「分ける」と「減らす」はちがう:カナダのフェアモント・バンフ・スプリングスが、堆肥に回す食べ物を5台の秤で測った
カナダのロッキー山脈にある町バンフでは、2022年10月から、ホテルや飲食店などの事業者に、食べ物のくずを一般のごみと分けることが義務になった。分けた食べ物は、堆肥にするために運ばれる。
ただ、分けても、捨てる食べ物の量が減るわけではない。「城」とも呼ばれるホテル「フェアモント・バンフ・スプリングス」は、2024年4月、堆肥に回す食べ物の箱に秤とカメラを付けて、何を、なぜ捨てているかを測り始めた。この記事では、「分ける」と「減らす」のちがいから、この取り組みを読んでいく。
町のルール:分ける義務
バンフ町のサイトによると、町は事業者のごみの規則を改め、2022年10月1日から、事業者に食べ物のくずと資源ごみを一般のごみと分けることを求めた。取り締まりは2023年から始まった。
町のよくある質問のページによると、食べ物のくずや資源ごみが目に見えて入っている(10%を超える)一般のごみは、受け付けられず、罰金の対象になることがある。ホテルなどは仕事のやり方を変える時間が要るとして、取り締まりは2023年1月まで待たれた。
2022年4月の町の議会の報告によると、町は「2028年までにごみの70%を埋め立てから外し、2050年には埋め立てるごみをゼロにする」という目標を決めている。事業者のごみは町全体の約65%で、2015〜2016年の調査では、事業者が埋め立てに出すごみのほぼ50%が、食べ物のくずと、食べ物で汚れた紙だった。堆肥に回すほうが、一般のごみより収集の費用が安いという。
5台の秤とカメラ
2024年11月のバンフ・レイクルイーズ観光局の記事によると、ホテルが使い始めたのは、オランダの会社「オービスク」の機器だ。
- 堆肥に回す箱に、秤とカメラを付ける
- 捨てるたびに、自動で写真を撮る
- AIが、食べ物の種類、量、捨てた時刻、捨てた理由を記録する
- 鍋から、まな板から、金属の容器から、皿から、どこから捨てたかも記録する
ホテルは、この秤を5台、厨房の大部分と従業員の食堂をカバーする場所に置いた。どこから捨てたかが分かれば、料理を作るどの段階で食べ物が無駄になったかが分かる。
7か月で見えたこと
観光局の記事は、使い始めて7か月の時点で分かったことを伝えている。
- 宴会の料理を作る厨房では、スープとソースに捨てる量の多い傾向が見つかり、作る量を減らした
- レストラン「ヴァーミリオン・ルーム」のビュッフェでは、パンや焼き菓子が多く捨てられていた。並べる量を減らし、残った焼き菓子は従業員が食べられるようにした
- 9月の終わりに涼しくなると、従業員の食堂で、生の野菜を捨てる量が増え、ご飯やじゃがいもなどの炭水化物を捨てる量が減った。そこで、野菜は少しずつ作り、じゃがいもやご飯を多めにした
2025年5月の米国の旅行誌「アファー」の記事も、同じ秋の変化を伝えている。ただ、アファーは客の食べ方の話のように書いているが、観光局の記事では、従業員の食堂での変化だ。
料理長の言葉
総料理長のアティカス・ガラント氏は、観光局の記事で、こう話している。「前の年と比べられるデータがそろうのは来年の4月だが、オービスクはすでに役に立っている。すぐに分かることで、みんなが気づくようになり、捨てる量の多いところで、メニューや出し方、仕込みをすぐに変えられた」。
一方で、ガラント氏は、データを正しく集めるには、続けて記録するチームが要るとも話している。データを絞り込み、何を変えるかを決めるには、事務の時間と、部署をまたいだ調整が必要だという。
アファーの記事で、オービスクの創業者オラフ・ファン・デル・フェーン氏は、「データの読み方を料理人と一緒に考え、料理人が正しい問いを立てられるようにしている」と話している。
1年目の結果:「7%から15%」
2025年7月のホテルのブログによると、オービスクを使った1年目に、客向けの飲食で「食品ロスの削減率」が7%から15%に、2倍になった。客の満足や客の数に影響を与えずに、毎月約200kgの食品ロスを減らし続けているという。
ただし、ブログには、「削減率」が何と比べた割合なのかは書かれていない。7%が何の年の数字で、15%がどの期間の数字かも分からない。だから、「15%減った」とだけ読むのではなく、「客向けの飲食で、毎月約200kg減っている」という、重さの数字と合わせて読むのがよい。
ホテルは、2020年に、町の「ゼロ・ウェイスト」の賞も受けている。
分けることと、減らすこと
町の規則は、食べ物を「埋め立てない」ためのものだ。分けた食べ物は堆肥になるが、作った料理が捨てられることに変わりはない。
ホテルは、分けた食べ物の箱に秤を置いた。分けるルールがあったから、捨てる食べ物が一か所に集まり、測りやすくなったとも言える。そして測ることで、作る量そのものを減らすことができた。
日本の宿に置き換えると
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、ある宿の朝食のビュッフェで、毎朝パンを80個並べ、16個(20%)が残っていたとする。
- パン1個を40gとすると、残りは1日640g、1年で約234kg
- 記録を見て、並べる数を68個にしたら、残りは4個になった
- 残りは1日160g、1年で約58kg。約175kg減る
- 残った4個は、従業員のまかないに回す
並べる数を減らしても、客が食べた数(64個)は変わっていない。減ったのは、作ったのに食べられなかった分だ。
測る場所を決める
まずは、捨てる場所を一つ決めて、何を、どれだけ、なぜ捨てたかを記録するとよい。季節や行事で捨てるものが変わることもあるので、1年続けると、比べられるデータになる。
持ち帰れる知識
- 分けること(埋め立てない)と、減らすこと(作りすぎない)は別のこと
- どこから捨てたかが分かると、無駄の出る段階が分かる
- 「削減率」は、何と比べたかを確かめ、重さの数字と合わせて読む
宿で考えられること
- 食べ物を捨てる場所を一つ決め、何を、なぜ捨てたかを記録する
- ビュッフェで残りやすいものの並べ方を見直す
- 残ったものを従業員の食事に回す決まりを作る
事業・予約への接続
作る量を見直すと、食材の費用も下がる。客の満足を下げずに減らせたことを示せれば、環境の取り組みとして客にも伝えやすい。
Sources / 参考情報
- Banff & Lake Louise Tourism(英文) - 現場からの話:フェアモント・バンフ・スプリングス、食品ロスを賢く減らす(2024年11月12日)
裏付け: 2024年4月に導入、堆肥の箱に秤とカメラ、捨てるたびに撮影、種類・量・時刻・理由、鍋・まな板・金属の容器・皿、5台で厨房の大部分と従業員の食堂、7か月の結果(スープとソース、ヴァーミリオン・ルームの焼き菓子と従業員、9月の終わりの野菜と炭水化物)、ガラント氏の言葉、チームと事務の時間 - AFAR(英文) - ホテルは年に7万9,000トンの食品を捨てている。AIと魚のせんべいは役立つか(2025年5月27日)
裏付け: オービスクはオランダの会社、ファン・デル・フェーン氏の言葉、ソース・スープ・焼き菓子、秋の生野菜の変化(客の話として記載) - Fairmont Banff Springs(英文) - 城のサステナビリティ(2025年7月17日)
裏付け: 2020年に町のゼロ・ウェイストの賞、1年目に客向けの飲食で削減率7%から15%、客の満足と客の数に影響なく毎月約200kg - Town of Banff(英文) - 食べ物のくずと資源ごみの規則
裏付け: 事業者に分別の義務、2022年10月1日に施行、2023年から取り締まり、教育を先に - Town of Banff(英文) - よくある質問:食べ物のくずと資源ごみの規則
裏付け: 目に見えて入っている(10%を超える)ごみは受け付けず罰金も、ホテルなどのため取り締まりは2023年1月から - Town of Banff(英文) - 2022年4月11日の議会の報告(2022年4月18日)
裏付け: 2028年までに70%・2050年に埋め立てゼロ、事業者のごみは約65%、事業者の埋め立てごみのほぼ50%が食べ物のくずと汚れた紙、堆肥のほうが安い