GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 4分 / 2196文字 業者の数字の幅を読む型 #301

生ごみ1キロで、ガスは0.3か、0.4立方メートルか:オランダの海辺のホテル「デ・ゼーウセ・ストローメン」の発酵機を、業者の数字の幅で読む

オランダ南西部、ゼーラント州の海辺の村レネッセに、「デ・ゼーウセ・ストローメン」というホテルがある。家族で営む4つ星で、本館に78の客室があり、となりに休暇用の宿泊施設の区画も持つ。サイトによれば、1959年から客を迎え、1997年に再び開業した。

オランダのホテル業界誌「ホテルファク」は2024年10月、このホテルが、生ごみを発酵させてガスをつくる機械を使っていると伝えた。レストランから出る生ごみをすべて機械に入れ、できたエネルギーで客室や館内を暖めている、という内容だ。

ただ、この機械について書かれた記事を並べると、数字に幅がある。1キロの生ごみから出るガスの量も、機械が1日に処理できる量も、記事ごとに少しずつちがう。この記事では、その幅を読み分ける。

記事が伝えたこと:生ごみで館内を暖める

ホテルファクの2024年10月24日の記事によると、ポイントは次のとおりだ。

  • 機械をつくるのは、オランダのハウテンにある会社「サーク・エナジー」。製品名は「バイオトランスフォーマー」
  • 会社によると、この機械は1日50〜600キロの野菜・果物・食べ物のごみを、ガスや電気、熱に変える
  • 機械は入れたごみの重さを量り、AIで酸っぱさや粘り気、必要な水の量を計算して、発酵を調整する
  • 会社の共同創業者は、このホテルを「この発酵機を選んだ最初のホテルの1つ。まさに先駆者だ」と話した
  • ホテルのレストランで残った生ごみは、すべてこの機械でエネルギーに変えられ、客室や館内の暖房に使われている

記事には、ホテルが1日に何キロの生ごみを入れているか、いつ機械を入れたかは書かれていない。

1キロから出るガス:0.3、0.35、0.4

1キロの生ごみから、どれだけのガスが出るのか。資料ごとの数字は次のとおりだ。

  • ホテルファクの2023年8月の記事:会社の共同創業者の話として「約0.4立方メートル」
  • 設備の専門誌「E&W」の2023年4月の記事:「平均350リットル(0.35立方メートル)」。パン1キロなら500リットルを超える
  • 会社の今のサイト:「平均で約0.3立方メートル」と、液肥として使える水1リットル

会社のサイトは、ごみの中身で量が変わると書く。たとえば葉物の野菜は、ピザやチーズよりエネルギーが少ない。E&Wの記事も、ごみのカロリーが高いほど多く出ると説明する。3つの数字は、どれかがまちがいというより、何を「ふつう」とみるかの差と読むのが自然だ。なお、E&Wの記事によると、できるガスの63%がメタンだ。

1日に処理できる量:30キロから600キロまで

機械の大きさについても、資料ごとに書き方がちがう。

  • ホテルファクの2023年8月の記事:30〜600キロ
  • E&Wの2023年4月の記事:いちばん小さい機種で1日30〜50キロ、いちばん大きい機種で1日600キロ
  • ホテルファクの2024年10月の記事:1日50〜600キロ
  • 会社の今のサイト:1日100キロから600キロ超

いちばん小さい機種の量が、年を追って上がっている。機種の組み合わせが変わった可能性があるが、理由は書かれていない。ホテルファクの2024年の記事で、会社の共同創業者は「ある程度のごみがないと、十分なエネルギーにならない」とも話している。

ホテル自身のページには、何が書いてあるか

ホテルのサイトの環境のページは、次の取り組みを挙げている。

  • 屋根の上の太陽熱の温水パネル40枚と、1,000リットルのタンク4つ
  • 冷やす設備から出る熱で、屋内と屋外のプールを温める
  • 照明はすべてLED
  • コーヒーかすを集め、食品の卸会社などを通して、近くの浜辺の店で出す揚げ物に生まれ変わらせる
  • 環境認証「グリーンキー」のゴールド

このページには、生ごみの発酵機の記載は見当たらない。発酵機の話の出どころは、業界誌の記事の中の、機械の会社の話だ。

日本の宿に置き換えると

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、1日40キロの生ごみを発酵機に入れる宿を考える。ガスの63%がメタンで、メタン1立方メートルの熱を約10キロワット時とする。

  • 1キロ0.3立方メートルなら:ガス12立方メートル、メタン約7.6立方メートル、熱は1日約76キロワット時
  • 1キロ0.35立方メートルなら:ガス14立方メートル、メタン約8.8立方メートル、熱は1日約88キロワット時
  • 1キロ0.4立方メートルなら:ガス16立方メートル、メタン約10.1立方メートル、熱は1日約101キロワット時

1年にすると、約2万7,600キロワット時と約3万6,800キロワット時で、差は約9,200キロワット時。0.3と0.4のどちらを前提にするかで、取り出せる熱は3割ほど変わる。投資を回収する年数を考えるなら、この差がそのまま響く。

宿の生ごみを、まず量ってみる

ホテルファクの2023年の記事で、会社は投資の回収を「いつも5年未満、大きな機械なら約2年」と話している。ただ、これは会社の見通しで、宿ごとのごみの量と中身で変わる。

機械を考える前にできるのは、1日の生ごみの量と中身を、数週間量ってみることだ。パンや揚げ物が多いのか、野菜くずが多いのか。それが分かれば、業者の「1キロあたり」の数字のどれが自分の宿に近いかを、自分で見当づけられる。

持ち帰れる知識

  • 「1キロあたりのガス」は、ごみの中身で変わる。業者の数字にも0.3〜0.4立方メートルの幅がある
  • 機械の処理能力の書き方は、記事の年によってちがう。いつの資料かを確かめる
  • 話の出どころが、ホテル自身か、機械の会社かを分けて読む

宿で考えられること

  • 1日の生ごみの量と中身を、数週間量る
  • 業者には、どの「1キロあたり」の数字を前提にしたかを聞く
  • できた熱を、暖房、お湯、プールのどこに使うかを先に決める

事業・予約への接続

生ごみから熱をつくる話は、客にも伝わりやすい。ただ、伝えるときは、どれだけの量をどれだけの熱にしたかを、自分の宿の数字で示す。業者の平均の数字を、そのまま宿の実績のように書かない。

Sources / 参考情報

  • Hotelvak(英文) - 生ごみのエネルギーで、ホテルを持続可能にする(2024年10月24日)
    裏付け: ハウテンの会社、1日50〜600キロ、AIで酸っぱさ・粘り気・水の量を計算、ごみが少ないと十分なエネルギーにならない、最初のホテルの1つ・先駆者、レストランの生ごみをすべてエネルギーにし客室や館内を暖める
  • Hotelvak(英文) - ホテルで自分のバイオガスをつくる:それはできる(2023年8月31日)
    裏付け: 30〜600キロ、1キロで約0.4立方メートル、回収はいつも5年未満・大きな機械で約2年
  • E&W Installatietechniek(オランダ語) - レメハは、サークの小さな発酵機に可能性を見る(2023年4月)
    裏付け: 最小の機種で1日30〜50キロ、最大で600キロ、メタン63%、1キロで平均350リットル、パン1キロで500リットル超、カロリーで量が変わる
  • Circ(英文) - サーク:発酵機
    裏付け: 1日100キロから600キロ超、1キロで平均約0.3立方メートルのガスと1リットルの水、葉物はピザやチーズよりエネルギーが少ない
  • De Zeeuwse Stromen(オランダ語) - 持続可能な取り組み
    裏付け: 太陽熱の温水パネル40枚・1,000リットル×4、冷やす設備の熱で屋内外のプールを加温、LED、コーヒーかすの再利用、グリーンキーのゴールド、発酵機の記載なし
  • De Zeeuwse Stromen(オランダ語) - ホテル・デ・ゼーウセ・ストローメン
    裏付け: レネッセ、本館78室、休暇用の宿泊施設の区画、1959年から、1997年に再開業

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