GOAL 12 · TARGET 12.3 食品・フードロス・堆肥 4分 / 2195文字 何の半分かを読む型 #271

「半分」は、重さの半分か、1食あたりの半分か:英国・アイルランド・北欧のマリオット53軒が食品ロスを減らした記録を、時系列で読む

英国、アイルランド、北欧にあるマリオット・インターナショナルの直営のホテル53軒が、食品ロスを半分に減らした。2025年、食品ロスを測る仕組みを提供する英国の会社ウィノウは、こう発表した。英国のホテル業界で、この規模の成果は初めてだという。

捨てたものをはかる仕組みは、#002 のフジャイラのホテルや、#218 のリスボンのマリオットでも紹介した。この記事では、1軒ではなく53軒の取り組みを、発表された順に並べて読む。すると、「半分」という言葉の中身が、発表によって少しずつちがうことに気づく。

2023年9月:認証を目標にする

食品ロスの国際的な認証「ザ・プレッジ」の発表によると、この地域のマリオットは2023年9月、直営の55軒すべてでこの認証を取る目標を立てた。料理長や料飲部門の責任者など120人を超える人が、準備の研修を受けた。認証には95の基準がある。

2024年10月:最初の半年で25%

2024年10月、マリオットは、2024年の最初の6か月で食品ロスを25%減らしたと発表した。53軒の厨房には、ウィノウの装置が入った。

英国の出張者向けの雑誌『ビジネス・トラベラー』の記者は、その仕組みをこう伝えている。

  • カメラ、はかり、AIの半導体でできている
  • ごみ箱に食べ物を捨てるたびに写真を撮り、種類と量を見分ける
  • 登録された価格から、捨てた食べ物の金額を出す
  • 翌日、厨房に報告が届く

ただし、当時の装置は、一度に捨てた複数の種類の食べ物を見分けられなかった。英国式の朝食の残りのように、いろいろな料理が混ざったものは正確に測れない。そこで、スタッフは食べ物の種類ごとに分けてから捨てるよう教えられていた。

同じ記事で、地域の責任者は、魚料理の魚の大きさや、戻ってくる皿の量を見て、メニューを見直していると話している。

旅行業界のメディア『トラボリューション』によると、この25%は、CO2に直して486トンにあたるという。

2024年11月:認証と、「1食あたり25%」

2024年11月、ザ・プレッジは、55軒のうち53軒がゴールド、2軒がシルバーの認証を取ったと発表した。この発表では、成果を「1食あたりの食品ロスを25%減らした」と書いている。これは、21万5,900食分以上にあたり、CO2で415トンを避けたという。食べ物を無駄にしない料理も、121品がメニューに加わった。

同じ25%でも、マリオットとトラボリューションは486トン、ザ・プレッジは415トンと、CO2の数字がちがう。対象の軒数(53軒と55軒)や計算の方法がちがう可能性があるが、発表からは分からない。

2025年4月:1食あたり51%

2025年4月、ウィノウは、53軒が食品ロスを50%減らす目標を達成したと発表した。地域の責任者は、こう話している。「調理の前と、客の皿の両方の食品ロスを測り、1食あたりのグラム数で、全体として51%減らした」。

2025年9月:「重さで50%」

2025年9月、ウィノウはこの取り組みを改めて紹介した。この記事では、目標を「53軒すべてで、食品ロスを重さで50%減らす」と書いている。装置は、2か月かからずに53軒すべてに入った。月ごとの順位表で、ホテルどうしが競い合ったという。

ホテルごとの例も挙がっている。ロンドンのカナリー・ワーフのホテルは、朝食のビュッフェを作り直し、6か月で67%減らした。ロンドンのカウンティ・ホールのホテルは、ビュッフェをやめて一品ずつの注文にし、小さめの量も選べるようにして、年4万7,000ポンドを節約したという。

「重さ」と「1食あたり」はちがう

ここで、二つの言い方を比べたい。「重さで50%」は、捨てた食べ物の合計の重さが半分になったという意味だ。「1食あたり51%」は、捨てた量を出した食事の数で割った値が半分になったという意味だ。

食事の数が変わらなければ、二つはほぼ同じになる。しかし、客が増えたり減ったりすると、二つは離れる。また、どの時点と比べたのかも、発表には書かれていない。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、宿のレストランが年1万5,000食を出し、1食あたり120グラムを捨てているとする。年に1,800キログラムだ。

  • 翌年、客が増えて1万8,000食になり、1食あたり60グラムになった場合:合計1,080キログラム。1食あたりは50%減、重さは40%減
  • 翌年、客が減って1万2,000食になり、1食あたり75グラムになった場合:合計900キログラム。重さは50%減、1食あたりは37.5%減

捨てた食べ物を1キログラム1,000円とすると、1,800キログラムは180万円、1,080キログラムは108万円、900キログラムは90万円になる。

測り方を決めてから、目標を立てる

53軒の記録は、厨房ごとに測り、毎月比べ、メニューを変えていけば、大きな組織でも食品ロスを減らせることを示している。一方で、「半分」が重さか1食あたりか、何と比べたのかは、発表によって書き方がちがった。

宿で目標を立てるなら、まず、重さと1食あたりのどちらで測るか、いつと比べるかを決めておきたい。両方を記録しておけば、客の数が変わっても、成果を正しく説明できる。

持ち帰れる知識

  • 「重さ」と「1食あたり」の削減率は、客の数が変わると離れる
  • 同じ取り組みでも、発表によって数字の書き方がちがうことがある
  • 装置で測るときも、混ざったごみは分けてから捨てる工夫が要る

宿で考えられること

  • 捨てた量の合計と、1食あたりの量の両方を記録する
  • 比べる基準の時期を、最初に決めておく
  • 戻ってくる皿の多い料理から、量やメニューを見直す

事業・予約への接続

小さめの量を選べるメニューや、一品ずつの朝食は、食べきれる量を選びたい客にも分かりやすい。取り組みを伝えるときは、何の何%かを添えると、信頼につながる。

Sources / 参考情報

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