80%、91%、92〜93%、そして95%。イタリアの「ごみゼロ」ホテル、ソレントの「コンカ・パーク」の数字を年表にする
イタリア南部、ソレントの「コンカ・パーク」は、家族で営む4つ星のホテルだ。公式サイトは「私たちは、イタリアで初めてのごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)のホテルです」と書く。
同じページには、2つの数字がある。「長年のうちに、ごみの量を60%減らした」。そして「お客さまの協力で、95%の分別収集を達成した」。
このホテルの取り組みは、2014年ごろからイタリアの新聞やニュースサイトで何度も伝えられてきた。記事を年の順に並べると、数字が少しずつ動いているのが分かる。この記事では、10年分の数字を年表にして、それぞれが何を測った数字なのかを整理する。
「分別の割合」と「減った量」は別のもの
先に、2種類の数字を分けておく。
- 分別収集の割合:出たごみのうち、紙・ガラス・生ごみなどに分けて出せた割合。イタリア語では「ラッコルタ・ディフェレンツィアータ」という
- ごみの削減率:ごみの量そのものが、前と比べてどれだけ減ったか
95%は、分別の割合だ。ごみの95%がリサイクルされた、という意味でも、ごみが95%減った、という意味でもない。2023年の英国のデイリー・メールの記事は、これを「リサイクル率95%」と書いているが、ホテルのサイトは「分別収集」と書く。
10年分の年表
出典の日付の順に並べると、次のようになる。
- 2015年5月(イタリアのゼロ・ウェイストの団体の記事):数か月で、分けられないごみを70%減らし、分別は90%を超えた
- 2015年7月(フォーカス):オーナーのマリエッラ・ルッソさんの話として、分別は80%。イタリアで初めて「ゼロ・ウェイスト」の計画に加わり、2014年に表彰されたと紹介
- 2015年9月(イスキア島のホテル協会の意見書を伝えたイル・ゴルフォ24):204室、1日平均340人の宿泊で、分別は91%。前の年と比べて、ごみの量は60%減、分けられないごみは1日50キロ減、ごみの税金は30%減
- 2016年11月(ソレント・プレス):分別は92〜93%。ごみの量は1年で45%減。回収業者が来る回数は週に8回減った
- 2019年1月(ポジターノニュース):2013年からこの方法に参加。2018年の分別の平均は90%を超え、ごみの量は合わせて50%を超えて減った
- 2021年8月(イル・マッティーノ):分別は95%。ごみの量は60%を超えて減った
- 2023年9月(デイリー・メール):2014年から、ごみを40%減らし、「リサイクル率」は95%。近いうちに100%を目指す
年表から読み取れること
分別の割合は、2015年の記事では、5月に「90%超」、7月に「80%」、9月に「91%」と、同じ年の中でも幅がある。どの期間の平均かが、どの記事にも書かれていないからだ。その後は90%台が続き、2021年の記事で95%に届いている。
一方、削減率は、60%、45%、50%超、60%超、40%と、行ったり来たりする。けれど、これは悪くなったり良くなったりした、という意味ではない。比べるもとがちがうからだ。
- 2015年の60%と、2016年の45%は、「前の年と比べて」「1年で」の数字
- 2019年の50%超と、2021年の60%超は、取り組みを始めてからの合わせた数字
- 2023年の40%は、「2014年から」の数字
どの年と比べたかを書かずに数字だけを並べると、減り方が逆に見えることもある。
どうやって減らしたのか
2023年のデイリー・メールの記事で、オーナーのルッソさんはこう話している。
- まず、1回分ずつ包んだものをすべてやめた。砂糖、バター、マーマレード、石けん、シャンプーなど
- 次に、くり返し使える詰め替えの容器に変えた
- 「ごみゼロはとてもお金がかかる」。ガラスを砕く機械、生ごみを堆肥にする機械、水を出す機械、各階と共用の場所の分別のごみ箱を買い、2人の従業員がこの仕事を受け持つ
記事によると、空きびんを砕いたガラスは、プールのろ過に使う。生ごみは堆肥にして、菜園で使う。客が残していった服や靴、日焼け止め、シャンプーは、地元の慈善団体に渡す。
ホテルの公式サイトは、ほかにこう書く。朝食の残りは堆肥にして菜園に使う。古い井戸を直して、緑地には雨水だけを使う。照明はタイマーで消え、ドアや窓を開けると冷房が自動で止まる。
税金とのつながり
2015年の意見書によると、このホテルはごみの税金を30%減らした。2015年5月のイタリアのゼロ・ウェイストの団体の記事も、ソレントの市がごみを減らす宿を優遇したので、税金を数万ユーロ節約できたと伝えている。
また、2021年のイル・マッティーノの記事は、別の面も伝える。ホテルの星の数を決める州の決まりには、ごみの取り組みの項目がない。ごみを減らしても、星の数には反映されない。
日本の宿に置き換えると
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、分別の割合と、ごみの量を2年続けて記録した宿を考える。
- 1年目:1週間のごみは400キロ。分けて出せたのは240キロで、分別の割合は60%。分けられないごみは160キロ
- 2年目:1回分ずつの包装をやめて、1週間のごみは250キロに減った。分けて出せたのは225キロで、分別の割合は90%。分けられないごみは25キロ
同じ2年の記録から、3つの数字が出てくる。分別の割合は60%から90%へ。ごみの量は37.5%減。分けられないごみは約84%減。
どれも本当の数字だが、伝わる印象はちがう。燃やすごみの料金を払う宿にとっては、分けられないごみの量の変化がいちばん大事かもしれない。
年を書くと、数字が物語になる
コンカ・パークの数字は、1つずつ見ると食いちがって見える。けれど、年と、何と比べたかを添えて並べると、10年近く、分別を90%前後から95%の高さで続けてきた流れが見えてくる。宿が自分の数字を伝えるときも、年と比べ方を一緒に書くとよい。
持ち帰れる知識
- 分別の割合と、ごみの削減率は、別の数字
- 削減率は、何年と比べたかで大きく変わる
- 分けられないごみの量は、ごみの料金に直結する
宿で考えられること
- 分別の割合、ごみの量、分けられないごみの量を、毎月記録する
- 1回分ずつ包んだ朝食の調味料やアメニティを見直す
- 数字を伝えるときは、年と比べたもとを書く
事業・予約への接続
ごみの数字を年ごとに示せば、長く続けてきたことが客に伝わる。分けられないごみが減れば、ごみの料金の見直しにもつながる。
Sources / 参考情報
- Conca Park(伊文) - ソレントのグリーンなホテル
裏付け: イタリアで初めてのごみゼロのホテル、ごみの量を60%減、プラスチックを使わない、共用の場所の分別のごみ箱と客の協力で分別95%、朝食の残りを堆肥に、井戸を直して緑地は雨水だけ、照明のタイマー、ドアや窓で冷房が止まる - Daily Mail(英文) - 罪悪感のない贅沢な滞在:1回分のシャンプーをやめ、残り物を堆肥にするイタリアのコンカ・パーク(2023年9月14日)
裏付け: 2014年から40%減・リサイクル率95%・100%を目指す、砂糖・バター・マーマレード・石けん・シャンプーの1回分をやめた、詰め替えの容器、砕いたびんでプールのろ過、ガラスを砕く機械・堆肥の機械・2人の従業員、「ごみゼロはとてもお金がかかる」、残された服などを慈善団体へ - Focus(伊文) - ごみゼロのホテルと海水浴場:マッサ・ルブレンセからの挑戦(2015年7月13日)
裏付け: イタリアで初めてゼロ・ウェイストの計画に参加、2014年に表彰、分別80% - Il Golfo 24(伊文) - ごみの税金がホテルを苦しめる(イスキア島のホテル協会の意見書)(2015年9月30日)
裏付け: 204室・1日平均340人、分別91%、前年比でごみ60%減、分けられないごみ1日50キロ減、ごみの税金30%減 - Sorrento Press(伊文) - ロンドンのWTMで、ごみゼロのコンカ・パークが受賞(2016年11月10日)
裏付け: オーナーのルッソさんは父と兄弟とともに経営、分別92〜93%、1年でごみ45%減、回収が週8回減 - Positanonews(伊文) - サレルノで持続可能な観光の会議:ごみゼロのホテルとレストラン(2019年1月11日)
裏付け: 2013年から参加、2018年の分別の平均90%超、ごみの量は合わせて50%超減 - Il Mattino(伊文) - ソレント、観光の皮肉:ごみゼロのホテルに、星は1つも増えない(2021年8月8日)
裏付け: ソレントの4つ星、分別95%、ごみの量60%超減、州の星の決まりにごみの項目がない - Zero Waste Italy(伊文) - コンカ・パークで、ごみゼロへの良い方法を学ぶ初めての国際ワークショップ(2015年5月4日)
裏付け: 数か月で分けられないごみを70%減、分別90%超、市の優遇で税金を数万ユーロ節約