6台の充電器を置いて、データは何を語ったか:カリフォルニアのベスト・ウェスタン、6年半で1,762回・222人
2011年、カリフォルニア州の中部、州間高速道路5号線のそばの町パターソンにあるホテル「ベスト・ウェスタン・プラス・ヴィラ・デル・ラゴ・イン」が、駐車場に電気自動車(EV)の充電器を6台置いた。
このとき、地元の電力会社は、工事の一部を引き受ける代わりに、一つだけ条件を出した。充電器のデータをもらうことだ。それから7年後、そのデータが電力会社の理事会で報告された。この記事では、置く前の予想と、置いたあとのデータを比べてみる。
2011年:350マイルで唯一の充電場所
2011年7月の地元紙「パターソン・イリゲーター」の記事によると、ホテルは地元の電力会社「ターロック灌漑区(TID)」と組んで、充電器を6台置く計画を立てた。TIDの理事会は、4対0でこの計画を承認した。
- TIDの区域で初めての充電場所で、スタニスラウス郡では2番目
- アメリカ・エネルギー省のデータでは、5号線のサクラメントからバレンシアまでの350マイル(約560km)で、唯一の充電場所になる
- 当時、日産リーフは1回の充電で約100マイル、テスラは245〜300マイル走れた
ホテルの経営者ドミニク・スペノ氏は、「進歩的な使い方になると思った」と話している。サンフランシスコの湾岸地域からEVで来て、夕食をとって泊まり、近くのゴルフ場で遊んで帰る客を思い描いていた。
費用と、電力会社との取引
同じ記事によると、充電器の値段は、工事費を除いて1万7,000〜1万8,000ドル。スペノ氏は「大きすぎる負担ではないが、私たちにとっては大事な投資だ」と話している。
TIDは、充電用のメーターと、変圧器から建物の配電盤までの配線を受け持ち、その他の費用の多くはホテルが払う。2011年8月の地元紙「ターロック・ジャーナル」の記事によると、TIDは配電盤の手数料も取らなかった。
その代わりにTIDが求めたのが、充電器の「生のデータ」だ。充電器は、いつ、どれだけの時間、どれだけの電気を使ったかを記録できる。TIDの電気技術の責任者は、「EVは、夏にエアコンを使う家の半分ほどの電気を使うことがある。数が増えれば、電力会社の設備に負担がかかるかもしれない」と話している。
予想:「6台はほとんど埋まる」
同じ記事によると、満充電には2〜6時間かかる。ホテルは、その間に客がレストランで食事をしたり、泊まったりすることを期待していた。泊まらない人からは、充電の料金をとることも考えていた。
開業の前から、ホテルにはEVの持ち主から問い合わせが続いていた。寄付をしたいという人までいたという。総支配人は「6台は、ほとんどいつも埋まると思う」と話している。
7年後のデータ:1,762回、222人
2018年10月のターロック・ジャーナルの記事は、TIDの理事会で報告された、このホテルの充電のデータを伝えている。
- 2018年7月1日までに、充電は1,762回。使った人は222人
- そのうち1人が、この6年半の充電の28%を占めていた
- 2017年に使った電気の量(kWh)は、それまでのどの年と比べても2倍だった
TIDの分析担当者は「使っている人はとても少なく、その少ない人がたくさん使っている」とまとめた。地域でEVを使う人は少ないが、着実に増えている、というのがTIDの見方だ。
数字を割ってみる
記事の数字を、自分で割ってみる(自分の計算)。
- 1,762回を6年半で割ると、1年に約271回。1日に約0.74回
- 6台あるので、1台あたりでは1日に約0.12回
- 28%を回数にすると、1人で約490回。残りの約1,270回を221人で分けると、1人あたり約5.7回
「ほとんどいつも埋まる」という予想とくらべると、実際の使われ方はずっと少なかった。ただし、2017年に電気の量が2倍になったように、使われ方は年とともに増えていた。
電力会社は、データで次の計画を立てた
同じ2018年の記事によると、このデータが報告された理事会で、TIDはEVの新しい計画を採択した。EVを買った人に1台300ドル、事業者が充電器を置くと1台1,000ドル(1事業者1台まで)を出す。計画の予算は14万6,000ドルだ。
ホテルが置いた6台は、地域の電力会社にとって、EVがどう使われるかを知るための最初のデータになった。
今のホテル
充電器の会社「チャージポイント」の事例によると、ホテルの6台は、チャージポイントの業務用の「レベル2」の充電器だ。管理のソフトで、泊まる客は無料、一般の人は有料に設定した。充電器がアプリの地図に表示されるので、新しい客がレストランに立ち寄ったり、泊まったりするようになったという。ホテルは、口コミサイト「トリップアドバイザー」の環境の取り組みの認定「グリーンリーダー」も受けたという。
今のホテルの公式ページでも、構内のEV充電が設備の一つとして案内されている。
日本の宿に置き換えると
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、宿の駐車場に充電器を2台置き、1年で300回使われたとする。
- 1日あたりでは約0.82回。1台あたり約0.41回
- 300回のうち、近くに住む1人が90回(30%)使っていた
- 残りの210回を70人が使い、1人あたり3回
回数の合計だけを見ると「年300回」だが、使った人の数で見ると、71人の宿だ。泊まった客が何回使ったかを分けて記録すれば、充電器が宿泊につながったかどうかも分かる。
回数と人数を分けて記録する
充電器を置いたら、回数、使った人の数、電気の量、泊まった客かどうかを分けて記録すると、次の判断に使える。予想とデータがずれても、データがあれば、台数や料金を見直せる。
持ち帰れる知識
- 充電器の使われ方は、置く前の予想とずれることがある
- 回数の合計だけでなく、使った人の数を見る
- 電力会社にとって、充電のデータは設備の計画に役立つ
宿で考えられること
- 充電器を置く前に、電力会社に相談する
- 回数、人数、電気の量、泊まった客かどうかを記録する
- 泊まる客と、泊まらない人の料金を分ける
事業・予約への接続
充電器がアプリの地図に出ると、宿を知らない人にも見つけてもらえる。泊まる客は無料にするなど、料金の分け方で宿泊につなげられる。
Sources / 参考情報
- Patterson Irrigator(英文) - ホテルの経営者とTID、EVの充電器を計画(2011年7月25日)
裏付け: 6台の計画、TIDの区域で初・郡で2番目、理事会が4対0で承認、エネルギー省のデータで350マイルで唯一、日産リーフ約100マイル・テスラ245〜300マイル、スペノ氏の言葉、湾岸地域からの客とゴルフ、1万7,000〜1万8,000ドル(工事費を除く)、TIDがメーターと配線、その他の多くはホテル - Turlock Journal(英文) - 西部のホテル、TIDと組んでEVの充電器を設置(2011年8月27日)
裏付け: TIDが配電盤の手数料を取らず配線を無料で設置、代わりに生のデータ、時刻・時間・電気の量を記録、家の半分ほどの電気(TIDの電気技術の責任者)、満充電2〜6時間、泊まらない人の料金、問い合わせと寄付の申し出、「ほとんどいつも埋まる」(総支配人) - Turlock Journal(英文) - TID、EVの計画を採択(2018年10月10日)
裏付け: 2018年7月1日までに1,762回・222人、1人が6年半の28%、2017年の電気の量はそれまでの2倍、TIDの分析担当者の言葉、EV1台300ドル・事業者の充電器1台1,000ドル、予算14万6,000ドル - ChargePoint(英文) - ベスト・ウェスタン・プラス、チャージポイントの充電で客の体験を高める
裏付け: レベル2の業務用の充電器6台、管理のソフト、泊まる客は無料・一般は有料、アプリで見つけてもらえる、レストランと宿泊、トリップアドバイザーの認定 - Best Western(英文) - ベスト・ウェスタン・プラス・ヴィラ・デル・ラゴ・イン・パターソン
裏付け: 5号線のそば、構内のEV充電の案内