GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 4分 / 2205文字 まねる前に確かめる #240

1年で3,584立方メートル減、七つの工夫:フィリピンの「アニャ・リゾート・タガイタイ」と、まねる前に確かめたいこと

フィリピンの首都マニラの南、高原の町タガイタイは、涼しい避暑地として知られる。ここにある「アニャ・リゾート・タガイタイ」は、マカティから車で1時間あまりの、スイートの部屋が中心のリゾートだ。フィリピンの雑誌ピープルアジアの2026年の記事によると、客の99%はフィリピンの人だという。

アジアの持続可能な観光を伝えるサイト「アジア・サステナブル・トラベル」は2025年9月、アジアのホテルの水の取り組みを紹介する記事で、このリゾートを取り上げた。記事に並ぶ工夫は七つある。

七つの工夫

記事によると、リゾートの水の工夫は次のとおりだ。

  • 客室の水まわり:独グローエの節水の技術「エコジョイ」の器具を、すべてのスイートに入れた。1分あたり1.5ガロン(約5.7リットル)で、ふつうの2.5ガロン(約9.5リットル)より40%少ない
  • 人の多い共用の場所:センサーで動く蛇口と小便器。小便器は1回0.2ガロンで、センサーのない従来の型より87.5%少ない。蛇口の出しっぱなしも防ぐ
  • 漏れの点検:水の設備を細かく見張り、漏れをすぐに直す
  • トイレのタンクのびん:水を入れた750ミリリットルの使い終えたワインのびんを、トイレのタンクに沈める。1回に流れる水が約12.5%減る
  • タオルとシーツ:使い続けたい客に、部屋の案内で協力をお願いする
  • プール:細かい粒までこせる珪藻土のろ過機で、逆洗(ろ過機を洗う作業)の水と薬品を減らす。ポンプや噴水は、客が50%を超えるときだけ、時間を決めて動かす
  • はかる:場所ごとのメーターと請求書で、使い方の変化を追う

プールの薬品については、濃縮された質の高い薬品に替え、1回の消毒に4〜6キロ使っていたところを、700グラムから1キロにしたという。最大で83%の削減だ。

リゾートの支配人アマシオ氏は、シャワーについて「ふつうのブランドが1分2.5ガロンを使うのに対し、エコジョイは1.5ガロンで済む。シャワーのたびに40%少なくなる」と話している。

水の外でも、ピープルアジアの記事で総支配人のアリエット氏は「開業から、使い捨ての洗面用品は一度も使っていない。部屋では、詰め替えられる使用済みのびんを使っている」と話している。リゾートは2026年、持続可能な観光の認証団体グリーン・デスティネーションズのプラチナ認証を得た。

結果:1年で7%あまり

記事によると、リゾートの水の使用量は、2023年の4万9,307立方メートルから、2024年は4万5,723立方メートルに減った。差は3,584立方メートルだ。水の費用は、2023年と比べて2024年に61万8,000ペソ(約1万879ドル)以上減った。

4万9,307立方メートルに対する3,584立方メートルは、約7.3%にあたる。七つの工夫の一つひとつは40%や87.5%と大きいが、宿全体の水では7%あまりになる。器具ごとの割合は、その器具1回分の割合で、宿全体の割合ではないからだ。どの工夫がどれだけ効いたかは、記事には書かれていない。

8か月の数字を、1年と比べない

記事は、2025年8月までの使用量が3万1,418立方メートルで、さらに進んでいると書いている。

ただし、ここは気をつけて読みたい。3万1,418立方メートルは、8か月ほどの数字だ。1年の4万5,723立方メートルより少ないのは当然で、比べるなら、2024年の同じ月までの量と比べる必要がある。仮に1月から8月の8か月分だとすると、1か月あたり約3,900立方メートルで、2024年の1か月平均の約3,800立方メートルとほとんど変わらない。雨季や乾季、客の多い月で使う量は変わるので、月の平均だけでは判断できない。

タンクのびんは、日本ではまねしない

七つの工夫のうち、日本の宿がそのまままねしないほうがよいものがある。トイレのタンクのびんだ。

パナソニックの便器のよくある質問は、タンクに節水のためペットボトルなどを入れることは「できません」と答えている。流す水が少なくなると、汚れを流す力が大きく落ち、便器から見えなくなっても、建物の配管の中で少しずつ詰まるおそれがあるという。岡山県瀬戸内市の上下水道部も、詰まりの原因になるので入れないでほしいと呼びかけている。日本の便器は、もともと少ない水で流せるように設計されているものが多い。水を減らしたいなら、節水型の便器に替えるのが確実だ。

日本の宿に置き換えると

一方、シャワーの器具は、まねしやすい工夫だ。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿(年に5,110室泊)で、1室1泊あたりのシャワーの合計が10分だとする。1分9.5リットルのシャワーを5.7リットルの節水型に替えると、1室1泊で38リットル、1年で約194立方メートル減る。水道と下水で1立方メートル600円なら、年に約11万6,000円だ。シャワーのお湯をわかす燃料も減る。

ただし、宿全体の水が同じ割合で減るわけではない。厨房、洗濯、大浴場の水は、別に残る。

工夫の数より、はかること

アニャ・リゾートの七つの工夫の最後は「はかる」だった。器具を替えるだけでなく、毎年の量を比べ、費用に直して示している。七つを並べると目を引くが、宿全体で何%減ったのかを見ると、工夫の本当の大きさが分かる。

持ち帰れる知識

  • 器具ごとの「40%減」は、宿全体の40%減ではない
  • 途中の月までの数字は、前の年の同じ月までと比べる
  • 日本の便器メーカーは、タンクにびんなどを入れないよう呼びかけている

宿で考えられること

  • シャワーの1分あたりの水の量を、バケツと時計ではかる
  • 毎月の水の量を、前の年の同じ月と並べて記録する
  • 便器を替えるときに、節水型を候補に入れる

事業・予約への接続

アニャ・リゾートは、タオルとシーツの協力を、部屋の案内で客に伝えている。節水の器具は、水の勢いを感じてもらえるように選び、客に体験として伝えられる。

Sources / 参考情報

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