GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 4分 / 2122文字 「100%」の意味を見る型 #256

パネルは、ホテルから半マイル先の倉庫の屋根にある:米国ペンシルベニア州の「コートヤード・ランカスター」が「100%太陽光」と言える仕組み

米国ペンシルベニア州のランカスター。133室の「コートヤード・バイ・マリオット・ランカスター」は、2018年9月、「米国で初めて、電気の100%を太陽光でまかなうマリオットのホテル」になった。

ところが、このホテルの屋根を見上げても、太陽光パネルはほとんど見当たらない。2,700枚のパネルは、ホテルから約半マイル(約800メートル)離れた倉庫の屋根に並んでいる。この記事では、「100%太陽光」という言葉が何を意味しているのかを、発表の数字と州の電気の仕組みから読んでいく。

発電は124万kWh、使うのは118万kWh

ホテルを持ち、運営する地元の会社ハイ・ホテルズの発表を伝えた業界誌によると、数字は次のとおりだ。

  • 費用:150万ドル
  • パネル:2,700枚。広さは13万5,200平方フィート(約1万2,600平方メートル)で、アメリカンフットボールの競技場の2倍以上
  • 発電:年に123万9,000キロワット時
  • ホテルが使う電気:年に117万7,000キロワット時
  • 余った電気は、電力会社に売る

発電を使用量で割ると、約105%になる。差の6万2,000キロワット時が、1年で余る計算だ。ハイ社のサイトは、この発電量を「138軒の家の1年分」と説明している。

また、事業は州の金融機関から、太陽エネルギーの事業として50万4,900ドルの補助を受けた。費用の約3分の1にあたる。

なぜ、倉庫の屋根なのか

マリオットの発表によると、これだけのパネルを並べる広さは、ホテルの屋根にはない。そこで、ホテルと同じ業務用の団地にあり、同じ会社のグループが持つ倉庫の屋根を使った。空き地を切り開くのではなく、すでにある建物の屋根を使ったことになる。

地元のテレビ局は、「この仕組みのためには、ホテルと発電の場所が、およそ1マイル以内でなければならない」と伝えている。

ペンシルベニア州の規則には、こうした形を認める定めがある。同じ持ち主が持つ土地なら、2マイル以内で、同じ電力会社の区域にあるメーターの数字をまとめて計算できる。発電した場所と電気を使う場所が離れていても、請求書の上では一つとして扱える、という仕組みだ。

「100%」は、1年の合計の話

ここで、「100%太陽光」の意味がはっきりする。

パネルがつくった電気は、まず電力会社の送電網に流れ、メーターの数字として、ホテルの分に数えられる。地元のテレビ局の報道も、発電した電気が「メーターを通って送電網に送られ、ホテルの分として割り当てられる」と伝えている。

太陽光は、夜や雨の日には発電しない。その時間、ホテルは送電網から電気を受け取っている。「100%」とは、1年の発電の合計が、1年の使用の合計を上回っている、という意味だ。客が夜にシャワーを浴びるときの電気が、その瞬間に太陽からきているわけではない。

もちろん、これは仕組みとして正当なものだ。1年で使う分を超える電気を、再生可能エネルギーとしてつくっている。ただ、言葉の意味を知っておくと、ほかの「100%」の発表も読みやすくなる。

ロビーのメーター

ホテルのロビーには、パネルが今どれだけ発電しているかを示すメーターが置かれた。業界誌によると、2018年9月の式典では、電気が切り替わる瞬間に、明かりを演出として暗くした。社長は、客は設備の使い勝手に何の違いも感じない、と話している。

地元のテレビ局によると、ホテルは、この事業の前に、照明をLEDに替える工事も終えていた。総支配人は、太陽光が、それまでの環境の取り組みの「仕上げ」になると話している。先に使う電気を減らしておけば、それだけ少ないパネルで「100%」に届く。

回収の年数は、発表にない

インターネットでは、この事業が「7年で回収し、25年で350万ドルを節約する」と紹介されることがある。しかし、この数字は、ホテルやマリオットの発表、当時の業界誌の記事には見つからなかった。この記事では、回収の年数は書かない。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、年に15万キロワット時の電気を使う20室の宿が、1年の合計で「100%」を目指すとする。

  • 1キロワットのパネルが年に1,120キロワット時を発電するなら、必要な大きさは15万÷1,120=約134キロワット
  • 1キロワットに7平方メートルが必要なら、約940平方メートル。宿の屋根には収まらないことが多い
  • 先に照明や空調の省エネで使用量を2割減らせば、12万キロワット時。必要なパネルは約107キロワット、約750平方メートルになる

昼に発電した電気のうち、宿がその場で使えるのは一部で、残りは送電網に流れる。夜は送電網から買う。1年の合計で100%でも、毎月の請求書がゼロになるとは限らない。

言葉の中身を、仕組みで確かめる

コートヤード・ランカスターの「100%太陽光」は、離れた屋根でつくった電気を、1年の合計でホテルの分として数える仕組みだった。宿が再生可能エネルギーの取り組みを伝えるときも、「年の合計で」「どこで発電した電気か」を書き添えると、誤解を生まない。

持ち帰れる知識

  • 「100%太陽光」は、1年の発電の合計が使用の合計を上回るという意味のことが多い
  • 州の規則によっては、離れた場所のメーターをまとめて計算できる
  • 先に使う電気を減らすと、「100%」に必要なパネルが少なくてすむ

宿で考えられること

  • 1年の電気の使用量を、月ごとに表にする
  • 屋根に置けるパネルの大きさと、年の発電量の見込みを業者に出してもらう
  • 照明や空調の省エネを先に進め、使用量を減らしてから太陽光を考える

事業・予約への接続

ロビーの発電のメーターのように、取り組みを客に見せる工夫は話題になる。発信するときは、「年の合計で使用量を上回る電気を太陽光でつくっています」のように、数え方を添えると信頼につながる。

Sources / 参考情報

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