GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 4分 / 2210文字 街の手引きから学ぶ型 #292

1軒の節水の前に、街の節水があった:サラゴサの「節水の街」が、ホテルに配った水の自己診断の手引き

スペイン北東部の街サラゴサのホテル「シルケン・レイノ・デ・アラゴン」は、2009年に水まわりを節水型に替えた。2013年に発表された論文によると、客1人あたりの1日の水の量は、321リットルから252リットルに減った。記録は1,703日にわたり、ホテルの保守の担当者が、毎日メーターを読んで残したものだった。

このホテルの改修と、論文が明らかにした見えない漏れの話は、#277で詳しく読んだ。この記事では、視点を街に移す。ホテルが改修をした2009年より前から、サラゴサでは、街ぐるみの節水の取り組みが10年以上続いていた。そこでは、ホテルに向けた水の自己診断の手引きもつくられていた。

「節水の街」の始まり

サラゴサの環境団体ECODES(エコロジーと開発財団)は、1997年に「サラゴサ、節水の街」という取り組みを始めた。欧州連合(EU)の環境の助成制度「LIFE」の支援を受けたものだ。

最初の目標は、はっきりした数字だった。家庭の水を、1年で10億リットル減らす。ECODESの報告によると、結果は11億7,600万リットルで、目標を17.6%上回った。街の家庭の1年の水の量の5.6%にあたる。EUのLIFEの記録によると、150の団体と183の学校が参加した。

ホテルは「大口の利用者」だった

この最初の段階から、取り組みはホテルを対象に入れていた。ECODESの報告は、ホテル、レストラン、バー、ジム、公共の施設を「大口の利用者」と呼び、こう書いている。毎日多くの人が訪れ、水の量が多い。だからこそ、節水の効果も目立ち、節約できるお金の数字には人を動かす力がある。

大口の利用者に向けては、次のことをした。

  • 節水が環境とお金の両方に得になることを、資料で伝える
  • 共用のトイレに貼るシールを配る
  • 水の効率的な使い方の説明会を開く

シールには3つの役割があった。節水型の設備がついていることを示す。客や利用者に、その設備の正しい使い方を伝える。そして、水の大切さを思い出してもらう。

「50の良い例」と、平均49%

2000年から2003年の第2段階は、「50の良い例」と名づけられた。ECODESによると、公共の建物、工場、公園や庭の中から、水を賢く使う50の例を探し出した。国連の良い取り組みの記録を載せるスペインのサイトによると、これらの例は、水の量を平均49%減らしていた。

2004年から2006年の第3段階では、見つけた例を広めた。ECODESによると、ホテル、オフィス、レストランやバーなど、分野ごとの小さな手引きをつくり、1万人を超える利用者に配った。

ホテルのための手引き

ECODESは2001年5月、「ホテルの水のエコ監査」という手引きを印刷した。第2段階の監査の経験から、手順をまとめたものだ。手引きは、3つの段階で進めるよう求めている。

  • 1つ目は、経営の約束。ホテルの最高責任者が、水を効率よく使うという方針を承認する。提案する人が、ほかの人に話しやすくなるからだ
  • 2つ目は、最初の監査。設備を書き出し、水を使う場所の一覧をつくり、どこでどれだけ使っているかを見積もる
  • 3つ目は、計画。使える対策を選び、費用と効果を比べ、実行して評価する

何で割るかを、自分で選ぶ

手引きは、水の量をくらべる物差しを、ホテルごとに選ぶよう勧めている。例として挙げているのは、次のものだ。

  • ベッド1台あたりの1日の量
  • 客1人1泊あたりの1日の量
  • 従業員1人あたりの1日の量
  • 庭の水やりなら、1平方メートルあたりの1日の量

論文が使った「客1人あたり」は、このうちの1つにあたる。

バケツと時計で測る

手引きは、メーターがない場所では、バケツとストップウォッチで流量を測るよう勧めている。さらに、漏れについて、こう書いている。蛇口からの「ぽたぽた」だけでも、1日30リットルを超え、1年で11立方メートルになる。

対策の最初に挙がっているのは、点検の仕組みだ。設備の漏れを見つけて直す。お湯の配管を断熱して、お湯が出るまでに捨てる水を減らす。食器洗い機や洗濯機は、いっぱいにしてから回すよう、従業員に伝える。

論文のホテルがこの手引きを使ったかどうかは、出典からは分からない。ただ、毎日メーターを読む記録と、見えない漏れの発見は、手引きが勧める「測ること」と「点検すること」に重なる。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・40ベッドで、1日に10立方メートルの水を使う宿を考える。

  • 稼働率70%で1室2人なら、客は1日28人。客1人1泊あたり約357リットル
  • ベッドで割ると、1台あたり250リットル
  • 10リットルのバケツが、シャワーで40秒でいっぱいになったら、流量は毎分15リットル
  • 蛇口3か所から、それぞれ1日30リットルの漏れがあれば、1年で約33立方メートル。水が1立方メートル600円なら、年約2万円

同じ宿でも、何で割るかで数字は変わる。決めた物差しを、毎月同じ方法で記録することが大切だ。

街の仕組みが、宿の一歩を軽くする

サラゴサの例は、1軒のホテルの努力が、街の取り組みの中で進んだことを示している。手引きやシール、説明会があれば、宿は一から考えなくてすむ。日本でも、自治体や水道事業者の節水の資料を探すことが、最初の一歩になる。

持ち帰れる知識

  • 街の節水の取り組みは、ホテルを「大口の利用者」として最初から対象にしていた
  • 手引きは、経営の約束、最初の監査、計画の3段階で進める
  • 水の量の物差し(ベッド、客、従業員)は、宿ごとに選んで続ける

宿で考えられること

  • 経営者が、水を効率よく使う方針を文書にする
  • メーターのない場所は、バケツと時計で流量を測る
  • 自治体や水道事業者の節水の資料を探す

事業・予約への接続

トイレや洗面所の小さな表示は、節水型の設備の使い方を客に伝え、宿の姿勢も伝える。測った数字は、環境の認証や取材の材料になる。

Sources / 参考情報

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