GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 3分 / 2087文字 発電と使う時間を合わせる型 #264

屋根ではなく、駐車場に:米ベーカーズフィールドの「ハンプトン・イン」のソーラーカーポートと、「昼の発電、夜の充電」のずれ

米国カリフォルニア州のベーカーズフィールドは、ロサンゼルスから車で北へ2時間ほどの町だ。夏の昼間は、気温が華氏100度(約38℃)を超えることが多い。94室の「ハンプトン・イン&スイーツ・ベーカーズフィールド・ノース・エアポート」では、1日24時間、客室を快適に保つための冷暖房が、電気代のいちばん大きな部分を占めていた。

そこでホテルを運営する会社は、太陽光発電を考えた。選んだ場所は、屋根ではなく駐車場だった。米国エネルギー省(DOE)の「ベター・ビルディングス」が2015年に公開した事例をもとに、その理由と数字を読んでいく。

屋根に載せると、最上階を閉めることになる

事例によると、屋根にパネルを載せるには、工事の間、最上階の客室を閉める必要があった。その間の売り上げを失うことになる。駐車場の上に屋根をかけてパネルを載せる「ソーラーカーポート」なら、この問題を避けられ、客の車に日陰もできる。業界誌によると、日陰ができるのは30台分だ。

ただし、手続きは増えた。ホテルはヒルトンのブランドのフランチャイズなので、見た目を変えるにはヒルトンの承認が要る。また、地域の開発計画の区域にあるため、市の審査も受けた。どちらも順調に進んだという。

工事は駐車場の約75%を使ったが、ホテルは営業を続けた。ロビーに計画を説明する展示を置き、客はとてもよく理解してくれたと、事例は書いている。

事例の数字

  • 完成:2014年7月
  • 大きさ:102キロワット
  • 年の発電量:15万7,080キロワット時
  • 電気をまかなう割合:37〜44%
  • 月の電気代の節約:8,800ドル
  • 元が取れるまでの見込み:7.75年
  • 電気自動車(EV)の充電器:2基。将来は8基まで増やせる

1キロワットあたりにすると、年に約1,540キロワット時。日差しの強い土地らしい発電量だ。

月8,800ドルは、太陽光だけの数字か

ここで、割り算をしてみる。15万7,080キロワット時を12か月で割ると、1か月に約1万3,090キロワット時。月8,800ドルをこれで割ると、1キロワット時あたり約67セントになる。

米国エネルギー情報局(EIA)によると、カリフォルニア州の電気の平均の小売価格は、2024年で1キロワット時27.04セントだ。2014年より電気代がずっと上がった2024年でも、67セントの半分に満たない。

事例をよく読むと、「省エネの工事と合わせて、電気代の最大44%をまかなう見込み」と書いている。購入の資金にも、太陽光と省エネの工事の両方が含まれていた。月8,800ドルには、太陽光以外の効果も入っている可能性がある。資料からは、その内訳は分からない。

発電は昼、泊まり客の充電は夜

ソーラーカーポートとEVの充電器は、よく一緒に紹介される。ただし、泊まり客の車は、たいてい夕方に着き、夜の間に充電し、朝に出ていく。太陽光が発電するのは昼だ。電気をためる設備がなければ、夜の充電に使われるのは、ほとんど電力会社の電気になる。

2026年10月に報じられた、カリフォルニア州の遊園地「シックス・フラッグス・マジック・マウンテン」の巨大なソーラーカーポート(1万2,370キロワット)は、2,000キロワットで約4時間出せる、8,000キロワット時の蓄電池を備えている。電力会社の送電網ともつながったままで、発電が足りないときは電気を買い、余ったときは送り出す。発電と使う時間のずれを、ためる設備と送電網で埋める仕組みだ。

日本では、駐車場の太陽光に国の補助がある

環境省は、駐車場を使った太陽光発電と充電設備の導入を補助している。2025年度の公募では、太陽光の設備は、電気を変換する装置(パワーコンディショナ)の出力1キロワットあたり8万円の定額で、出力は10キロワット以上が条件だった。CO2を1トン減らすのにかかる費用の上限も決められている。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿の駐車場12台分に、30キロワットのソーラーカーポートをつくるとする。1キロワットあたり年1,050キロワット時を発電し、電気は1キロワット時30円とする。

  • 発電:年3万1,500キロワット時
  • 昼の厨房、洗濯、冷暖房で8割を使えば、2万5,200キロワット時、75万6,000円分
  • 費用を1キロワット35万円として1,050万円。補助を8万円×30キロワットで240万円とすると810万円。元が取れるまで約10.7年
  • 泊まり客のEVを年400回、1回20キロワット時充電すると8,000キロワット時。ほとんどが夜で、太陽光ではまかなえない

いつ発電し、いつ使うか

ハンプトン・インは、営業を止めずに太陽光を入れる方法として、駐車場を選んだ。屋根が使えない宿にとって、参考になる考え方だ。

一方で、節約の数字には省エネの効果が混ざっている可能性があり、EVの充電は夜に集まる。駐車場の太陽光を考えるときは、いつ発電し、いつ使うのかを、先に並べておきたい。

持ち帰れる知識

  • 屋根の工事が難しいときは、駐車場という置き場所がある
  • 節約額を発電量で割ると、太陽光以外の効果が混ざっていないか確かめられる。業者や報道の数字も、使う前に割り算で確かめたい
  • 太陽光の発電は昼、泊まり客のEVの充電は夜。ためる設備がなければ時間がずれる

宿で考えられること

  • 駐車場の台数と向きから、置けるパネルの大きさを業者に見積もってもらう
  • 昼の時間帯に、宿でどれだけ電気を使っているかを調べる
  • EVの充電器を置くなら、夜の充電の電気をどこから買うかを決める

事業・予約への接続

日陰のある駐車場とEVの充電器は、車で来る客にとって分かりやすい便利さだ。伝えるときは、太陽光の電気がどの時間に何に使われているかを正直に書くと、取り組みの中身が伝わる。

Sources / 参考情報

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