」の2021年8月18日の記事も、同じ90%と93%の目標を伝えている。

約束を支える五つの手

同じ読みものは、約束を守るための手を五つ挙げている。

  • 買う量を減らす:社内の注文の仕組み「1チーム・リチャージ」で、買う時点でごみを減らす。食事は注文を受けてから作り、繰り返し使える容器に詰める
  • 自然の材料を使う:地元の工房「ジャスト・ビー・ウッズィー」が、倒れたオークやカエデ、クルミの木で、いすやテーブルを作る。鍵や洋服かけ、ペンも、プラスチックではなく自然の材料にする
  • リサイクル:リサイクルの相手の会社「GFL」が、埋め立てに回さなかった割合をはかる
  • 堆肥:敷地の処理機が、1か月に1万2,000ポンド(約5.4トン)の生ごみを1,000ポンド(約450キロ)未満の堆肥にする
  • 圧縮:段ボールを機械で固めて、リサイクルの箱の場所を空ける

途中の数字は、83.45%

この読みものには、もう一つ数字がある。「現在の埋め立てに回さない割合は83.45%で、まだ伸びている。開業1か月の90%を達成するのが待ちきれない」。

約束の90%と並べて、途中の83.45%を書いているのは、正直な書き方だ。#106 で紹介した宿の発表には「85%超を見込む」という数字もあった。資料によって数字が違うのは、書かれた時期と、目標か実績かが違うからだ。

2024年には90%、認証は「取り組み中」

カナダ観光局が2025年3月に公開した事例紹介によると、1ホテル・トロントは2024年の時点で、ごみの90%を埋め立てから外している。1ホテルズのすべての宿は、毎月の影響を記録している。ごみの取り組みは、食品のごみに詳しい会社「フードプリント・グループ」と組んで進めている。

一方、同じ事例紹介は「これからの一歩」として、ゼロ・ウェイストの認証「TRUE」の取得に取り組んでいると書いている。開業1年での認証という約束は、2025年3月の時点では、まだ途中だったことになる。この記事を書いている時点で、取得の発表は見つけられなかった。

TRUEの運営団体GBCIによると、この認証を取るには、12か月の平均で、ごみの90%以上を埋め立て、焼却、環境への流出から外す必要がある。ある月に90%を超えるだけでは足りず、1年を通して保つ必要がある。

分けるのは、手間がかかる

カナダ観光局の事例紹介は、課題も書いている。一つは費用だ。土に返る素材や繰り返し使える品は、使い捨ての品より高いことが多い。もう一つは研修だ。高い割合を保つには、全員がごみを正しく分ける必要がある。分別には時間と手間がかかり、ほかの宿では見落とされがちだという。

捨てない工夫は、客室にも

カナダ観光局の事例紹介は、ごみの割合のほかにも、ものを捨てない工夫を挙げている。

  • 客室の水差しは、使い終えたワインのびんから作り、使い捨てのプラスチックを避ける
  • 客室には、紙のメモ帳の代わりに黒板を置く
  • 客が要らなくなった服を置いていく「1レス・シング」の仕組み。集めた服は地元の慈善団体に寄付し、2024年までに100キロを超えた

事例紹介によると、宿の担当者は「客は裏側をあまり見ない。だから、客がよりよい選択に加われる形を見せるようにしている」と話している。

日本の宿に置き換えると

割合の数字は、最後の数%ほど重い。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿が、年に20トンのごみを出すとする。埋め立てや焼却に回さない割合が83%なら、残りは3.4トン。90%なら2.0トン、93%なら1.4トンになる。83%から90%へは、割合では7ポイントの差だが、埋め立てや焼却に回る量は約4割減る。90%から93%へも、さらに3割減る。

だから、最後の数%には、新しい機械よりも、分ける人の手間と、仕入れの見直しが効いてくる。

約束と、その後の数字を並べる

1ホテル・トロントは、開業のときに具体的な数字を約束し、途中の83.45%も隠さずに書いた。そして2024年に90%に届き、認証にはまだ取り組んでいる。約束の数字だけでなく、途中と、その後の数字を並べて見ると、取り組みの本当の歩みが見えてくる。

持ち帰れる知識

  • 目標と途中の数字と実績は、時期を書いて分けて伝える
  • ゼロ・ウェイストの認証は、12か月の平均で90%以上が必要
  • 割合の最後の数%ほど、埋め立てや焼却に回る量は大きく減る

宿で考えられること

  • ごみを種類ごとに、毎月の重さで記録する
  • 回収の会社に、埋め立てや焼却に回らなかった割合を出してもらえるか聞く
  • 分別の研修を、新しく入った人にも繰り返す

事業・予約への接続

1ホテル・トロントは、目標の数字と途中の数字を、公式サイトで客に向けて書いている。約束を掲げるなら、途中の数字も一緒に伝えると、客の信頼につながりやすい。

Sources / 参考情報

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