「126点」は、いつの、誰の点数か:米国の「ザ・フォールド・ホテルズ」のBコープの点数を、88.6点から133点まで並べて読む
米国のホテルブランド「ザ・フォールド・ホテルズ」は、フロリダ州オーランドとインディアン・ショアーズ、コロラド州スティームボート・スプリングスに、キッチン付きのスイートの宿を持つ。
ブランドのサステナビリティのページには、2026年2月の時点で、こう書かれていた。「現在のBコープの点数:126」。その下に、5つの分野の内訳が並ぶ。
この記事では、この「126点」が、いつの、誰の点数なのかを確かめる。そして、Bコープを認証する非営利団体「Bラボ」の名簿にある、ほかの年の点数と並べて読む。
Bコープとは
Bコープは、社会や環境への配慮、透明性、説明責任について、一定の基準を満たした会社に与えられる認証だ。これまでの基準では、会社は「Bインパクト評価」という質問に答え、80点以上で認証を受けられた。
Bラボの名簿は、その会社の点数を公開している。名簿によると、ふつうの会社が評価を受けたときの点数の中央値は50.9点だ。
点数の持ち主は、ブランドではなく会社
まず、点数の持ち主を確かめる。Bラボの名簿に載っているのは、「ザ・フォールド・ホテルズ」ではなく、親会社の「アンドコー・ホスピタリティ」だ。
業界誌「グリーン・ロッジング・ニュース」に載った2025年4月の会社の発表によると、アンドコーは、もとは「レガシー・バケーション・リゾーツ」という1つのブランドとして営業していた。2025年に、3つのブランドを束ねる会社として新しく出発した。
- ザ・フォールド・ホテルズ(新しくつくった中心のブランド)
- レガシー・バケーション・リゾーツ(つくり直したブランド)
- ザ・ローカル(買収したブランド)
名簿によると、認証を受けたのは2019年3月。ザ・フォールドというブランドが生まれる前だ。つまり「126点」は、ブランドの点数ではなく、3つのブランドを持つ会社全体の点数になる。
3つの年の点数
Bラボの名簿は、今の点数と、前の点数を並べて載せている。
- 2019年:88.6点
- 2023年:126点
- 今の点数:133.0点(2026年10月に確かめた時点)
ザ・フォールドのページが2026年2月に「現在」と書いていた126点は、2023年の点数だった。同じページには、「次の再認証で、今の126点を超えることを目指す」とも書かれていた。名簿の133.0点は、その後の点数にあたる。
内訳を並べる
5つの分野の内訳を、2つの時点で並べる。
- ガバナンス(経営の仕組み):19.2点 → 20.8点
- 働く人:26.8点 → 17.3点
- 地域:43.1点 → 53.2点
- 環境:33.8点 → 38.5点
- 顧客:2.9点 → 3.0点
合計は126点から133点へ、7点上がった。けれど、分野ごとに見ると、動きはそろっていない。地域は10.1点、環境は4.7点上がった。一方で、働く人は9.5点下がっている。
なぜ下がったのかは、名簿にもブランドのページにも書かれていない。合計の点数だけを見ていると、この動きは見えない。
点数の裏にある取り組み
2026年2月のザ・フォールドのページには、点数の裏にある取り組みが並んでいた。
- 1%・フォー・ザ・プラネットに加わり、ホテルの売上の1%を環境の慈善団体に寄付する
- 2024年、会社全体のボランティアは2,051時間、参加率は75%だった
- 「デイ・オブ・ホープ」という取り組みで、従業員全員に8時間の有給の休みを与える
- 黒人や女性、障害のある人が経営する会社、地元の会社、Bコープの会社を優先する購買の方針をつくった
- 人件費以外の支出の少なくとも50%を、独立系や地元の取引先から調達することを約束している
最後の「50%」は、約束として書かれている。すでに達成した割合かどうかは、ページからは読み取れない。
点数の時代が終わる
Bラボは、2025年4月8日に新しい基準を公表した。Bラボの案内によると、新しい基準は、土台となる要件と、7つのテーマでできている。認証の最初に満たす要件があり、3年目と5年目に、さらに要件が加わる。
英国の新聞「ガーディアン」の2026年4月の記事によると、Bラボは、分野ごとの点数を合計して基準を超える仕組みをやめた。これまでは、ある分野が弱くても、別の分野の高い点数で補えた。新しい基準では、7つのテーマのすべてで基準を満たす必要がある。
点数を並べて比べられるのは、これまでの基準で評価を受けた会社に限られることになる。
日本の宿に置き換えると
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、人件費を除く支出が年4,000万円の宿を考える。
- 今、地元や独立系の取引先への支払いが35%なら、1,400万円
- これを50%にするには、2,000万円が必要。差は600万円
- たとえば、リネンの洗濯、朝食のパン、清掃用品の仕入れ先を、地元の会社に替えられないかを1つずつ確かめる
割合で約束するときは、分母(人件費を除く支出)と、「地元」の範囲を先に決めておく。
数字には、日付と持ち主をつける
「126点」は誤りではない。2023年の、会社全体の点数だ。認証の点数を伝えるときは、いつの点数か、誰の点数かを一緒に書く。内訳も並べれば、合計だけでは見えない動きが分かる。
持ち帰れる知識
- Bコープの点数は、ブランドではなく会社につく
- 合計が上がっても、分野ごとに下がっているものがある
- 新しい基準では、点数を合計して基準を超える仕組みがなくなった
宿で考えられること
- 認証や評価の数字を伝えるときは、年と対象を書く
- 地元からの調達の割合を、分母を決めて測る
- ウェブサイトの数字を、年に1度は見直す
事業・予約への接続
日付のついた数字は、予約サイトや取材で正しく伝わる。地元の取引先との関係は、宿の物語として客に伝えられる。
Sources / 参考情報
- B Lab Global(英文) - アンドコー・ホスピタリティ(Bコープの名簿)
裏付け: 2019年3月に認証、133.0点と5つの分野の内訳、2023年126点、2019年88.6点、80点で認証、ふつうの会社の中央値50.9点 - The Fold Hotels(英文) - サステナビリティ(Internet Archive の保存版)(2026年2月12日の保存)
裏付け: 「現在のBコープの点数:126」と内訳(19.2、26.8、43.1、33.8、2.9)、米国で初めて複数の州にまたがるリゾートの会社としてBコープに、売上の1%の寄付、2024年のボランティア2,051時間と参加率75%、「デイ・オブ・ホープ」の8時間の有給、購買の方針、人件費以外の支出の50%以上を独立系・地元から、次の再認証で126点を超える目標 - Green Lodging News(英文) - アンドコー・ホスピタリティが出発、持続可能な観光を誰にでも(2025年4月2日、会社の発表)
裏付け: もとはレガシー・バケーション・リゾーツの1つのブランド、3つのブランド、ザ・フォールドは新しくつくった中心のブランド、スティームボート・スプリングス、インディアン・ショアーズ、レイク・ブエナ・ビスタ - Steamboat Pilot & Today(英文) - ホスピタリティ会社がスティームボート・スプリングスのホテルを改名し、持続可能な考え方を披露(2025年5月2日)
裏付け: スティームボートのザ・フォールドは60室のスイート、全面改装、ロビーに1920年代の家具を再利用、3つのブランドが同じ会社に - B Lab Knowledge Hub(英文) - 2025年と2026年に再認証を迎えるBコープへの案内
裏付け: 新しい基準は2025年4月8日に公表、土台の要件と7つのテーマ、最初の要件と3年目・5年目の追加の要件、これまでの基準(第6版)で80点以上 - The Guardian(英文) - 基準の見直しで、多くの会社がBコープの資格を失うおそれ(2026年4月6日)
裏付け: 点数を集めて基準を超える仕組みをやめた、ある分野の弱さを別の分野で補えた、7つのすべてで基準を満たす必要