GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 3分 / 2034文字 電線のない宿の昼と夜を分ける型 #267

電線の来ない砂漠の宿は、夜をどうするか:チリの「ティエラ・アタカマ」の太陽光と蓄電池と、ディーゼル発電機の4年

南米チリの北部に広がるアタカマ砂漠は、世界でいちばん乾いた砂漠として知られる。その中のサン・ペドロ・デ・アタカマに、「ティエラ・アタカマ・ホテル&スパ」がある。

このホテルは、電力会社の送電網から遠く離れていて、電気を自分でつくってきた。使ってきたのはディーゼル発電機だ。ホテルの説明では、この砂漠では1年の約8割の日が晴れる。日差しは十分にあるが、太陽は夜には沈む。この記事では、ホテルが2013年と2017年の2回に分けて太陽光を入れた経過を、発表とあとの報告から読む。

#256 のランカスターのホテルは、送電網につながったまま、1年の合計で発電が使う量を上回った。電線の来ないホテルでは、話が変わる。

2013年:電池のない太陽光

太陽光の業界誌「pvマガジン」が2013年9月に載せた発表によると、ホテルは同年7月から、23キロワットの太陽光で発電を始めた。パネルは96枚で、年に4万6,000キロワット時をつくる計画だった。設計と工事は、ドイツのクラフトヴェルク社のチリの支社が担当した。

この設備には、電気をためる電池がなかった。太陽光と発電機を一緒に動かす制御装置を置き、昼は2台の発電機のうち1台だけを動かすようにした。のちの発表では、この設備が、昼に使う電気の最大半分をまかなってきたと説明している。

2017年:蓄電池で、発電機を止める

2017年、ホテルは設備を広げた。ドイツのエネルギー機関(dena)の資料によると、太陽光を133キロワット増やし、出力180キロワット、容量335キロワット時のリチウムイオン電池を加えた。この事業は、denaが進め、ドイツの経済エネルギー省が資金を出す、再生可能エネルギーの普及事業の見本に選ばれた。設備のお披露目は、2017年10月13日だった。

資料によると、中心は、二つの太陽光、蓄電池、発電機をまとめて動かすソフトウェアだ。これによって、ホテルは1日8〜9時間と、夜の数時間、発電機を完全に止められるようになった。発電機の騒音も減った。

見込みと、その後

2017年の発表は、次の見込みを挙げていた。

  • ディーゼルの使用を、年に60〜65%減らす
  • 燃料を年11万リットル以上、燃やさずにすむ
  • CO2を年320〜350トン減らす
  • 最初の投資は56万ドル

ホテルは2020年6月1日に、自社のサイトでその後を報告している。

  • この事業の前は、年に約19万リットルのディーゼルを使っていた
  • 今は、その量を半分に減らした
  • 2019年に減らしたCO2は250トン
  • パネルは今588枚で、蓄電池は1日約12時間、ホテルの電気をまかなっている

19万リットルの6割は11万4,000リットル、半分は9万5,000リットルだ。報告の「半分」と、見込みの「60〜65%」には差がある。CO2も、見込みの320〜350トンに対し、2019年は250トンだった。

ただし、ホテルの報告は「半分」という丸めた言い方で、正確な量は書いていない。パネルの数も確かめておく。ホテルの報告は2017年の枚数を「合計492枚」と書いている。一方、2017年に増やした133キロワットを、denaの資料にある1枚270ワットのパネルで割ると約492枚になり、2013年の96枚と足すと、今の588枚になる。492枚は、増やした分の枚数と読むほうが、資料どうしのつじつまが合う。

昼の電気と、夜の電気

送電網につながったホテルなら、昼に余った電気を送り出し、夜は電力会社の電気を使える。#264 で読んだ駐車場の太陽光も、昼の発電と夜の充電のずれを、送電網で埋めていた。

電線の来ないホテルでは、夜の電気は、ためた電気か、発電機でまかなうしかない。ティエラ・アタカマは、まず電池なしで昼の発電機を1台減らし、次に蓄電池で発電機を止める時間を延ばした。2段階で、ためる量を増やしていったことになる。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、送電線が届かず、発電機で電気をまかなう宿があるとする。使う電気は年6万キロワット時、発電機は軽油1リットルで3キロワット時をつくり、軽油は1リットル150円とする。

  • 今:軽油2万リットル、年300万円
  • 太陽光と蓄電池で、軽油を6割減らす見込みどおりなら:1万2,000リットル、180万円の節約
  • 実際は5割だった場合:1万リットル、150万円の節約

見込みと実際の差は、年30万円になる。燃料を運ぶ手間や、発電機の手入れが減ることも、金額とは別に考えたい。

2段階で、ためる量を増やす

ティエラ・アタカマの例は、電線の来ない宿で太陽光を入れるとき、昼と夜を分けて考える必要があることを教えてくれる。

最初から大きな設備を入れず、電池のない太陽光で経験を積んでから、蓄電池を加えたのも一つのやり方だ。入れたあとは、燃料の量を毎年記録しておくと、見込みとの差を確かめられる。

持ち帰れる知識

  • 送電網につながらない宿では、夜の電気をためるか、発電機に頼るかになる
  • 電池のない太陽光から始め、蓄電池を後から加えるやり方がある
  • 見込みと、あとで報告された実績を並べて読む

宿で考えられること

  • 燃料や電気を、時間帯ごとにどれだけ使っているかを調べる
  • 昼にまかなえる量と、夜にためる必要がある量を分けて見積もる
  • 入れたあと、燃料の量を毎年記録し、見込みと比べる

事業・予約への接続

発電機の音が夜に止まることは、客にとっても分かりやすい変化だ。電気をどうつくっているかを、昼と夜に分けて説明すると、取り組みの中身が伝わる。

Sources / 参考情報

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