生ごみを「水にする」機械は、どこへ流すのか:米チャールストンの「スペクテイター・ホテル」の6万1,000ポンドと、下水という行き先
米国サウスカロライナ州のチャールストン。古い街並みが残る中心部の、シティ・マーケットとフレンチ・クオーターが交わる角に、小さな高級ホテル「スペクテイター・ホテル」がある。
このホテルは2018年、食べ残しを埋め立てに回さない取り組みを始めた。使っているのは、敷地の中に置いた「ダイジェスター」と呼ばれる機械だ。生ごみを入れると、微生物が分解して液体にする。この記事では、ホテルが公表した数字を読み、分解された生ごみがどこへ行くのかを追ってみる。
微生物が、生ごみを液体にする
ホテル業界の専門メディア「ホテル・ダイブ」は、2023年9月8日の記事でこの機械を紹介している。
- 2018年から、リクープ・テクノロジーズ社のダイジェスターを使っている
- 従業員が、食べかけの料理を機械に入れる。機械の中の生きた微生物が分解し、水に変える。その水は下水に流れる
- 従業員は、生ごみをリサイクルの品や普通のごみと分けておき、1日を通して、たまった生ごみを機械に「食べさせる」
総支配人のカルロ・カロッチャ氏は、「堆肥づくりに似ているが、土ではなく水をつくる」と話し、費用の小さな投資で、ホテルの運営に大きな違いが生まれたと述べている。
チャールストンの観光局が2021年3月2日に公開した案内でも、果物やペストリーなどの食べかけを機械に入れていると紹介されている。
二つの時点の数字
ホテルの数字は、二つの記事に出てくる。
- 2021年3月の観光局の案内:2018年8月から、3万1,000ポンド(約14トン)以上を埋め立てに回さず、2,670ガロン(約1万100リットル)以上の水をつくった
- 2023年9月のホテル・ダイブ:6万1,000ポンド(約27.7トン)以上を埋め立てに回さず、5,000ガロン(約1万8,900リットル)以上の水をつくった
二つの記事のあいだは約2年半で、その間に約3万ポンド増えている。単純に割ると、1年に約1万2,000ポンド(約5.4トン)、1日に約15キログラムになる。ただし、記事の日付は掲載の日で、いつまでの量を数えたのかは書かれていない。目安として読みたい。
「埋め立てを避けた」生ごみは、下水へ行く
ここで考えたいのは、分解された生ごみの行き先だ。ホテルの説明では、「再利用できる水」は下水に流れる。ホテルの中で使い直すわけではない。
米国の環境保護庁(EPA)は2023年10月、食べ物のごみの扱い方を、環境への影響の順に並べた「ウェイステッド・フード・スケール」を出した。最も良いのは、食べ物のごみを出さないこと。その次が、寄付や、食べ物として作り直すことだ。
一方、いちばん下の段には、埋め立て、焼却と並んで、「下水に流す」が置かれた。EPAの報告書は、下水に流した食べ物は、ほかの汚水と一緒に処理場で処理されると説明し、下水道の中を運ばれる間にメタンが漏れることなどから、埋め立てと並んで排出が大きいとしている。報告書は、この「下水に流す」に、事前に砕くなどの処理をしたものも含めている。
この定義に当てはめると、生ごみを分解して下水に流す機械も、同じ段に入ると読める。「埋め立てを避けた」ことと、「環境への影響が小さい行き先を選んだ」ことは、同じではない。
日本では、下水に流す前に確かめる
日本の宿で同じことを考えるなら、まず下水道のルールを確かめたい。国土交通省の2005年の資料によると、生ごみを砕いてそのまま下水に流す「ディスポーザー」は、処理槽のついたものを除き、ほとんどの自治体が制限したり、使わないよう求めたりしてきた。東京23区では、条例の規程によって、処理槽のついたシステム以外のディスポーザーは設置できない。
機械の仕組みはちがっても、生ごみを下水に流すという点では、同じ問いになる。入れる前に、自治体の下水道の担当に相談するのが確かだ。
日本の宿に置き換えると
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で、朝食の食べ残しと下ごしらえのくずが1日9キログラム出るとする。1年で3,285キログラムだ。
- 堆肥の施設に回す:回収の費用が1キログラム40円なら、年13万1,400円
- その前に減らす:作りすぎを見直して3割減らすと、1日2.7キログラム、年985.5キログラムが減る。捨てていた食材の値段を1キログラム600円とすると、年59万1,300円
この仮定では、どの機械や行き先を選ぶかより、量を減らすほうが金額は大きい。
行き先まで書く
スペクテイター・ホテルは、2018年から5年ほどで、6万1,000ポンドの生ごみを埋め立てから外した。毎日の作業に無理なく組み込めたのは、学べる点だ。
それでも、「埋め立てを避けた」という数字だけでは、生ごみがどこへ行ったのかは分からない。生ごみの取り組みを伝えるときは、量と一緒に、行き先も書いておきたい。
持ち帰れる知識
- 「埋め立てを避けた」量は、行き先を示していない
- EPAの2023年の順位では、下水に流すことは、埋め立てや焼却と同じいちばん下の段にある
- 日本では、生ごみを下水に流す機器に自治体のルールがある
宿で考えられること
- 生ごみの量を1週間はかり、まず減らせる分を探す
- 生ごみの行き先(堆肥、飼料、焼却、下水)を書き出す
- 生ごみ処理の機械を考えるときは、自治体の下水道の担当に先に相談する
事業・予約への接続
生ごみの取り組みは、量の数字だけでなく、どこへ行き、何になったのかまで書くと、読む人に伝わりやすい。堆肥になって野菜を育てたのか、下水で処理されたのか。行き先を正直に書くことが、取り組みの信頼につながる。
Sources / 参考情報
- Hotel Dive(英文) - ホテルが食品のごみに取り組む3つの方法(2023年9月8日)
裏付け: 2018年からリクープ・テクノロジーズ社のダイジェスター、食べかけの料理、生きた微生物、再利用できる水が下水へ、6万1,000ポンド以上・5,000ガロン以上、総支配人カルロ・カロッチャ氏の言葉、従業員が分けて1日を通して入れる、小さな投資 - Explore Charleston(英文) - チャールストンの環境にやさしい旅の案内(2021年3月2日)
裏付け: 果物やペストリーなどの食べかけ、水は下水へ、2018年8月から3万1,000ポンド以上・2,670ガロン以上 - The Spectator Hotel(英文) - ホテルの紹介と環境の取り組み
裏付け: マーケット通り、シティ・マーケットとフレンチ・クオーターの角、敷地の中のダイジェスターで生ごみを埋め立てから外す - U.S. EPA(英文) - 畑からごみ箱まで:米国の食品のごみの扱い方の環境影響(第2部、PDF)(2023年10月)
裏付け: 11の扱い方、ウェイステッド・フード・スケール、下水に流すことと埋め立てはメタンの排出が大きい、下水の中でメタンが漏れる、砕くなどの事前の処理の有無を問わず「下水」に含める、処理場で汚水と一緒に処理 - U.S. EPA(英文) - EPAが食品のごみの新しい報告書と順位を公表(ニュースレター)(2023年10月19日)
裏付け: 堆肥化の順位を上げた、下水に流すことは埋め立て・焼却と同じいちばん下の段、出さないことが最も良い - 国土交通省 - ディスポーザー導入時の影響判定の考え方(PDF)(2005年7月)
裏付け: 処理槽付きを除き、ほとんどの自治体が制限または自粛を求めてきた - 東京都下水道局 - 「ディスポーザ排水処理システム」の設置について
裏付け: 東京23区では、条例の施行規程により、ディスポーザ排水処理システム以外は設置できない