GOAL 12 · TARGET 12.5 廃棄物・循環経済 4分 / 2447文字 数字を年表にする型 #298

80%、91%、92〜93%、そして95%。イタリアの「ごみゼロ」ホテル、ソレントの「コンカ・パーク」の数字を年表にする

イタリア南部、ソレントの「コンカ・パーク」は、家族で営む4つ星のホテルだ。公式サイトは「私たちは、イタリアで初めてのごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)のホテルです」と書く。

同じページには、2つの数字がある。「長年のうちに、ごみの量を60%減らした」。そして「お客さまの協力で、95%の分別収集を達成した」。

このホテルの取り組みは、2014年ごろからイタリアの新聞やニュースサイトで何度も伝えられてきた。記事を年の順に並べると、数字が少しずつ動いているのが分かる。この記事では、10年分の数字を年表にして、それぞれが何を測った数字なのかを整理する。

「分別の割合」と「減った量」は別のもの

先に、2種類の数字を分けておく。

  • 分別収集の割合:出たごみのうち、紙・ガラス・生ごみなどに分けて出せた割合。イタリア語では「ラッコルタ・ディフェレンツィアータ」という
  • ごみの削減率:ごみの量そのものが、前と比べてどれだけ減ったか

95%は、分別の割合だ。ごみの95%がリサイクルされた、という意味でも、ごみが95%減った、という意味でもない。2023年の英国のデイリー・メールの記事は、これを「リサイクル率95%」と書いているが、ホテルのサイトは「分別収集」と書く。

10年分の年表

出典の日付の順に並べると、次のようになる。

  • 2015年5月(イタリアのゼロ・ウェイストの団体の記事):数か月で、分けられないごみを70%減らし、分別は90%を超えた
  • 2015年7月(フォーカス):オーナーのマリエッラ・ルッソさんの話として、分別は80%。イタリアで初めて「ゼロ・ウェイスト」の計画に加わり、2014年に表彰されたと紹介
  • 2015年9月(イスキア島のホテル協会の意見書を伝えたイル・ゴルフォ24):204室、1日平均340人の宿泊で、分別は91%。前の年と比べて、ごみの量は60%減、分けられないごみは1日50キロ減、ごみの税金は30%減
  • 2016年11月(ソレント・プレス):分別は92〜93%。ごみの量は1年で45%減。回収業者が来る回数は週に8回減った
  • 2019年1月(ポジターノニュース):2013年からこの方法に参加。2018年の分別の平均は90%を超え、ごみの量は合わせて50%を超えて減った
  • 2021年8月(イル・マッティーノ):分別は95%。ごみの量は60%を超えて減った
  • 2023年9月(デイリー・メール):2014年から、ごみを40%減らし、「リサイクル率」は95%。近いうちに100%を目指す

年表から読み取れること

分別の割合は、2015年の記事では、5月に「90%超」、7月に「80%」、9月に「91%」と、同じ年の中でも幅がある。どの期間の平均かが、どの記事にも書かれていないからだ。その後は90%台が続き、2021年の記事で95%に届いている。

一方、削減率は、60%、45%、50%超、60%超、40%と、行ったり来たりする。けれど、これは悪くなったり良くなったりした、という意味ではない。比べるもとがちがうからだ。

  • 2015年の60%と、2016年の45%は、「前の年と比べて」「1年で」の数字
  • 2019年の50%超と、2021年の60%超は、取り組みを始めてからの合わせた数字
  • 2023年の40%は、「2014年から」の数字

どの年と比べたかを書かずに数字だけを並べると、減り方が逆に見えることもある。

どうやって減らしたのか

2023年のデイリー・メールの記事で、オーナーのルッソさんはこう話している。

  • まず、1回分ずつ包んだものをすべてやめた。砂糖、バター、マーマレード、石けん、シャンプーなど
  • 次に、くり返し使える詰め替えの容器に変えた
  • 「ごみゼロはとてもお金がかかる」。ガラスを砕く機械、生ごみを堆肥にする機械、水を出す機械、各階と共用の場所の分別のごみ箱を買い、2人の従業員がこの仕事を受け持つ

記事によると、空きびんを砕いたガラスは、プールのろ過に使う。生ごみは堆肥にして、菜園で使う。客が残していった服や靴、日焼け止め、シャンプーは、地元の慈善団体に渡す。

ホテルの公式サイトは、ほかにこう書く。朝食の残りは堆肥にして菜園に使う。古い井戸を直して、緑地には雨水だけを使う。照明はタイマーで消え、ドアや窓を開けると冷房が自動で止まる。

税金とのつながり

2015年の意見書によると、このホテルはごみの税金を30%減らした。2015年5月のイタリアのゼロ・ウェイストの団体の記事も、ソレントの市がごみを減らす宿を優遇したので、税金を数万ユーロ節約できたと伝えている。

また、2021年のイル・マッティーノの記事は、別の面も伝える。ホテルの星の数を決める州の決まりには、ごみの取り組みの項目がない。ごみを減らしても、星の数には反映されない。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、分別の割合と、ごみの量を2年続けて記録した宿を考える。

  • 1年目:1週間のごみは400キロ。分けて出せたのは240キロで、分別の割合は60%。分けられないごみは160キロ
  • 2年目:1回分ずつの包装をやめて、1週間のごみは250キロに減った。分けて出せたのは225キロで、分別の割合は90%。分けられないごみは25キロ

同じ2年の記録から、3つの数字が出てくる。分別の割合は60%から90%へ。ごみの量は37.5%減。分けられないごみは約84%減。

どれも本当の数字だが、伝わる印象はちがう。燃やすごみの料金を払う宿にとっては、分けられないごみの量の変化がいちばん大事かもしれない。

年を書くと、数字が物語になる

コンカ・パークの数字は、1つずつ見ると食いちがって見える。けれど、年と、何と比べたかを添えて並べると、10年近く、分別を90%前後から95%の高さで続けてきた流れが見えてくる。宿が自分の数字を伝えるときも、年と比べ方を一緒に書くとよい。

持ち帰れる知識

  • 分別の割合と、ごみの削減率は、別の数字
  • 削減率は、何年と比べたかで大きく変わる
  • 分けられないごみの量は、ごみの料金に直結する

宿で考えられること

  • 分別の割合、ごみの量、分けられないごみの量を、毎月記録する
  • 1回分ずつ包んだ朝食の調味料やアメニティを見直す
  • 数字を伝えるときは、年と比べたもとを書く

事業・予約への接続

ごみの数字を年ごとに示せば、長く続けてきたことが客に伝わる。分けられないごみが減れば、ごみの料金の見直しにもつながる。

Sources / 参考情報

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