ごみの回収を減らす前に、2か月はかった:ボストンの「レノックス・ホテル」が、3つのレストランの生ごみを堆肥にまわし、のちに寄付も始めた方法
米国マサチューセッツ州のボストン。1900年に開業した「レノックス・ホテル」は、古い建物を大切にしながら、環境の取り組みでも知られてきた。1980年代からリサイクルを続け、屋上ではミツバチを飼っている。
2014年5月、このホテルは、館内の3つのレストランで出る生ごみを、ごみ箱に捨てずに堆肥にまわし始めた。州の資金で事業者を支援する「リサイクリングワークス・イン・マサチューセッツ」は、この取り組みを2016年と2019年の2回、事例として紹介している。この記事では、その2つの事例から、生ごみを分ける仕組みと、数字の読み方を見ていく。
作業台の小さな容器から始まる
2016年の事例によると、生ごみを集める仕組みは、とても単純だ。
- 厨房の作業台ごとに、透明なプラスチックの小さな容器を置き、下ごしらえや調理で出るくずを入れる
- いっぱいになったら、袋をかけた20ガロン(約76リットル)の緑のカートにまとめる
- 20ガロンのカートは、汚れた皿を置く台や皿洗いの場所の横にも置き、皿に残った食べ残しを落とす
- カートがいっぱいになったら外に運び、鍵のかかる64ガロン(約242リットル)のカートに移す。回収の会社が週に3回集め、農場で堆肥にする
街の中心にあるので、きれいで虫やネズミが寄らないことが大切だった。そこで、袋をかけて鍵のかかるカートを使っている。事例は、容器の大きさと置き場所が使いやすいことが、成功の理由の一つだと書いている。
アメリカの環境保護庁の2016年のセミナーの資料によると、始めて最初の2日間で、550ポンド(約250キログラム)の生ごみを分けることができた。
困ったこと:階段と、回収の回数
事例は、うまくいかなかった点も書いている。
一つは、小さなカートを、建物の出口まで階段で運ばなければならないことだ。重くなりすぎないよう、スタッフがカートの中の量を見ている。
もう一つは、ごみの回収の回数を、いつ減らすかだった。それまで、ごみとリサイクルの圧縮機は、週に2回決まった日に回収されていた。スタッフは、2か月のあいだ、重さと圧縮機の圧力を見続けてから、回収の回数を変えても大丈夫だと判断した。
結果として、ごみの回収は週2回から週1回へ、さらに必要なときだけ呼ぶ形に減った。
月164ドルは、生ごみだけの成果ではない
事例は、ごみにかかる費用の合計が、月に164ドル減ったと書いている。そのうえで、次のように注意している。
- 節約は、生ごみを分けたこと、リサイクルが増えたこと、外の人がごみ箱を使えないようにしたことが合わさった結果
- すべてを生ごみの分別のおかげとは言えない
- ごみの処理全体を見直したことが、すべての変化につながった
生ごみを分けると、堆肥の回収の料金が新しくかかる。それを、ごみの量と回収の回数が減った分で埋め合わせ、さらに少し余った、という読み方が正確だ。
週の量×52=年の量
2016年の事例によると、回収の会社は、レノックスから週に3,500ポンドの生ごみを集めている。2019年の事例では、ホテルの報告として週6,000ポンドに増えた。
2019年の事例には、「4年で、年の量が91トンから156トンに増えた」とも書かれている。計算してみると、3,500ポンド×52週=18万2,000ポンドで、アメリカのトン(2,000ポンド)にすると91トン。6,000ポンド×52週は156トンになる。つまり、年の量は、週の量に52をかけた数字だ。毎週の量をはかった合計ではない。
なお、2つの事例は、どちらも「始めたときから20%増えた」と同じ文で書いている。週3,500ポンドから6,000ポンドへの増え方は約7割なので、2019年の事例は、2016年の文をそのまま残したものと考えられる。
堆肥の次に、寄付
2019年の事例によると、2018年に、ホテルは取り組みを広げた。宴会の担当者と料理長が、堆肥にまわる生ごみの中に、まだ食べられる料理があることに気づいたのがきっかけだった。
ホテルは、リサイクリングワークスと大学の法律の相談窓口に相談して寄付についての疑問を解き、日付の表示や安全な保管の温度などの手順を、スタッフの研修に加えた。そして、地元の支援団体を通じて、月に最大80食分の料理を寄付するようになった。取り組みは、従業員の食堂と宴会の厨房にも広がっている。
堆肥にする前に、食べられるものは人に届ける。生ごみを分けて中身を見るようになったことが、次の一歩につながった。2016年の事例は、くずを見ることで、下ごしらえの方法を見直せるようになったとも書いている。
州の決まりと、日本の決まり
マサチューセッツ州では、2014年10月から、週に1トン以上の生ごみを出す事業者は、生ごみを処分場に送ってはいけなくなった。レノックスの週3,500ポンドは、アメリカのトンで1.75トンにあたる。
日本では、食品リサイクル法が、食品を扱う事業者に生ごみを減らし、再生利用することを求めている。食品廃棄物などを年100トン以上出す事業者は、毎年度、国に量と再生利用の状況を報告しなければならない。
日本の宿に置き換えると
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で、1週間の生ごみをはかったら52キログラムだったとする。
- 年の量:52キログラム×52週=約2.7トン
- 燃えるごみの回収が週3回、1回2,500円で、生ごみを分けたら週2回に減らせたとする。年に52回×2,500円=13万円の節約
- 生ごみの回収に週1回1,500円かかるなら、年に7万8,000円
- 差し引き:年5万2,000円
ただし、回収を減らせるかどうかは、ごみ置き場の大きさや夏のにおいでも変わる。レノックスのように、しばらく量をはかってから決めたい。
はかってから、変える
レノックス・ホテルは、生ごみを分ける仕組みを単純にし、回収の回数を変える前に2か月はかった。節約の額については、生ごみだけの成果ではないと正直に書いている。宿が取り組むときも、まず1週間はかることから始めたい。
持ち帰れる知識
- 生ごみを分ける容器は、作業台と皿洗いの場所の近くに置く
- 回収の回数を減らす前に、しばらく量をはかる
- 年の量が「週の量×52」で出されていることがある
宿で考えられること
- 1週間、厨房の生ごみの重さをはかる
- 作業台と皿洗いの場所に、生ごみ用の小さな容器を置く
- 近くに生ごみの回収や堆肥の受け入れ先があるか、自治体に聞く
事業・予約への接続
生ごみを堆肥にまわし、食べられる料理を寄付する取り組みは、宴会や会議の主催者に伝えやすい。伝えるときは、量をどう数えたか(はかった量か、週の量からの計算か)を添えると確かだ。
Sources / 参考情報
- RecyclingWorks in Massachusetts(英文) - 生ごみの堆肥化の事例:レノックス・ホテル(PDF)(2016年)
裏付け: 1900年開業、1980年代からリサイクル、屋上のミツバチ、2014年5月開始、3つのレストラン、作業台の透明な容器・20ガロンのカート・64ガロンの鍵つきカート・週3回、きれいで虫が寄らない、階段の課題、週2回の回収、2か月重さと圧力を見た、週3,500ポンド、20%増、週2回→週1回→必要なとき、月164ドル(生ごみ・リサイクル・外の人の利用をなくしたことの合計)、下ごしらえの見直し - RecyclingWorks in Massachusetts(英文) - レノックス・ホテルの事例 2019年版(PDF)(2019年)
裏付け: 4年で年91トンから156トン、週6,000ポンド、20%増、2018年に寄付を開始、宴会の担当者と料理長が気づいた、大学の法律の相談窓口、月に最大80食分、従業員食堂と宴会の厨房に拡大 - RecyclingWorks in Massachusetts(英文) - ホテルと観光業のためのごみ削減の手引き
裏付け: 年156トンを堆肥へ、月に最大80食分の寄付、ごみの回収の量と回数を減らした - U.S. EPA(英文) - ホテルと観光業の食品回収を増やす協力(セミナーの資料、PDF)(2016年)
裏付け: リサイクリングワークスと仕組みをつくった、3つのレストラン、最初の2日間で550ポンド - City of Boston(英文) - ごみゼロ計画の報告書(PDF)(2018年7月23日)
裏付け: 2014年10月から、週1トン以上の生ごみを出す事業者は処分してはいけない - 長野県 - 食品リサイクル法
裏付け: 食品関連事業者による再生利用の促進、年100トン以上の事業者は毎年度、発生量と再生利用の状況を報告