GOAL 12 · TARGET 12.3 エネルギー・脱炭素 4分 / 2569文字 減らした量の換算を読む型 #279

18万4,000キロの食品ロスを減らした。それは何食分で、どれだけのCO2か。フォーシーズンズの数字の読み方

世界でホテルを展開するフォーシーズンズは、2023年の取り組みの報告書で、食品ロスについてこう書いている。

「この取り組みで、18万4,000キロを超える食品ロスを減らした。52万食分を超え、460トンのCO2の排出を避けたことに相当する」

大きな数字だ。ただ、「何食分」「CO2何トン」という言いかえは、使う物差しによって変わる。この記事では、フォーシーズンズと、同じ仕組みを使うホテルの発表を並べて、数字の読み方を考える。

フォーシーズンズの目標と仕組み

報告書によると、フォーシーズンズは、2019年を基準にして、2030年までに食品ロスを半分にすることを目標にしている。国連のSDGsのターゲット12.3に沿った目標だ。報告書の時点で、ホテルは128軒、47か国にあり、600を超えるレストランとバー、100を超える社員食堂を対象にしている。

取り組みは、三つの段階で進んだ。

  • 人を育てる:2022年、すべてのホテルで、料理と飲み物の部門の責任者が少なくとも1人、食品ロスを減らすための研修を終えた。2023年には部門の全員に広げ、3,000人を超える社員が研修を終えた
  • 基準を作り直す:2023年、自然保護団体のWWFと2022年のデータを分析し、世界全体の基準となる数字を作り直した
  • 測る:すべての施設に、AIで捨てた食品を測る仕組みを入れることを決めた。カメラとはかりで、何をどれだけ捨てたかを記録する。使う仕組みは、ウィノウ、ルミティクス、キトロの3社のもの

18万4,000キロという数字は、この「測る」取り組みの成果として書かれている。

書かれていないこと

ただし、報告書には、この数字について書かれていないことがある。

  • いつからいつまでに減らした量なのか
  • 何と比べて減ったのか(たとえば、導入前の量と比べたのか)
  • いくつの施設の合計なのか

目標は「2019年と比べて半分」だが、18万4,000キロがその目標に対してどこまで進んだことを示すのかは、この数字からは分からない。

1食は何グラムか、1キロは何キロのCO2か

報告書の数字どうしを割ってみる。

  • 18万4,000キロ÷52万食で、1食あたり約354グラム
  • 460トン÷184トンで、食品1キロあたり約2.5キロのCO2

同じウィノウの仕組みを使う、ほかのホテルの発表と比べてみよう。

フォーシーズンズ・ニューオーリンズ(ウィノウの発表、2024年8月)

  • 2023年7月に導入し、捨てる量が48%減った
  • 年に11トンの食品ロス、46トンのCO2、2万7,000食分、6万5,000ドル分を減らした

割ると、1食あたり約407グラム、食品1キロあたり約4.2キロのCO2になる。

インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(IHG)(ホテル業界の専門サイトの記事、2024年12月)

  • 2023年に41軒で、約19万7,312キロの食品ロスを減らした。49万3,279食分に相当する

割ると、1食あたり約400グラムになる。

物差しがちがうと、言いかえも変わる

1食あたりの重さは、約354グラムから約407グラムまで幅がある。CO2は、食品1キロあたり約2.5キロと約4.2キロで、2倍近いちがいがある。

なぜちがうのか、発表には書かれていない。考えられる理由はいくつかある。肉の多い料理と、米や野菜の多い料理では、作るときに出るCO2がちがう。捨てた食品のCO2を、育てるところから数えるのか、ごみとして処理するところだけを数えるのかでも変わる。ニューオーリンズの「トン」がどの単位かも書かれていないので、ここでの割り算は目安だ。

つまり、「何食分」「CO2何トン」は、減らした重さを分かりやすく言いかえた数字だ。異なる発表どうしを、言いかえた数字で比べるのは難しい。比べるなら、減らした重さそのもので比べたい。

「50%減」の中身も確かめる

もう一つの例がある。コスタリカのフォーシーズンズ・リゾート・ペニンシュラ・パパガヨは、2022年8月にウィノウを入れた。ウィノウの事例資料によると、2022年12月までの4か月で、二つの厨房で食品ロスが50%減り、4万食分、4万6,000ドルを節約した。

この資料では、50%は「金額で」の減少と書かれている。重さで50%減ったとは書かれていない。高い食材を捨てなくなれば、重さより金額が大きく減ることもある。「何%減」と聞いたら、重さか金額かを確かめたい。

現場では何が変わったか

ニューオーリンズでは、毎日の記録から、米と豆がいちばん多く捨てられていることが分かった。豚肉やひき肉のような高い食材も捨てられていた。厨房は作る量を見直し、在庫の管理を改め、残った食材を別の料理に作り替えるようになった。

スイスのフォーシーズンズ・ホテル・デ・ベルグ・ジュネーブは、2023年に食品ロスを20%減らした。報告書によると、よく捨てられる品をビュッフェから減らしたり、外したりした。

マドリードのフォーシーズンズは、ウィノウの発表(2024年10月)によると、6か月で食品ロスを30%減らした。年に8万8,000ユーロ、45トンのCO2、2万6,000食分を減らせるとしている。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、宿のレストランが、1年で食品ロスを1.5トン減らしたとする。

  • フォーシーズンズ全社の数字から出した1食約354グラムで割ると、約4,240食分
  • ニューオーリンズの数字から出した1食約407グラムで割ると、約3,690食分
  • CO2は、食品1キロあたり2.5キロなら約3.75トン、4.2キロなら約6.3トン

同じ1.5トンでも、物差しによって「何食分」は550食ほど、CO2は2.5トンほど変わる。発表するときは、使った物差しを書き添えると、数字が誤解されにくい。

重さを測り、物差しを書く

フォーシーズンズの18万4,000キロは、測る仕組みを全社に広げた成果だ。その数字を生かすには、いつの、何と比べた、どこの数字なのかを添える必要がある。

宿で食品ロスを減らしたときも、まず重さを測る。そのうえで、何食分やCO2に言いかえるなら、物差しを一緒に示したい。

持ち帰れる知識

  • 「何食分」「CO2何トン」は、物差しによって変わる言いかえ
  • 比べるなら、減らした重さそのもので比べる
  • 「何%減」は、重さか金額かを確かめる

宿で考えられること

  • 捨てた食品の重さを、品目ごとに測る
  • よく捨てられる品の、作る量や出し方を見直す
  • 成果を発表するときは、期間、比べる基準、物差しを書き添える

事業・予約への接続

食品ロスの成果は、客にも伝わりやすい。重さと期間をはっきり書くと、数字の信頼が増す。

Sources / 参考情報

関連する記事