GOAL 12 · TARGET 12.2 廃棄物・循環経済 3分 / 2079文字 広い敷地の小さな畑を読む型 #288

4,200エーカーの中の、3〜4エーカーの畑:米国テネシー州の「ブラックベリー・ファーム」が、小さな畑を土から育てる方法

米国テネシー州、グレート・スモーキー山脈のふもとに、宿「ブラックベリー・ファーム」がある。敷地は4,200エーカー(約1,700ヘクタール)。森と牧草地が広がり、羊や豚や鶏が暮らす。

これだけ広いと、宿の食べ物はすべて敷地の畑から来るように思える。しかし、野菜を育てる畑の広さは、資料によって3〜4エーカーほどだ。敷地全体の約0.1%にあたる。この記事では、広い敷地の中の小さな畑が、どのように育てられてきたかを読んでいく。

畑の広さは、資料によってちがう

畑の広さについて、資料の書き方を並べると、次のようになる。

  • 2007年5月の米国の外食業界誌「ネーションズ・レストラン・ニュース」:4分の1エーカーの区画から、数エーカーに広がった
  • テネシー州の土壌保全の団体の記事(2016年9月からの訪問を記録):約3エーカー
  • 宿の運営会社のサイト:4エーカーの畑

時期によって広さが変わってきた可能性があり、数え方(花やハーブの区画を含むか)もちがうかもしれない。1エーカーは約0.4ヘクタールなので、3〜4エーカーは約1.2〜1.6ヘクタールになる。4エーカーとしても、4,200エーカーの約0.1%(4÷4,200=約0.095%)で、敷地のごく一部だ。

敷地の半分は保全地

米国の旅行誌「コンデナスト・トラベラー」によると、4,200エーカーのうち半分、つまり約2,100エーカーは保全地になっている。宿は、温室効果ガスの排出などを測って報告する国際的な非営利団体「CDP」の会員でもあるという。運営会社のサイトによると、近くの「ブラックベリー・マウンテン」には、5,200エーカーの保護された原生の自然がある。

2007年の記事によると、敷地が4,200エーカーになったのは、その約4年前に隣の640エーカーを買ったときだ。この土地で、「農場」の部分を広げられるようになったという。

鶏小屋は1棟から5棟に

2007年の記事で、経営者のサム・ビール氏は、鶏小屋の話をしている。1976年から農家のそばに鶏小屋が1棟あり、子どもたちが卵を取りに行くのにちょうどよい程度だった。新しく買った土地には鶏小屋が5棟でき、毎日、自分たちの農場の卵を客に出せるようになったという。

畑も、4分の1エーカーの区画から数エーカーに広がり、野菜だけでなく花も育てるようになった。ビール氏は、丘にずっと羊がいたのに何もしてこなかったと話し、羊の乳からチーズを作る道に進んだ。

「最盛期には100%」

同じ2007年の記事は、畑が1年のうち3つの季節に作物を育て(three-season)、最盛期には宿で使う農産物の100%をまかなうと書いている。

ただし、これは最盛期の話で、1年を通しての数字ではない。畑の広さも、その後に変わっている。2007年の数字を、今の宿にそのまま当てはめることはできない。

耕さずに土を育てる

テネシー州の土壌保全の団体の記事は、2016年9月から畑を訪ねた記録だ。

  • 畑は有機の認証は受けていないが、化学物質を使わずに作物を育てている
  • 自前の堆肥を作り、定期的に畑に入れている
  • 木を燃やして炭(バイオ炭)を作り、野菜の畝に入れている
  • 以前よく耕していた下の畑では、土の構造が十分ではなかった
  • 冬の間、ライ麦、ソバ、クローバー、大根などを混ぜた「カバークロップ(土を覆う作物)」をまく案が出された

記事は、耕しすぎると土の粒がこわれ、水がしみこみにくくなると説明している。畑の責任者は、土の構造と水のしみこみをよくすることを目標にしていたという。

台所と畑の循環

宿の公式サイトによると、畑の土には、台所と厩舎から出たものの堆肥を入れている。前の年に取っておいた種をまき、そばに在来の植物を植えて、害虫を遠ざけ、花粉を運ぶ虫を呼ぶ。化学物質をまく代わりに、害虫を食べる虫がすむ場所を作っている。

コンデナスト・トラベラーによると、宿は保存の技術を使うことで、農家の作物を丸ごと買い取り、食べ物の無駄を避けている。

羊の乳はチーズになる。公式サイトによると、群れは主にイースト・フリージアン種で、ラコーヌ種とアサフ種もいる。羊の群れは、2頭のロバが見守り、近づく獣を追い払う。鶏は、東テネシーで昔から飼われてきた品種で、牧草地を自由に歩いて虫やクローバーを食べている。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、ある宿が、近くの農家から旬のトマトを丸ごと300kg買うとする。

  • 生で使えるのは、旬の2週間で120kg
  • 残りの180kgを、ソースとピクルスにして保存する
  • 1瓶に400gのトマトを使うとすると、450瓶
  • 冬の献立や売店で、少しずつ使う

自分の畑が小さくても、農家の作物を丸ごと買い、保存して使い切れば、宿の食の「畑」は広がる。

小さな畑から始める

宿の畑は、広さよりも、土をどう育てるかが大切だ。台所のくずを堆肥にし、種を取り、耕しすぎない。畑で足りない分は、近くの農家とつながって補えばよい。

持ち帰れる知識

  • 敷地の広さと、畑の広さは別のこと
  • 「最盛期に100%」は、1年を通しての数字ではない
  • 耕しすぎない、土を覆う、堆肥を入れることで、土の構造が育つ

宿で考えられること

  • 台所のくずを、畑の堆肥にする
  • 旬の作物を丸ごと買い、保存して使い切る
  • 畑で取った種を、次の年にまく

事業・予約への接続

畑の広さを大きく見せなくても、土を育てる話は客の心に残る。保存食は、季節を越えて宿の味を伝える商品にもなる。

Sources / 参考情報

  • Blackberry Farm(英文) - ブラックベリー・ファームの畑
    裏付け: 台所と厩舎の堆肥、前の年の種、在来の植物で害虫を遠ざけ花粉を運ぶ虫を呼ぶ、化学物質をまかず害虫を食べる虫の場所を作る
  • Blackberry Farm(英文) - 農場の動物
    裏付け: 乳用の羊はイースト・フリージアン種・ラコーヌ種・アサフ種、主にイースト・フリージアン種の乳でチーズ、2頭のロバが羊を守る、東テネシーの在来の品種の鶏が放し飼い
  • Blackberry Brands(英文) - 会社案内
    裏付け: 4,200エーカーの敷地、ブラックベリー・マウンテンの5,200エーカーの保護された原生の自然、4エーカーの畑
  • Nation's Restaurant News(英文) - ブラックベリー・ファーム(2007年5月21日)
    裏付け: 約4年前に隣の640エーカーを買い4,200エーカーに、鶏小屋1棟から5棟へ、羊のチーズ、4分の1エーカーから数エーカーへ、3つの季節の畑が最盛期に農産物の100%
  • Tennessee Association of Conservation Districts(英文) - ブラックベリー・ファームの一日:耕さずに有機の在来種の野菜を育てる
    裏付け: 2016年9月から訪問、畑は約3エーカー、2つの台所、認証はないが化学物質を使わない、自前の堆肥、バイオ炭、耕していた下の畑、冬のカバークロップの案
  • Condé Nast Traveler(英文) - ブラックベリー・ファーム ホテルのレビュー
    裏付け: 4,200エーカーの半分が保全地、CDPの会員、堆肥、種の保存、保存の技術で作物を丸ごと買い取り食べ物の無駄を避ける

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