GOAL 12 · TARGET 12.3 廃棄物・循環経済 4分 / 2238文字 比べる期間を確かめる型 #296

「6週間で29%」は、どの期間とどの期間を比べたのか:ラッフルズ・シンガポールの食品ロスの数字を、業者の記事どうしで読み比べる

シンガポールの「ラッフルズ・ホテル」は、1887年に開業した。今は115室すべてがスイートのホテルだ。

このホテルの厨房は、オランダの会社オービスクの機械で、捨てる食べ物を記録した。ごみ箱の上に置いた機械が、捨てた食べ物を、混ざっていても見分けて記録する。オービスクは2024年10月、自社のブログでこう紹介した。「わずか6週間で、ラッフルズ・シンガポールは食品ロスを29%減らした」。

この「6週間で29%」は、オービスクのほかの記事にも何度も出てくる。ただ、記事を並べてみると、期間の書き方や金額が少しずつちがう。この記事では、業者の記事どうしを読み比べ、数字を読むときに確かめたいことを整理する。

事例の記事が書いていること

オービスクの2024年10月の事例の記事は、次の数字を挙げている。

  • 6週間で、食品ロスを29%減らした
  • 1,097キロの食べ物を捨てずにすんだ。2,437食分にあたる
  • 6週間で、9,000ユーロを超える食品の費用を節約した
  • 二酸化炭素(CO2)を3,220キロ減らした。車700台を1日道路から外すのと同じ

減らし方については、こう書く。機械が集めたデータを、厨房のチームが、オービスクの「食品ロスのコーチ」の助けを借りて分析した。どこで、いつ、どんな食べ物が捨てられているかを突き止めた。その結果、つくる量をずっと正確に見込めるようになった。

記事ごとの書き方

同じ事例が、オービスクのほかの記事では、こう書かれている。

  • 2025年5月の別のホテルの事例の記事:「9週間足らずで」29%減らし、9,000ユーロを超えて節約した
  • 2025年5月の食品ロスの統計の記事:6週間で29%減らし、9,000ユーロを超えて節約した。「チームの働き方を変えずに」
  • 2026年8月の記事:7台の機械を使い、使い始めて6週間のうちに29%減り、月に6,000ユーロを節約した

「6週間」と「9週間足らず」が混ざっている。また、事例の記事は、厨房のチームがデータを分析して、つくる量を変えたと書く。一方、統計の記事は「働き方を変えずに」と書く。どちらも同じ会社の記事だ。

業者の標準の手順では、最初の6週間は「何もしない」

オービスクの2026年6月の手引きの記事は、導入の最初の6週間の進め方を、こう説明している。

  • 1〜6週目は「基準づくり」の期間。厨房のチームは何も変えない
  • つくる量の基準も変えず、従業員への声かけもせず、手で記録することもない
  • 6週間あれば、平日と週末のちがいや、催しによる増減もならせる

この手順に従えば、最初の6週間は、比べるもとになる量を測る期間になる。では、ラッフルズの「6週間で29%」は、どの期間とどの期間を比べたのか。事例の記事には書かれていない。導入前の量を別の方法で測っていたのか、最初の数日と6週目を比べたのか。出典からは分からない。

割ってみると見えること

事例の記事の数字を、単純に割ってみる。

  • 1,097キロ÷2,437食で、1食あたり約0.45キロ
  • 9,000ユーロ÷1,097キロで、1キロあたり約8.2ユーロ(9,000ユーロ「超」なので、それ以上)
  • 3,220キロ÷1,097キロで、食べ物1キロあたりCO2約2.9キロ
  • 6週間で9,000ユーロは、1か月にならすと約6,400ユーロ

オービスクの統計の記事は、一般的な目安として、食べ物1キロの損失は約7ユーロ、CO2は4.5キロと書く。ラッフルズの数字を割った値は、この目安とはちがう。高級ホテルの食材は高いので、1キロあたりの金額が目安より高いのは自然だ。けれど、CO2の換算のしかたは、どの記事にも書かれていない。

ホテル自身が書いていること

ラッフルズ・シンガポールの公式サイトのサステナビリティのページは、食品ロスの計測には触れていない。書かれているのは、たとえば次のことだ。

  • 使い捨てのプラスチックを減らし、電子ごみやガラスを分けてリサイクルする
  • 地元の農業が限られる中で、海のエコラベル(MSC)やフェアトレードの認証のある食材を選ぶ
  • レストラン「ブッチャーズ・ブロック」では、動物を丸ごと使い切る考え方で献立をつくる

シンガポールの決まり

シンガポールの国家環境庁(NEA)によると、飲食と宴会の面積が3,000平方メートルを超えるホテルは、食品ごみを分けて処理し、量を報告しなければならない。新しい建物では2024年3月8日に始まった。今ある建物には、処理施設の完成に合わせて、順に広げていくという。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、6週間、捨てる食べ物を量った宿を考える。

  • 1〜2週目:1日平均18キロ。客は1日平均120人
  • 5〜6週目:1日平均13キロ。客は1日平均100人

重さだけで比べると、18キロから13キロで約28%減った。けれど、客1人あたりにすると、150グラムから130グラムで、約13%の減少になる。客が減れば、捨てる量も減るからだ。

同じ6週間の記録でも、何と何を比べるか、全体か客1人あたりかで、割合は大きく変わる。

数字には、比べ方を書き添える

「6週間で29%」は、目を引く数字だ。けれど、比べたもとの期間と、量の数え方がなければ、ほかの宿の数字と並べられない。宿が自分の数字を伝えるときは、いつからいつまでを、どの単位で比べたかを一緒に書くとよい。

持ち帰れる知識

  • 割合の数字は、比べた期間がなければ評価できない
  • 全体の重さと、客1人あたりの重さでは、減り方がちがう
  • 同じ会社の記事でも、期間や金額の書き方が変わることがある

宿で考えられること

  • 量り始めの数週間は、何も変えずに基準の量を測る
  • 重さと一緒に、その日の客の数も記録する
  • 結果を伝えるときは、比べた期間と単位を書く

事業・予約への接続

比べ方を書いた数字は、取材や環境の認証の審査でも信頼される。計測の結果を厨房で共有すれば、仕入れの見直しにもつながる。

Sources / 参考情報

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