GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 4分 / 2324文字 漏れを外して効果を測る型 #277

節水したのに、水の量はほとんど減らなかった。サラゴサのホテルで、見えない漏れが数字を隠していた

スペイン北東部の街サラゴサにある4つ星のホテル「シルケン・レイノ・デ・アラゴン」は、2009年に客室と共用部の水まわりを節水型に替えた。ところが、改修の前と後の1年間の水の量を比べると、減り方はわずかだった。

なぜか。サラゴサ大学と地元の企業の連携から生まれた研究が、2013年に国際的なホテル経営の学術誌に論文として発表され、その理由を明らかにしている。この記事では、その論文を読んでいく。

どんなホテルか

論文によると、ホテルは1996年に開業した。

  • 117室、191ベッド、従業員53人
  • 客の中心は出張の人
  • プールはなく、洗濯は外に出している

何を替えたか

改修は2009年の3月から5月に行われた。

  • 洗面台とビデの水栓に、節水のカートリッジと、毎分6リットルに抑えるエアレーター(泡沫器)
  • シャワーは毎分9リットル
  • 2009年10月には、厨房で食器を下洗いするシャワーを毎分9リットルにし、宴会用の食器洗い場の流量の調整を替えた

前と後を比べるだけでは、分からなかった

ホテルの水の量は、改修前の2008年には1日5万975リットル、改修後の2010年には1日3万9,118リットルだった。ただ、客の数で割ると、客1人あたり396.5リットルから378.6リットルへ、5%ほどしか減っていない。

理由は、見えない漏れだった。冷却の設備が壊れて冷水が漏れていたことが、2010年10月5日に見つかり、修理された。漏れの量も期間も分からなかったため、研究者たちは記録から推計した。その結果、漏れは2008年の初めごろから続き、1日1万3,986リットルにのぼり、水の量を31.27%押し上げていた。

改修による節水と、漏れによる無駄が、同じ時期に重なっていた。そのため、前と後を単純に比べても、節水の効果は隠れてしまっていた。

1,703日の記録から、効果を取り出す

研究者たちは、2006年8月1日から2011年3月30日までの1,703日の記録を使った。ホテルの保守の担当者が、冷水と温水のメーターを毎日読んで残したものだ。週末や祝日は数日分をまとめた記録しかない日もあり、使えたのは995日分だった。

水の量は、季節や客の数、宴会の人数によって変わる。研究者たちは、こうした要素の影響を取り除き、漏れの分も別に分けたうえで、改修だけの効果を計算した。

取り出された効果

結果はこうだった。

  • 水の量は全体で21.5%減った。温水は33.19%、冷水は17.63%減った
  • 1日あたり、冷水は3,402リットル、温水は2,767リットル減った
  • 客1人あたりでは、321リットルから252リットルに減った
  • 温水は、客1人あたり49.5リットルから27.5リットルに減った

温水が減ると、水を温めるガスも減る。12年間で見込まれる節約額の合計は14万6,482ユーロで、そのうち水が8万8,369ユーロ、ガスが5万7,350ユーロ、電気が763ユーロだった。

水の半分は、客室の外で使われていた

研究者たちは、客室2室にもメーターを付けて測った。客室での使用量は、客1人あたり1日124.3リットルだった。そこから計算すると、ホテルの水の50.7%は、客室の外の共用部、つまり受付や厨房などで使われていた。

客室だけを節水しても、半分には届かない。厨房の下洗いや食器洗い場まで替えたことが、この結果につながったと考えられる。

小さな費用で、大きな見返り

論文は、12年間のお金の見返りも計算している。

  • このホテルは、古い水栓を替える時期に合わせて節水型を選んだ。そのため、ふつうの水栓との差額だけを費用とし、2,057ユーロになった。見返りの率は7,022%
  • 今ある水栓に節水の部品を付け、部品代と工事費をすべて払う一般的な場合でも、費用は1万987ユーロで、見返りの率は1,233%

マヨルカ島のホテルを調べた2019年の別の論文によると、エアレーターや節水シャワーのような基本的な節水策の費用は、ふつう2か月から3年で回収できる。同じ論文は、場所ごとに水の量を測ることを、もう一段進んだ対策に分類している。

街の動きと重なる

サラゴサの街では、1996年から「節水の街」という取り組みが続いている。欧州環境機関(EEA)によると、市民1人1日の水の量は、1980年の180リットルから、2010年には105リットルに減った。スペインの統計局(INE)によると、2022年の国の家庭の平均は1人1日128リットルだ。

ホテルの客1人あたりの量は、家庭の2倍以上になる。だからこそ、ホテルの節水には意味がある。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、1日に8立方メートルの水を使う宿を考える。

  • 節水の部品で10%減らすと、1日7.2立方メートルになるはずだ
  • 同じ時期に、毎分1リットルの見えない漏れが始まったとする。1日1.44立方メートルになる
  • メーターの数字は1日8.64立方メートル。改修前より8%増えて見える
  • 漏れだけで年に約526立方メートル。水が1立方メートル600円なら、年約31万5,000円分になる

漏れを見つけなければ、「節水の部品は効かなかった」と誤って判断しかねない。

測り方が、投資を守る

サラゴサのホテルの例は、節水の部品の効果だけでなく、測り方の大切さを教えてくれる。冷水と温水を分けて毎日メーターを読み、記録を残していたから、あとから漏れを外して効果を確かめられた。

宿でも、メーターを定期的に読み、急に増えたら漏れを疑う。それが、節水の投資を正しく評価する土台になる。

持ち帰れる知識

  • 前と後を比べるだけでは、効果を見誤ることがある
  • 水の半分は、客室の外で使われていることがある
  • 冷水と温水を分けて毎日測ると、あとから原因を探せる

宿で考えられること

  • 水のメーターを決まった時刻に読み、記録する
  • 使用量が急に増えたら、漏れを疑って点検する
  • 客室だけでなく、厨房の下洗いや食器洗いも見直す

事業・予約への接続

節水の効果を数字で示すには、測り方が大切だ。記録が残っていれば、取り組みを客や取引先に説明しやすくなる。

Sources / 参考情報

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