屋上の草が伸びすぎると、発電は減る:ウィーンと香港の2026年の研究が示した、緑化と太陽光の「条件」
屋上を草花で覆い、その上に太陽光パネルを置く。草花がパネルを冷やし、発電が増える。#249 では、シドニーの二つのオフィスビルを比べた研究を読んだ。補正前の差は13.1%で、パネルのちがいなどを補正すると3.63%だった。
2026年には、この組み合わせを調べた研究が、ウィーンと香港から相次いで出た。どちらも、効果があることを示した。同時に、条件によっては効果が消えたり、逆になったりすることも報告している。この記事は宿ではなく研究を扱うが、屋上に太陽光を置く宿にも関わる話だ。
なぜ、草花でパネルが冷えるのか
太陽光パネルは、熱くなると発電の効率が下がる。香港の研究の論文は、パネルの温度が1℃上がるごとに、効率が0.1〜0.5%下がると、これまでの研究をまとめている。シドニーの研究の中心の研究者も、パネルは25℃を超えると効率が下がると説明していた。
草花は、葉から水を蒸発させるときに、周りの熱を奪う。また、コンクリートの屋上は日差しを吸って熱を放ち、パネルの周りを暑くする。草花で覆えば、パネルの下の空気が冷え、発電が増えると考えられている。
ウィーン:砂利の屋上を、後から緑化した
ウィーン工科大学の研究グループの論文が、学術誌『エナジー・アンド・ビルディングズ』の2026年7月の号に載った。
対象は、オーストリアで使われているオフィスビルの屋上だ。隣り合う二つの太陽光が並び、一方は砂利の屋上のまま、もう一方は後から薄い土の緑化をした。パネルの種類も並べ方も同じだった。
ところが、緑化する前に測ると、二つの太陽光の発電にはもともと差があった。主な原因は、影のかかり方のちがいだった。そこで研究者たちは、緑化する前のデータを使う方法や、影の計算を使う方法で、この差を補正した。
結果は、次のとおりだった。
- 2023年:結果がばらついた。草が伸びすぎたことや、設備の不具合で、一時的に緑化した側がマイナスになった
- 2024年3〜8月(緑化がよく手入れされていた期間):補正前は、緑化した側が2.99%多かった
- 補正後:0.95〜1.14%の増加
この増加には、緑化の効果だけでなく、緑化のためにパネルの架台を高くした効果も含まれる。論文の要点の一つは、「緑化の手入れをせず、草が伸びすぎると、発電の増加が逆になる」というものだ。
香港:組み合わせによって、結果がちがった
香港の研究グループの論文は、学術誌『リニューアブル・エナジー』の2026年7月の号に載った。蒸し暑い香港の屋上で、1年間、実物の大きさの設備を測った。
調べたのは、次の組み合わせだ。
- パネルの傾き:12度と22度
- パネルの高さ:0.6メートル、0.75メートル、0.9メートル
- 植物:3種類(セダムなど)
結果は、次のとおりだった。
- 最もよかった組み合わせは、ふつうの屋上の太陽光と比べて、年間の正午ごろの発電が最大3.7%多かった
- パネルの下の空気の最も高い温度は、4.6℃下がった
- ただし、すべての組み合わせが、ふつうの太陽光を上回ったわけではなかった
- 最もよかったのは、セダム・22度・0.6メートル。最も悪い組み合わせより、年の発電が6.7%多かった
論文は、これまでの研究と比べて、年の発電の増加は、気候にかかわらず、ふつうは約3%以下と、控えめだとまとめている。植物が育ちすぎたり、パネルの下の風の通りが悪くなったりすると、冷やす効果が打ち消されることがあるという。
二つの研究から分かること
ウィーンと香港の研究は、場所も気候もちがう。それでも、伝えていることは似ている。
- 増加はあるが、1〜3%程度と控えめ
- 手入れや設計を誤ると、増えないか、減ることもある
- 比べるときは、もともとの設備の差を補正しないと、効果を大きく見てしまう
日本の宿に置き換えると
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、宿の屋上に40キロワットの太陽光があり、1キロワットあたり年1,100キロワット時、合計4万4,000キロワット時を発電するとする。電気は1キロワット時30円とする。
- 緑化で発電が1%増える:年440キロワット時、1万3,200円
- 3%増える:年1,320キロワット時、3万9,600円
- 手入れが行き届かず、2%減る:年880キロワット時、2万6,400円の損
発電の増加だけで見ると、金額は大きくない。緑化をするなら、屋上の暑さを和らげる、雨水をためる、生き物を呼ぶといった、ほかの効果とあわせて考えたい。そして、草の手入れの手間と費用も、最初から見積もっておく必要がある。
植える前に、手入れを決める
二つの研究は、屋上の緑化と太陽光は「置けば効く」ものではないことを示している。植物の種類、パネルの高さ、そして草刈りの頻度。宿で考えるなら、植える前に、誰がいつ手入れをするかを決めておきたい。
持ち帰れる知識
- 太陽光パネルは、熱くなると効率が下がる
- 緑化による発電の増加は、1〜3%程度と控えめ
- 草の伸びすぎや、パネルの下の風通しの悪さで、効果は逆になりうる
宿で考えられること
- 緑化をするなら、草刈りの頻度と担当を最初に決める
- パネルの高さと、植える植物の種類を、設計の段階で検討する
- 発電量を緑化の前後で記録し、増えたかどうかを確かめる
事業・予約への接続
緑化した屋上は、手入れが行き届いていれば、宿の環境への取り組みとして見せやすい。発電の増加だけを強く言うより、暑さや雨水、生き物への効果とあわせて説明するほうが、実態に合う。
Sources / 参考情報
- Energy and Buildings(英文) - 屋上の緑化の改修による太陽光の発電の増加:設備の差を補正した複数年の実測(2026年7月1日、362巻)
裏付け: オーストリアの使用中のオフィスビル、隣り合う二つの太陽光、一方を緑化、同じパネルと並べ方、緑化前の差は主に影、補正の方法、2023年は草の伸びすぎと不具合で一時マイナス、2024年3〜8月の補正前2.99%、補正後0.95〜1.14%、架台を高くした効果を含む、手入れ不足と伸びすぎで効果が逆に、測定データはASFINAG社のもの - reposiTUm(ウィーン工科大学、英文) - 同論文の記録
裏付け: 著者4人、ウィーン工科大学の生態的な建築技術の研究部門、査読あり、2026年7月1日 - Renewable Energy(英文) - 屋上の緑化と太陽光の設計の比較:亜熱帯の気候での1年間の実測(2026年7月15日、268巻)
裏付け: 香港で1年間の実測、傾き12度・22度、高さ0.6・0.75・0.9メートル、植物3種類、年間の正午ごろの発電が最大3.7%増、パネルの下の空気が4.6℃低下、上回らない組み合わせもあり、セダム・22度・0.6メートルが最良で最低より6.7%高い、年の増加はふつう約3%以下、温度1℃で効率0.1〜0.5%低下、植物の成長と風通しで効果が打ち消される - UTS(英文) - 屋上緑化と太陽光パネルの比較研究の報告書(PDF)
裏付け: シドニーの二つのオフィスビル、補正前13.1%、補正後3.63%(#249 で紹介) - UTS(英文) - 屋上緑化か太陽光か?両方がいちばん(2021年8月)
裏付け: パネルは25℃を超えると効率が下がる(研究者の説明)