GOAL 12 · TARGET 12.5 廃棄物・循環経済 4分 / 2392文字 年代で分ける型 #299

「最初の1年で20万ドル」と「毎月7,000ドル」は、同じ話か。サンフランシスコのヒルトン・ユニオンスクエアのごみの数字を、年代で分ける

サンフランシスコの「ヒルトン・サンフランシスコ・ユニオンスクエア」は、1,919室を持つ大きなホテルだ。アメリカ西海岸でいちばん大きなホテルとして紹介されてきた。

このホテルのごみの話には、いくつもの数字が出てくる。「1日7,500食」「年に100万食を大きく超える」「最初の1年で20万ドル節約」「毎月約7,000ドル節約」。どれも出典のある数字だが、話している人も、年も、数えているものもちがう。

この記事では、それぞれの数字がいつ、誰が、何について言ったものかを分けて並べる。そのうえで、サンフランシスコ市がホテルのごみを減らした「料金のしくみ」を見ていく。

市の元局長が語った「試しのホテル」

2014年6月、英国の新聞ガーディアンは、サンフランシスコ市のごみゼロの取り組みを伝えた。フランスの新聞ル・モンドの記事をもとにしたものだ。話しているのは、市の環境局の元局長、ジャレッド・ブルーメンフェルドさんだ。

  • 市の環境局は、生ごみを多く出すホテルとレストランから始めた
  • 「まず、1日7,500食を出すヒルトンを試しのホテルにした」
  • しくみは単純で、リサイクルや堆肥に回すごみの回収箱は、それ以外のごみの回収箱より、月の料金がずっと安い
  • 「全部をリサイクルと堆肥に回せば、ごみの回収箱は少なく、小さくてすむ。お金も節約できる」
  • 最初の1年で、ヒルトンは20万ドルを節約した。このしくみは、飲食の業界全体に広がった

記事は、この「最初の1年」が何年だったかを書いていない。また、20万ドルが何の費用の節約かも書かれていない。

ホテルの事例集が書く「毎月7,000ドル」

一方、世界自然保護基金(WWF)とアメリカのホテル・宿泊協会がつくった、ホテルの食品ロスを減らすサイト「ホテル・キッチン」は、このホテルの事例をこう紹介している。

  • 市の条例で、生ごみを分けることが決められている
  • 西海岸でいちばん大きなホテルとして、客と会議の参加者のために、年に100万食を大きく超える食事をつくる
  • 地元の旬の食材を考えて仕入れ、形のふぞろいな野菜も使い、食材を丸ごと使う。従業員の食堂では、量をそろえる取り分けの道具を使う
  • 食べられる料理は、地元の団体「フード・ランナーズ」を通じて施設に届ける。2016年10月の最も忙しい会議では、2,000個を超える弁当を寄付した
  • 寄付できない食べ物は、2002年から堆肥にしている。堆肥にすることで、ごみを運ぶ料金を毎月約7,000ドル節約している

並べると、何がちがうのか

2つの出典を並べると、次のことが分かる。

  • 1日7,500食を365日続けると、年に約274万食。事例集の「年に100万食を大きく超える」とは、数え方か年がちがう可能性がある
  • 毎月約7,000ドルは、1年にすると約8万4,000ドル。「最初の1年で20万ドル」とは、金額の大きさがちがう
  • 20万ドルは、試しを始めた最初の1年の数字。7,000ドルは、堆肥にする費用の節約として事例集が示す、月の数字

つまり、2つの金額は同じ話ではない。「20万ドルを節約し、その後も毎月7,000ドル」とつなげて書くと、出典にない話になってしまう。

寄付の年数も、出典でずれる

フード・ランナーズとの付き合いの長さも、出典で少しちがう。ホテル・キッチンは「15年を超える」と書く。ヒルトンの2019年12月の発表は「15年近く」と書き、毎年2.5トン近くの食べ物を届けているという。寄付された食べ物は、高齢者や退役軍人、家のない人を支える活動に届けられる。

料金で、ごみの行き先を変える

ヒルトンで試したしくみは、のちに市全体に広がった。アメリカの環境団体NRDCの2017年の事例のまとめによると、流れは次のとおりだ。

  • 1996年、市は全米で初めて、大きな規模で食べ物の堆肥化を始めた
  • 2002年、2010年までに75%を埋め立てに回さない目標と、2020年にごみゼロの目標を決めた
  • 2009年10月から、すべての住民と事業者に、リサイクル・堆肥・それ以外の3つに分けることを義務づけた(市の環境局によると、条例の施行は2009年10月21日。市はこの条例を、ごみゼロに向けて最も大事な政策と位置づける)
  • 2011年には、埋め立てに回さない割合が78%になり、目標を超えた

料金のしくみも続いている。NRDCによると、2017年7月からの家庭の料金は、3つの箱がどれも32ガロンなら月40.04ドル。ごみの箱だけを16ガロンに小さくすると、月33.78ドルになる。出す量が少ないほど安くなるしくみだ。

ガーディアンの記事によれば、2007〜2008年には、市の割合が約70%で伸び悩んだ。目標は2010年までに75%だった。市はそこで、レジ袋の有料化などの新しい手を打った。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、ごみの料金が種類によってちがう町の宿を考える。

  • 燃やすごみの処理料金:1キロ45円
  • 生ごみを堆肥や飼料に回す場合の料金:1キロ25円
  • 宿の燃やすごみ:1日60キロ。そのうち20キロが、分ければ回せる生ごみ

20キロを分けて回すと、1日の差は20キロ×20円で400円。1年365日で14万6,000円になる。

料金の差がなければ、分ける手間だけが増える。料金に差があれば、分ける理由がはっきりする。サンフランシスコのしくみが伝えるのは、このことだ。

数字に「いつ」と「誰が」を添える

ヒルトン・サンフランシスコの数字は、どれも出典がある。けれど、元局長の話と、ホテルの事例集と、ホテルの会社の発表は、それぞれ別の時期の、別のものを数えている。宿が自分の数字を伝えるときも、いつの数字か、何の費用かを書いておくと、あとで誤解されにくい。

持ち帰れる知識

  • 同じホテルの数字でも、年と話し手がちがえば、つなげて書けない
  • 1日の数字を1年に直すと、ほかの出典と合わないことがある
  • ごみの料金に差をつけると、分ける理由がはっきりする

宿で考えられること

  • 町のごみの料金表で、種類ごとの料金のちがいを確かめる
  • 食べられる料理を寄付できる団体を、地元で探す
  • 節約の数字は、何の費用か、いつの数字かを添えて記録する

事業・予約への接続

会議や宴会の主催者は、寄付や堆肥化の取り組みを会場選びで見ることがある。年と出典を添えた数字は、提案書でも使いやすい。

Sources / 参考情報

  • The Guardian(英文) - サンフランシスコは、ごみゼロの目標の実現に近づいている(2014年6月17日)
    裏付け: 元局長ジャレッド・ブルーメンフェルドさんの話、ホテルとレストランから始めた、1日7,500食のヒルトンを試しのホテルに、リサイクルと堆肥の回収箱は月の料金がずっと安い、最初の1年で20万ドル、飲食の業界全体へ、2007〜2008年に約70%で伸び悩み・目標は2010年に75%、ル・モンドの記事をもとにしたもの
  • Hotel Kitchen(英文) - ヒルトン・サンフランシスコ
    裏付け: 1,919室、市の条例で生ごみを分ける、西海岸でいちばん大きなホテル・年100万食を大きく超える、旬の食材・ふぞろいな野菜・丸ごと・取り分けの道具、フード・ランナーズと15年を超える、2016年10月に弁当2,000個超、2002年から堆肥・毎月約7,000ドル
  • Hilton(英文) - ヒルトン、休暇の季節に向けて食べ物の寄付を300近いホテルに広げる(2019年12月12日)
    裏付け: フード・ランナーズと15年近く、毎年2.5トン近く、高齢者・退役軍人・家のない人を支える活動へ
  • NRDC(英文) - 食べ物を救う:サンフランシスコの堆肥化(2017年10月24日)
    裏付け: 1996年に全米初の大規模な堆肥化、2002年の目標、2009年10月から3つに分ける義務、2011年に78%、2017年7月からの家庭の料金40.04ドルと33.78ドル
  • San Francisco Environment Department(英文) - ごみゼロについてのよくある質問
    裏付け: リサイクルと堆肥化を義務づける条例は2009年10月21日に施行、市の成功に最も大事な政策、住民と事業者が分けて出す

関連する記事