GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 4分 / 2147文字 雨以外の水を数える型 #260

雨が降らない夏も、水は集まる:「グランド・ハイアット・アトランタ」が冷却塔に足した、空調の結露の水と製氷機の水

米国ジョージア州アトランタの「グランド・ハイアット・アトランタ」が、屋根に降った雨をためて空調の冷却塔に使っていることは、#215で紹介した。技術部長が雨を見て「もったいない」と思い、計算から始めた話だ。439室のこのホテルは、2017年にアトランタ市長から水の節約の賞を受けている。

この仕組みには、雨のほかにもう二つ、水の入り口がある。客室の空調から出る結露の水と、製氷機の氷がとけた水だ。この記事では、この「雨ではない水」に目を向け、いつ、どれだけ集まるのかを、ホテルの記事と、テキサス州サンアントニオの水道局の資料から読んでいく。

「ケーキの上の飾り」

ホテル業界誌ホテルズの2013年6月の記事は、技術部長の雨水の計算を紹介したあと、こう書いている。

「雨水が中心だが、結露の水と製氷機の排水は、ケーキの上の飾りだ」

記事によると、ホテルは当時、製氷機の排水と、すべての空調機の結露の水の配管を、タンクにつなぐ工事をしていた。これで、夏のあいだ、1週間に冷却塔の2日分、約3万ガロン(約11万リットル)の水を集められる見込みだという。

これは、2013年の時点の見込みだ。その後、米国の水環境の専門家の団体の2018年の記事は、仕組みが実際に雨水、空調の結露の水、製氷機のとけた水を集め、8つのタンク(合わせて約11万3,500リットル)にためて冷却塔に送っていると伝えている。冷却塔は1日に4万5,400〜5万6,800リットルの水を使い、仕組みは1年を平均してその約3分の1をまかなう。この3分の1には、雨の水も結露の水も含まれている。

必要なときに、出てくる水

結露の水には、雨水にない利点がある。

サンアントニオ市の水道局の節水の担当者が、2009年の会議で使った資料は、空調の結露の水がよい理由として、まず「必要なときに出てくる」ことを挙げている。暑くて湿った日ほど、空調はよく動き、たくさんの結露の水が出る。そして、冷却塔が水をたくさん蒸発させるのも、同じ暑い日だ。

雨水は、雨の日にしか集まらない。夏に晴れが続くと、タンクは空になる。結露の水は、その晴れた暑い日に、毎日出てくる。

資料は、結露の水の質についても書いている。

  • 蒸留水に近く、浮いているごみが少ない
  • 中性から弱い酸性で、温度が低い
  • 汚れないように、空調の冷やす部分と受け皿を、ほこりやごみのないきれいな状態に保つことが大切

どれだけ出るのか

資料によると、結露の水の量は、空調の大きさ、どれだけ動いているか、外の気温と湿度で変わる。目安として、空調が1トン分(冷やす力の単位で、約3.5キロワット)を1時間動くと、0.1〜0.3ガロンの結露の水が出るという。

資料には、計算の例も載っている。

  • 500トンの空調機が、80%の400トン分で動く
  • 1トン・1時間あたり0.2ガロンとすると、1時間に80ガロン、1分あたり約1.3ガロン
  • 1日24時間・30日動いたとして、1か月で5万7,600ガロン

市の決まりと、実際の例

サンアントニオ市は、結露の水を集めることを建物の決まりにも入れている。資料によると、2006年1月1日以降に空調を入れる新しい商業の建物は、結露の水を、将来使えるように、ほかの排水とは別の1本の配管で集めなければならない。

資料は、実際の例も紹介している。

  • 市の公立図書館:2002年8月の1回の測定から、1日1,440ガロンを集められると見積もり、約2,400平方メートルの庭の水やりに使う。費用は2万1,500ドル
  • 中心部の大きな商業施設:4台の空調機の結露の水を冷却塔に使い、年に1,200万ガロンを集められる

また、資料は、タンクの大きさは使い道で決まると書いている。冷却塔のように毎日使い続けるなら、タンクは比較的小さくてよい。水やりに使うなら、夏の量と庭が必要とする量に合わせて大きくする必要がある。

同じサンアントニオのホテル「ホリデイ・イン」も、冷暖房の機械から出る結露の水を、庭の水やりに使っている(#258)。

日本の宿に置き換えると

日本の夏も、暑くて湿っている。空調の結露の水は、多くの宿で、そのまま排水に流れている。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿の空調が、夏の90日、1日10時間、平均して7トン分(約25キロワット)動くとする。

  • 1トン・1時間あたり0.2ガロンなら、7トン×10時間×0.2ガロン=14ガロン、約53リットル/日
  • 90日で約4.8立方メートル。1立方メートル600円で約2,900円

水道代としてはわずかだ。けれども、1日約53リットルは、夏の花壇や鉢植えの水やりには十分な量になりうる。そして、水やりがいちばん必要な晴れた暑い日に、いちばん多く出る。ためる容器を置くなら、結露の水の配管が外に出ている場所を探すところから始められる。

雨だけを数えない

グランド・ハイアット・アトランタは、雨水の仕組みに、空調の結露の水と製氷機の水を加えた。雨の少ない夏にも水が入ってくるので、冷却塔の水を1年を通してまかないやすくなる。宿で水を集めることを考えるなら、屋根の雨だけでなく、館内で毎日捨てている水も数えてみたい。

持ち帰れる知識

  • 空調の結露の水は、暑くて湿った日ほど多く出て、水が必要な時期と重なる
  • 目安は、空調1トン・1時間あたり0.1〜0.3ガロン
  • 結露の水を汚さないために、空調の冷やす部分と受け皿をきれいに保つ

宿で考えられること

  • 空調の結露の水の配管が、どこに出ているか確かめる
  • 夏の1日に、結露の水がどれだけ出るかバケツで測る
  • 花壇や鉢植えの水やりに使えないか考える

事業・予約への接続

館内で毎日捨てていた水を使う取り組みは、客や地域に伝えやすい。夏の庭の水やりに結露の水を使っているなら、庭の案内に一言添えると、宿の工夫が伝わる。

Sources / 参考情報

  • HOTELS(英文) - グランド・ハイアット・アトランタが雨水を集める(2013年6月19日)
    裏付け: 雨水が中心で結露の水と製氷機の排水はケーキの上の飾り、製氷機の排水とすべての空調機の結露の水をつなぐ工事中、夏は1週間に冷却塔の2日分・約3万ガロンを集める見込み
  • Water Environment Federation(英文) - ホテルのかんたんな雨水の仕組みが、地域の環境に役立つ(2018年2月26日)
    裏付け: 雨水・客室の空調の結露の水・製氷機のとけた水を集める、8つのタンクで約11万3,500リットル、冷却塔で蒸発、冷却塔は1日4万5,400〜5万6,800リットル、1年平均で約3分の1
  • San Antonio Water System(英文、RainHarvest に掲載の会議の資料) - 結露の水という新しい水(PDF)(2009年10月9日、節水の担当者)
    裏付け: 必要なときに出る・質が高い、蒸留水に近く浮遊物が少なく中性から弱酸性、冷やす部分と受け皿をきれいに、市の条例で2006年1月1日以降の新しい商業の建物に専用の配管、1トン・1時間あたり0.1〜0.3ガロン、500トン・80%・0.2ガロンで1時間80ガロン・月5万7,600ガロン、図書館の1日1,440ガロン・2万6,000平方フィートの庭・2万1,500ドル、商業施設の4台の空調機・年1,200万ガロンを冷却塔に、タンクの大きさは使い道で決まる
  • U.S. EPA WaterSense(英文) - ホテルが節水型の衛生器具を入れる(PDF)(2014年7月)
    裏付け: ホリデイ・イン・サンアントニオが冷暖房の機械の結露の水を庭の水やりに再利用
  • Hospitality Net(英文) - グランド・ハイアット・アトランタの客室の設備の更新(2017年5月18日)
    裏付け: 439室、2017年にアトランタ市長の水の節約の賞

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