取りつけて1時間で、隠れた漏れが見つかった:アイルランドの「ミドルトン・パーク・ホテル」の1日10万リットル
水道の請求書が高い。けれど、どこで水が消えているのかは分からない。そんな悩みを抱える宿は少なくない。
アイルランド南部、コーク県の町ミドルトンにある4つ星の「ミドルトン・パーク・ホテル」(いまの名前はタルボット・ホテル・ミドルトン)も、そうだった。アイルランドの宿の団体のサイトによると、79の客室と、18メートルのプールのある宿だ。
請求書は高いのに、中が見えない
水の見張りの装置をつくる会社スマートフローの事例紹介によると、ホテルは水道の請求が多すぎることに悩んでいた。そして、水をどれだけ使っているかを見たことがなかった。そこで、スマートフローに相談した。
スマートフローの装置は、建物の中の水の流れを24時間見張り、いつもと違う流れがあると知らせる。会社によると、人工知能(AI)のソフトを使い、本当に必要なときだけ知らせて、間違いの警報を減らすという。
1時間で見つかり、修理された
事例紹介によると、装置を取りつけて1時間で、建物の中の大きな隠れた漏れが見つかった。ホテルの保守の担当者がすぐに場所を突きとめ、直した。
その結果、1日に10万リットルの水が節約された。事例紹介は、これが積み重なると年に3,650万リットル、費用にして年に9万1,000ユーロの節約になるとしている。水の節約は77%と書かれている。
数字を、ほどいてみる
ここで、数字の性質を確かめておきたい。
まず、3,650万リットルは、1日10万リットルを365日続けた場合の数字だ。事例紹介も「積み重なると」「節約になる」と、これからの見込みとして書いている。1年分をはかった実績ではない。
次に、1日10万リットルを時間に直すと、1時間に約4,200リットル、1分に約70リットルになる。隠れた漏れとしては、とても大きい。
9万1,000ユーロを3,650万リットル(3万6,500立方メートル)で割ると、1立方メートルあたり約2.5ユーロになる。ただし、これは記事の数字から計算した値で、事例紹介は料金の内訳を書いていない。
最後に77%。もしこれが修理の前の使用量に対する割合なら、修理の前は1日約13万リットル、修理の後は約3万リットルという計算になる。つまり、宿が使っていた水の4分の3ほどが、漏れていたことになる。ただ、事例紹介は77%の分母をはっきり書いていない。
「見えない」が、いちばんの問題
ホテル・アンド・レストラン・タイムズの記事は、タルボット・コレクションの悩みを、スマートフローのほかの客と同じだったと書いている。水の使い方が見えない。管理できない。使用量を確かめたり減らしたりする簡単な方法がない、という三つだ。
スマートフローの最高経営責任者ホーガン氏は、同じ記事で「いちばんの目的は、グループの水の使用量を減らしながら、配管の漏れから建物を守る手伝いが簡単にできると示すことだった」と話している。漏れた水は、請求書だけでなく、建物そのものを傷めるからだ。
グループ全体へ
アイルランドのホテル業界紙「ホテル・アンド・レストラン・タイムズ」の2022年8月3日の記事によると、この結果を受けて、ミドルトン・パーク・ホテルの属するタルボット・コレクションは、スマートフローをグループのすべての宿に広げると決めた。
グループの持続可能性の担当者シウダ氏は、こう話している。「コークにあるミドルトン・パーク・ホテルで、水の使い方に問題があると伝えた。スマートフローは問題を見つけ、解決の手がかりをくれた。水の使い方も、すべて見えるようになった」。
名前の似た、別のホテル
スマートフローの事例の一覧には、名前のよく似た「ミッドランズ・パーク・ホテル」の事例も並んでいる。こちらは別のホテルで、数字も80%、年に2,190万リットルと違う。「漏れはないと思っていた」という言葉も、こちらのホテルの支配人のものだ。事例を引くときは、名前を一字ずつ確かめたい。
日本の宿に置き換えると
隠れた漏れは、トイレのタンクの中の小さな部品から、壁や床の下の配管まで、いろいろな場所で起きる。大きな装置がなくても、水道のメーターで確かめる方法がある。山梨県都留市の上下水道の案内によると、水道メーターには、水が通ると回る「パイロットマーク」がある。蛇口をすべて閉めているのにこれが回っていれば、敷地のどこかで漏れている可能性がある。宿なら、客も従業員も水を使わない深夜に見るとよい。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で、トイレ1台のタンクの中から1分に0.5リットルずつ水が漏れていたとする。1日に720リットル、1年で約263立方メートルだ。水道と下水を合わせて1立方メートル600円なら、年に約15万8,000円になる。小さな部品の交換で止まる漏れが、1年でこれだけの費用になる。
見えない水を、見えるようにする
ミドルトン・パーク・ホテルは、漏れを長いあいだ知らずにいた。請求書は「多すぎる」ことは教えてくれても、「どこで」は教えてくれない。水の流れを時間ごとに見ることで、隠れた漏れは見つけられる。
持ち帰れる知識
- 年の数字は、1日の数字を365倍した見込みのことがある
- 割合の数字は、分母が書かれているかを確かめる
- 名前の似た事例を、取り違えないようにする
宿で考えられること
- 深夜、だれも水を使わない時間に、水道のメーターを見る
- 毎月の水の量を、前の年の同じ月と比べる
- トイレのタンクの中の部品の点検を、年に一度の予定に入れる
事業・予約への接続
漏れを直すことは、客の目には見えない。けれど、漏れた水は建物を傷め、修理の費用もかさむ。水を見張る仕組みは、宿の建物と客の快適さを守る備えとして説明できる。
Sources / 参考情報
- SMART FLOW(英文) - ミドルトン・パーク・ホテルの事例(PDF)
裏付け: 4つ星、タルボット・コレクションの一員、水道の請求が多すぎた、使用量が見えなかった、取りつけて1時間で大きな隠れた漏れ、保守の担当者が直した、1日10万リットル、年に3,650万リットル・9万1,000ユーロになる見込み、77%、シウダ氏の言葉 - SMART FLOW(英文) - 事例の一覧
裏付け: ミドルトン・パーク・ホテル(77%、年に3,650万リットル、9万1,000ユーロ、すべての宿に拡大)、別のミッドランズ・パーク・ホテル(80%、年に2,190万リットル、「漏れはないと思っていた」の言葉) - Hotel and Restaurant Times(英文) - タルボット・コレクションがスマートフローと全国で協力(2022年8月3日)
裏付け: 77%、9万1,000ユーロ、3,650万リットル、全国への展開、24時間の見張り、AIで必要なときだけ知らせる、三つの悩み(見えない、管理できない、確かめる方法がない)、ホーガン氏の言葉、シウダ氏の言葉 - Irish Hotels Federation(英文) - タルボット・ホテル・ミドルトン
裏付け: コーク県ミドルトン、4つ星、79の客室、18メートルのプール、タルボット・コレクション - 都留市(日本語) - 水道メーターを定期的に確認し、漏水の早期発見を!
裏付け: 水が通ると回るパイロットマーク、蛇口をすべて閉めて回っていれば敷地のどこかで漏水の可能性