GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 4分 / 2203文字 駐車場から読み解く型 #294

太陽光の屋根の下に、24基の充電器:米国ニューヘイブンの「ホテル・マルセル」の駐車場は、街道の充電所になった

米国コネチカット州ニューヘイブンの「ホテル・マルセル」は、165室のホテルだ。建築家マルセル・ブロイヤーが設計したタイヤ会社の旧本社を、2022年にホテルに変えた。ガスを使わず、すべてを電気で動かす。この建物とエネルギーの仕組みは、#003で詳しく読んだ。

この記事では、建物の外に目を向ける。駐車場だ。太陽光パネルの屋根の下に、電気自動車(EV)の充電器が24基並ぶ。ホテルの客だけでなく、街道を走る人も、ここで車を充電していく。

公式サイトの数字

ホテルの公式サイトは、駐車場と屋上の設備を、こう説明している。

  • 屋上と駐車場の屋根に1,000枚を超える太陽光パネル。年に57万5,000キロワット時(kWh)を超える電気をつくる
  • 近くの場所に、太陽光の屋根を増やす計画がある
  • リチウムイオンの蓄電池は1.5メガワット時(1,500kWh)
  • 電力網から切り離しても動けるインバーターがあり、停電時の非常用の電源にもなる
  • テスラ車用の250キロワット(kW)の急速充電器が12基
  • 7.2kWの普通充電器が12基

2022年12月、充電器が動き出した

コネチカット州のEVの愛好家の団体「EVクラブ・オブ・コネチカット」は、2022年12月3日、ホテルの充電器が使えるようになったと伝えた。ホテルは家具店イケアの隣にある。テスラの急速充電器が12基、別の会社の普通充電器が12基。普通充電器は、配線などの設備がすでに整っていて、3倍の36基まで増やせるという。

誰が充電しているのか

不動産の情報会社コスターの2024年4月の記事で、総支配人のベン・ウェブスター氏は、充電器の使われ方をこう語っている。

  • 充電器は全部で24基。ホテルの電気のシャトルの充電に使う
  • EVを持っている、または借りている従業員は、無料で充電できる
  • 北のニューハンプシャー州やメイン州から南へ向かう人や、ボストン、ケープコッド、ニューポートへ向かう人が、充電のために立ち寄る
  • 長い旅を区切るために、そのまま泊まっていく人も多い

自動車誌「オートウィーク」の2026年2月の記事は、充電器が一般にも開かれていると書く。ホテルはイケアと駐車場を共有し、東海岸を南北に結ぶ州間高速道路95号線のすぐそばにある。そのため、充電器は「ほとんどいつも使われている」という。

1日に何回使われているか

ホテル業界のニュースサイト「ホテル・ダイブ」の2024年5月の記事で、ウェブスター氏は回数を挙げている。

  • 普通充電は、1日に15〜20回
  • テスラの急速充電は、1か月に約2,000回

単純に割ると、急速充電は12基で1日に約66回、1基あたり1日5回ほどになる。普通充電は、12基で1日15〜20回、1基あたり1日1〜2回ほどだ。急速充電は短い時間で車が入れ替わり、普通充電は車を長く止めておく使い方が多いと考えられる。

同じ記事によると、普通充電器は、ホテルのマイクログリッド(自前の小さな電力網)を通っている。できるかぎり、太陽光の電気か、1.5メガワット時の蓄電池の電気を使う。

電気のシャトル

オートウィークの記事によると、ホテルは自動車会社ヒュンダイと組み、ヒュンダイのEVで客を送迎している。運転手がつき、半径5マイル(約8キロ)以内と、近くのツイード空港までは無料だ。ウェブスター氏によれば、1日に10〜15回の送迎がある。車は、ホテルの充電器で充電する。

ウェブスター氏は、こうも語っている。「ホテルは化石燃料を使わない。だから客は、この車と滞在を組み合わせて、炭素を出さない体験ができる。客はその話を聞くのが好きだ」。

数字は、資料ごとに少しずつちがう

ホテル・マルセルの数字は、資料によってちがうものがある。

  • パネルの枚数:公式サイトは「1,000枚超」。コスターとホテル・ダイブの記事は「約1,100枚」
  • 蓄電池:公式サイトとホテル・ダイブは1.5メガワット時。電源設備の会社ジェネラックの事例紹介は1,012kWh・500kW
  • ネットゼロ:公式サイトは、2026年10月に確かめた時点で、ネットゼロの認証を「審査中」と表示している。一方、オートウィークの記事では、ウェブスター氏が「2025年の終わりに米国初のネットゼロのホテルになった」と語っている

どれが正しいかは、出典からは決められない。蓄電池は、増設した可能性もあるが、出典に説明はない。引用するときは、どの資料の、いつの数字かを書いておく。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、駐車場に3kWの普通充電のコンセントを4口置いた宿を考える。

  • 4口を合わせて、1日に8時間使われるとする。1日24kWh
  • 1年で8,760kWh。電気が1kWh30円なら、年約26万円の電気代
  • 宿泊客の夜の充電が中心なら、1口あたり1晩8時間で24kWh。車によっては100キロ以上走れる量になる

充電器を置くときは、誰に開くか(宿泊客、日帰りの客、従業員)を先に決める。使われ方の記録をとれば、増やすか、料金をとるかを判断できる。

駐車場は、宿の入り口になる

ホテル・マルセルの駐車場は、充電のために立ち寄った人が、そのまま泊まる場所になった。太陽光の屋根と充電器は、エネルギーの設備であると同時に、宿を見つけてもらう入り口でもある。

持ち帰れる知識

  • 充電器は、街道を走る人を宿に呼ぶ入り口になる
  • 急速充電と普通充電では、回数と止めておく時間がちがう
  • 同じホテルの数字でも、資料と時期でちがうことがある

宿で考えられること

  • 充電器を誰に開くかを決める
  • 1日の充電の回数と時間を記録する
  • 太陽光の屋根を、駐車場に置けないか確かめる

事業・予約への接続

充電できる宿は、EVで旅する人の検索に入る。充電のついでに泊まる客は、新しい予約の入り口になる。

Sources / 参考情報

  • Hotel Marcel(英文) - サステナビリティ
    裏付け: 1,000枚超のパネルで年57万5,000kWh超、太陽光の屋根を増やす計画、リチウムイオン1.5メガワット時、電力網から切り離して動けるインバーター、250kWの急速12基と7.2kWの普通12基、ヒュンダイとの提携、ネットゼロの認証は審査中
  • EV Club of Connecticut(英文) - ホテル・マルセルの充電の拠点が開業(2022年12月3日)
    裏付け: 充電器が稼働、イケアの隣、テスラの急速12基と普通12基、普通を36基まで増やせる設備
  • CoStar(英文) - ホテル・マルセルのオーナーは、歴史ある建物をどう排出ゼロのホテルにしたか(2024年4月22日)
    裏付け: 総支配人ベン・ウェブスター氏、充電器24基、シャトルの充電、従業員の無料の充電、ニューハンプシャー州やメイン州からの立ち寄りと宿泊、約1,100枚、1.5メガワットの蓄電池
  • Hotel Dive(英文) - 排出ゼロのホテルへの道すじを示すコネチカットのホテル(2024年5月10日)
    裏付け: 約1,100枚、充電の区画24(テスラの急速12)、普通充電はマイクログリッド経由で太陽光か1.5メガワット時の蓄電池を使う、普通1日15〜20回、急速1か月約2,000回
  • Autoweek(英文) - ヒュンダイのEVで走る排出ゼロのホテル(2026年2月27日)
    裏付け: 165室、ヒュンダイのEVでの送迎、半径5マイルとツイード空港まで無料、1日10〜15回、充電器は一般にも開く、イケアと駐車場を共有、州間高速道路95号線のそば、ほとんどいつも使われている、ウェブスター氏の言葉、2025年の終わりにネットゼロ
  • Generac(英文) - ホテル・マルセル(マイクログリッドの事例)
    裏付け: 駐車場の屋根に409kWの太陽光、1,012kWh・500kWの蓄電池

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